閑話2-2
短い閑話です。
本日二話。
閑話2-2
僕がその人に会ったのは草原を吹き抜ける風に冷たさがなくなった頃だった。
そう、オークの群れと戦っている時の出会い。
「うおぉぉっ!!」
雄叫びと共に空から人が降ってきた。
ふわふわ浮くような女の子でもなかったし、親方は呼ばなかった。
うーん、僕は何を言っているんだろう。
混乱しているのかも知れない。
空の先にワイバーンを見たからかも知れない。
土煙の向こうにちょっとカッコイイ感じの人がいた。
見慣れない恰好だ。
ワイバーンから飛び降りて来たって事だよね?
テイマー?
凄い!!
その人に気付いたのは僕だけではなかった。
当然だ。
あんな登場の仕方だもの。
兵士達がざわざわっとしている。
「助っ人は必要か!!」
その人は僕達に向かって大声で助けがいるかと聞いて来た。
どうやら味方になってくれるらしい。
実力のほどは判らないが……ワイバーンを従えている男だ。
弱くはあるまい。
そして彼の特徴に気付いた。
彼の髪は黒髪であった。
黒髪……黒目……お爺様や父から話を聞いた事がある。
違う世界……良く判らなかったが、空の彼方で光る星、そういった所からやって来た者。
それが異世界人というらしい。
ムロン帝国で行われた異世界人の虐待。
それから異世界人による報復。
都が半壊し、帝国は解体の憂き目に会った。
自業自得だろう。
だが、そういう事が出来る存在、まったく同じではないだろうがそれが目の前にいる。
恐らく間違ってはいまい。
僕は焦った。
ここにいる兵士達、それから守るべき民。
タマギ島にいる父、母、弟に姉の顔も浮かんだ。
みなに影響を及ぼす訳にはいかない。
僕に与えられた時間は少なかった。
戦っている最中なのだから。
兵士達の動揺を抑え、指示を出さなくてはいけない。
保留だ。
状況の保留。
返事をする。
「頼む!手を貸してくれ!!」
僕は叫んだ。
手を貸してもらえる代償があるかは判らない。
だが僕達を助けてくれる意思があるならば悪い方へはいくまい。
だから頼んだ。
彼が頷いた様に見えた。
そして彼は手あたり次第にオークを倒していく……。
動きが速い!
攻撃も凄まじい!
彼が動けばオークが倒れる。
目が離せない。
気になる。
だが、僕はここの指揮官。
止まる訳にはいかない。
兵士達を叱咤激励しながら、指示を出す。
幸い兵士達は誰も死んでいない。
怪我人は後方へ移送している。
兵士達の守りは堅い。
オークは大きい。
体格の差がある。
だが、盾で防ぎ、動きを止める。
間合いの長い槍で盾の間からオークを突く。
オークは突進してくるが兵士達の守りを抜けていない。
そして精鋭部隊もいる。
遊撃として状況を見ながら自由に戦う事を許している。
僕達が引き寄せて守り、精鋭部隊が叩く。
上手くいっている。
精鋭部隊は一人でオーク一体を屠れる。
装備も良いので安心して任せられる。
時間は僕達の味方だ。
なぜなら……。
「兄さん!!」
「若!!」
森の方から声が聞こえた。
ビクトリアとゼストだ!
オークの集落を潰しに行ってくれた本隊だ。
本隊は魔法使い達が加わっている。
僕達の切り札の一枚だ。
僕達が騒ぎ、目立ち、オークを引き寄せる。
手薄になったオークの集落を叩く。
誤算はあったオークの数が多すぎたのだ。
彼らが来たという事は作戦が上手くいったという事だろう。
そして黒髪の男の助力。
何とかなりそうだ……思わず顔が緩む。
だが隣に居る爺が見て来たので顔を引き締める。
爺は心を読めるに違いない。
やれやれ。
「来たか!!オークの集落を潰しに行った本隊が来たぞ!!もうひと踏ん張りだ!!」
「「「おぉっ!!!」」」
僕は兵士達に作戦の成功を告げ、士気を高める。
兵士達もビクトリアに気付いている様で、すぐさま返事が来た。
頼もしい。
そして黒髪の男、彼の周りは死屍累々であった。
チラリと見ただけだったが立っている者はほとんどいない。
恐ろしいまでの力だ。
おかげで時間の問題だろう。
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僕が彼に助けてもらった礼を言うと爺が文句を言って来たので窘めた。
礼を言うのは当然だが、彼は扱いを間違ってはいけない相手でもあるのだ。
ムロン帝国の様な真似をするつもりはないが、同じ轍を踏んではいけない。
用心に用心を重ねる。
そのくらいの気持ちで対応する。
「すまない。身内で話をしてしまった」
「か、構わない。大事な事だったんだろう」
「助かる。では改めて……ご助力感謝する」
「えっと、お役に立てた様でなにより」
何となく彼の言動、態度で良い人っぽいと思った。
だが、甘えてはいけないだろう。
南の大陸への足掛かり、ドンの町がやっと形になってきたのだ、守らねばなるまい。
いやドンだけではないかも知れない。
タマギ島、タマギ王国の未来に関わる可能性すらある。
僕と彼の出会い。
戦いの場ではあったが不幸ではない出会い。
神に感謝する日が来るのかも知れない。
そんな予感があった。




