3-1
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「アキラ、アキラー!お、いたいた」
「おはよー。どうしたの?」
晶が宿で朝飯、オークのステーキに甘味ととろみのある野菜スープを食べていると晶を探していると思われる声。
声の主はドンの町で衛兵をしている者の一人だった。
晶も顔パスになるくらい会っている。
町を出入りすればそうもなる。
晶は肉をスープで流し込み、挨拶をした。
隣のテーブルにはエグゼとヴァイも朝食をとっている。
ナオは朝が弱いらしく、まだ姿が見えない。
「アキラ、お前さんに客が来ているぞ」
「客?」
(アキラさんに客とか……)
(町の外から来たと言う事じゃよな?ふむ)
「アキラを出せと騒いでいるんだ。知らん顔だったぞ」
「中には入れない奴なんだ?」
「どう見ても外の人間だった。よく来れたものだ」
「そっか。ちょっと待ってね、もうすぐ食べ終わるからさ」
「ふふっ、仕方ないな。俺は戻るが早く来いよ」
「あいよ。おつかれさまー」
衛兵は苦笑しながら門の方へ戻っていった。
晶はマイペースで食べている。
(ゼロ!門の所に俺宛ての客が来ているみたいなんだ。こっそり見て来てくれ)
(解りました。マスター)
(どんな奴か教えてくれよな)
(お任せを)
晶はゼロに偵察を頼んだ。
ゼロは宿の裏庭で寝ている。
朝は地力で狩りをして食べている。
今も森のどこかで食べていたはずだ。
すぐ返事が来て偵察に動くゼロ。
(私達が行っても良かったんですよ?)
(そうじゃな。ワシらは基本暇じゃし)
(そうなんだけど、二人には俺の側にいて欲しいかなと)
(さびしんぼうですかぁ?えへへ)
(力や助言、周囲の警戒じゃろ)
カヅキとタケマツが晶に言ってくる。
晶の返事を聞いてカヅキが嬉しそうだ。
タケマツはカヅキが思っている事を軽く否定する。
タケマツが正解だろう。
「アキラ、呼出し?楽しそうっす」
「外からの来訪者か……」
ヴァイが晶に声をかけてくる。
晶の返事を待たずにオークのステークを頬張った。
リスのように頬を膨らませている。
子供っぽい。
エグゼは独り言?何やら考え込んでいる。
エグゼの前にある皿は既に空っぽだ。
大盛りを頼んでいたが早い。
大食いの早食い。
晶とナオ達の関係。
ドンの町では晶が彼らの世話をしている。
宿の紹介、町の案内、冒険者達のまとめ役であるウィルに紹介したりだ。
ナオは晶をじっと観察したり質問したりしていた。
晶と彼らはお互い呼び捨てで呼び合っている。
もっとも冒険者は大体そうだ。
晶、結構面倒見がいい。
とは言えまだ数回一緒に森へ行った程度。
食事も同じテーブルではとっていない。
そういう関係だ。
「おう。そうみたいだ」
「俺らも付いて行っていいっすか?面白そう!」
「俺もか」
「エグゼも行くっす」
「はいはい」
「いいけど大人しくしとけよ」
「火の粉が降りかかるまでは大人しくしてるっす」
「荒事は確定なのか……」
「外の者がわざわざ来たんだ、面倒ごとだろう」
「そうっす」
「はぁ……」
(溜息を吐くと幸せが逃げますよー)
(エグゼの言う通りじゃ。海を渡り名差しで来たんじゃからの)
ヴァイは荒事を楽しみにしているらしい。
そういえば最初に見た迷宮都市コドでもチンピラ相手に暴れていた。
ちびっ子のくせに荒事が好きとか、難儀な男である。
エグゼは淡々としている。
この態度が変わるとしたら魔女っ子ナオが絡むときくらいだろう。
仲間以外には余り興味を示さない。
そういう男らしい。
冒険者には多いパターンだとタケマツが言っていた。
エグゼがオークを簡単に倒したのをウィル達が見て一目置いていたり。
ヴァイの索敵能力も認められていた。
身軽な軽戦士で動きが速い。
双短剣も器用に使う。
魔女っ子ナオもだ。
彼女は火、水、地、風、万遍なく魔法が使える。
得意なのは水のようだが、魔力も多く、アタッカーとして頑張っていた。
ドンの町、そこにいる冒険者で攻撃魔法が使える者は少ない。
カルロス、アレス達の配下として魔法部隊は存在するが特別な任務以外では余り出て来ない。
その一員であるビクトリアも早々出て来ない。
この間のオーク討伐は特別な任務だった。
今は防衛に徹しているそうだ。
だから魔女っ子ナオは重宝されている。
彼らは冒険者の流儀で町に溶け込み始めていた。
逞しいものだ。
もっともドンの町が強い者を求めているという理由が一番かも知れない。
ドンはまだ開拓途中なのだから。
危険がいっぱい。
そういう事だ。
(マスター、客は二人組です)
(ほう)
(冒険者のような出で立ちです)
(そっか。荒事になるのかなぁ……面倒だ)
(私が対応しましょうか?)
