2-29
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パスカル率いる地竜討伐隊が森を進んでいる。
討伐隊以外にも参加者はいた。
荷物持ちが数人と……。
「君らも参加していたのか」
「ん?えっとどちら様でしたっけ?」
「判らないか……っと、私だよ」
フルプレートで盾を持った重装の人から話しかけられたイェン。
白いサーコートを鎧の上から来ている。
騎士っぽい見た目だ。
どうもイェンを知っている人物らしい。
イェンと晶を指して君達と言っている。
誰だか判らないイェンが警戒しつつ対応している。
兜の面貌を上げた、その人物は……。
「あ、レベッカさん!あれ?何で?」
(わぁ、レベッカさん!全身鎧!強そう!カッコイイ!!)
(戦えるとは思っておったが、これは……)
教会の軍曹ことレベッカがいた。
重装の人が誰か解ったイェンは目を丸くしている。
そして不思議そうな顔。
何でこの人がこんな格好でここに?といった疑問だろう。
カヅキの声は興奮している。
女子から見てもカッコイイのだろう。
フルプレート姿のレベッカは凛々しい。
タケマツも驚いている。
恐らく戦い方の予想が違ったのだろう。
重装だとは思わなかったに違いない。
「ふふっ、驚いているね。私達は回復役として呼ばれたのだよ」
「回復……えっと回復役っぽい恰好ではないのですが……」
「私は自分の身は自分で守れるからね。それなりの装備を整えて来たのだよ」
「強そうだとは思ってましたが、その恰好をしていると相当強そうに見えますね」
「うむ。実際弱くはないぞ」
「でしょうね」
イェンが回復役として呼ばれたというレベッカに疑問を呈している。
回復役というより前衛。
それも主力級の前衛。
「レベッカさん、前衛も出来るんですね」
「私は聖騎士だからね」
「おぉ!聖騎士!凄い」
「カッコイイ!」
(ねー!カッコイイ)
晶も話に加わった。
寂しかったのかも知れない。
そしてレベッカは聖騎士だという。
それに素早い反応を示すイェン。
聖騎士に憧れでもあるのだろうか?
晶は聖騎士と聞いて単純に思っているイメージを当てはめたのだろう。
小並感。
「私だけではないがね」
「こんにちは、イェンさん、アキラさん。クィンです」
「こんにちはー!マリーもいるのです!」
「こんにちは……」
「こんにちは!クィンさんにマリーさん!それと……」
「ォルソ……」
「はい?」
「この子はオルソン。女の子なのに男名前を付けられてしまったのだ。気にしてるからオルと呼んでやってくれ」
「オルさん、よろしく」
「よ、よろしくー」
レベッカ以外にも教会からの参加者がいた。
次々に挨拶をしていく。
ん?小声で聞き取れない声。
聞き返すイェンにレベッカが説明している。
男名前の女の子、オルソンの登場で出番を喰われたクィンとマリー。
美人さんと可愛い子なのに憐れ。
オルソンことオルも清楚で可愛らしい。
教会には顔の審査があるのだろうか?
いや、こちらの世界全体で顔のレベルは高めだ。
男はちゃんとイカツイのや悪人顔もいた。
晶はどもることなく挨拶を返している。
逆にイェンは聞き返した事で悪い事をしたと思ったのか動揺している。
まだまだ若いイェンであった。
「クィン達は回復がメインだよ」
「はい。回復はお任せください」
「任せるの!」
「でも怪我はしないでね」
レベッカがクィン達はレベッカと違うと説明。
正しい回復役らしい。
確かに、教会で見た格好、シスター服のままだ。
「はい」
「うるおいがあっていい」
「イェン、ストレートすぎだ」
「大事なことだ」
「照れるですー」
晶に続きイェンが女性陣を見て素直な感想。
荒っぽい野郎ばかりなのは嫌なのだろう。
大事なことだと言い張っている。
マリーが身をクネクネ捩らせて照れている。
クィンとオルは言われ慣れているのか特に変わっていない。
因みに年齢順ではレベッカ、クィン、マリー、オルである。
細かい年齢については割愛。
睨む人がいないとも限らないからね。
周りの野郎どもから嫉妬の目で見られながら森を進む晶達であった。
教会のシスターは冒険者にとって痛い目にあっている時に助けてくれる天使。
しかも美人揃いときたものだ。
無理もなかろう。
晶とイェンは闇夜の晩は気を付けるべき。
▼
晶はゼロに念話を入れていた。
(ゼロ、地竜討伐隊には近づくなよ)
(承知)
(万が一の時は頼むな)
(逃げずに倒してしまってもよいのでしょう?)