(……いや、惨劇しか思い浮かばない。止めておこう)
(解りました)
(これからそっちに行く)
(上から見ております)
晶が朝食を食べ終わった辺りでゼロから念話が入る。
晶を訪ねて来た者は二人組の冒険者らしい。
余り楽しい話にはなりそうもない。
女将さんに朝食も美味かったと言って宿を出る晶。
ヴァイとエグゼも晶の後ろだ。
ヴァイはニヤニヤしている。
とても楽しそう。
土を固めた通りを進む。
既に動き出している冒険者や商人、荷運び人の姿も多い。
新しい朝が来た。
門が見えてくる。
扉は夜になるか緊急時でないと閉まらない。
だから既に開いている。
衛兵の姿が見える。
六人ほどだ。
いつもは二人のはず。
みな槍を持っている。
晶の客を警戒して裏から出て来ている模様。
やはり厄介ごとの匂い。
「おはよー」
「お、来たか」
「おはよう」
「アキラ、客だ」
晶がのほほんと衛兵達へ朝の挨拶。
衛兵から返事が来る。
そして後ろへ下がっていく衛兵達。
六人の衛兵は扉の辺りで晶を見ている。
今後の展開が気になるのだろう。
「お前がアキラか!!」
「おまえ、お前のせいでぇっ!!」
「はぁ?」
衛兵から晶の名前が出た所で二人の客が怒号をあげた。
大声で煩い。
言葉の内容は非難であった。
いきなりである。
アキラは見知らぬ二人からの非難に疑問の声をあげる。
(なんじゃ、このムサイ男どもは)
(煩いですね、この男達)
「こんな所にいやがって!おかげでみんな海の藻屑だ!!」
「くそったれ!何でこんな所にいるんだよ!!」
「誰だお前ら?俺がお前らを呼んだか?あほう」
「くっ!お前が悪いんだよ!!」
「そうだそうだ!」
「だーかーら、誰なんだよ」
「コナモからお前を探しに来たもんだ!」
「おう。コナモで有名な『猟犬』のもんだ!」
(コナモか。キーナ商業国の首都じゃ)
(私とタケマツさんがこっちへ渡る前に通った所ですねぇ)
タケマツとカヅキが文句を言っている。
見た目も行動もうざい男達。
無理もない。
そんなうざい男達は晶を罵倒している。
かなりの逆ギレっぷり。
大したものである。
その様子に晶が呆れながら突っ込んでいる。
ついでにケンカも売っている。
いや買っているのか?
そんな男達はキーナ商業国の首都コナモから来たらしい。
パーティ名かクラン名を名乗っているが晶が知るはずもない。
「知らねーよ。勝手に来ておいて騒いでんじゃねーよ!」
「うるせー!」
「お前のせいなんだからな!五十人もいたのが二人になっちまった」
「それはゴシューショーサマ」
「おう。迷惑料も出せや」
「そうだそうだ!」
「拳骨でいいか?蹴りの方が好きか?」
「金に決まってんだろ!」
「ほ、宝石でもいいぞ?」
程度の低い言い争い。
ケンカにもなっていないような……。
まともな会話になっていなそう。
「それで俺に何の用だ?」
晶が呆れつつ聞いている。
晶自身が主導しないと話が進まないと思ったのだろう。
南無。
「そう!それだ!あるお方がお前を雇ってくれるそうだ。ありがたく思えよ!」
「雇ってもらえたら迷惑料を払えよ!」
どうやらこいつらは誰かの依頼で、わざわざ南大陸へ渡って来たらしい。
行動力は凄いと言わざるを得ない。
考えなしではあるが……。
冒険者とはこんな者なのだろうか。
いやコナモのレベルが低いだけだと思いたい。
「俺は既に雇われているんだよ。一昨日来やがれ」
「お、お前、伯爵様の命令を断ろうってのか!?」
「命知らずかよ……」
「命知らずはお前らだ!実際みんな海へ沈んだか魔物に喰われたんだろ?」
「ぐぬぬっ」
「俺達は冒険者だからなっ!冒険はするさ!」
「その心意気は買うが、使いどころを間違ってんぞ。ついでに言えば依頼主を明かしてるぞ?」
「あっ!」
「アニキィ!」
(あほですね)
(何なのじゃ、こいつらは……)
真面目に対応するのが馬鹿らしくなるほどの相手。
カヅキとタケマツにも呆れられている。
晶の後ろでヴァイが笑い転げている。
エグゼも目を背けて笑いを堪えている。
衛兵達も珍獣を見るような目だ。
やはり特殊な冒険者と見るのが正しいっぽい。
「うらぁっ!」
「てめーっ!!」
いきなり晶へ殴りかかる二人組。
晶が全力で対応しませんように……。