(くっ、いいセリフを知ってるな……)
(学びましたから)
ゼロに討伐隊に近づくなと連絡。
地竜だけでなくゼロもやられかねない。
それだけの戦力は集まっている。
だが晶は勝てない時の事も考えていた。
いざとなればゼロに乗って逃げるつもりらしい。
それから晶達は対象外の魔物と何度か戦闘をしていた。
もちろん他の冒険者達もだ。
とはいっても小物ばかりであった。
地竜に狙われる事もない小さな物達ばかり。
特に逃げ出したりもしないのだろう。
気付いていないだけかもしれないが。
そうして角を持った兎を倒した辺りで前方がざわついた。
ザワ……ザワッである。
「繋ぎが来た」
「斥候は見失ってないようだな」
「おう」
どうやら地竜に張り付いている斥候から連絡が届いたらしい。
冒険者達の間に緊張感が漂う。
目的の戦闘、その時間が近づいているからだ。
誰かの喉がなった。
ざわつきも直ぐに収まる。
地竜が近くにいるからだろう。
出来れば奇襲したいはず。
チンピラも混じっていたようだが冒険者達の想いは一致している模様。
森が静かになった。
「魔法職からの初撃で行くぞ。その後は各自突っ込め」
「任せて」
「一番強力なのでいくわ」
「……うん」
「「「おう」」」
「ヤツのケツにぶち込んでやらぁ」
「お前も好きだねぇ……」
「地竜の尻尾は強烈だというぞ。気を付けろ」
「あと、魔法な。石礫の連射はきついそうだ」
「そこは盾職にお任せだ」
「おう」
地竜討伐隊を率いているパスカルから大雑把な通達。
我の強い冒険者達が相手ではこれが精一杯なのだろう。
数少ない女達がパスカルの言葉に反応。
ここにいる女冒険者は例外なく魔法が使える。
頼もしい。
男共にも気合が入る。
各パーティごとに打ち合わせている。
役割はちゃんと理解しているようだ。
初撃の魔法攻撃でどれだけ地竜にダメージが入るかが戦闘の鍵かも知れない。
その後はお互い削りあう展開が予想される。
「行くぞ!」
「「「おう!」」」
パスカルの周りに魔法使い達が集まって進む。
更に強まる緊張感。
しかし、みなの足取りは遅くなかった。
やる気満々。
少し進んだ所でパスカルが手を振った。
手を振った先には人の影。
どうやら斥候の一人が待機していた模様。
地竜は近い。
(いたぞ)
(あれね……)
(大きいわね……)
(硬そう)
パスカルが小声で地竜を発見した事を伝えている。
側に居た魔法使い達がそれに反応。
目を閉じて聞けば男が自信を持ちそうな言葉の数々。
うん、気のせい。
あ、晶以外にも目を閉じている男達が!ニヤニヤしてキモイ。
余裕か。
大した余裕である。
(魔力には敏感だろう。ここで発射準備を整えて突っ込め)
(解ったわ)
(森の被害は考えずに火、炎でいきましょう)
(威力でいえば仕方ないわね)
(地属性相手だからしょうがないかなー)
(ちょっと待ってねー)
(やるわ)
(黄昏より……)
(大いなる炎よ……)
(猛きこと……)
パスカルの指示が続く。
詠唱に入る魔法使い達。
五名の魔法使いは全て女。
初撃を任されたとあって気合十分。
戦闘では詠唱短縮を使う者が多い。
一々詠唱していられないからだ。
それでも詠唱するのは威力が上がるからだ。
奇襲の初撃で最大威力をぶち当てる。
戦術としては正しかろう。
(魔力が増大していくわ……)
(この距離……気づかれそうじゃぞ)
(大丈夫なのかしら?)
魔法使い達が集まり魔力を高めている。
それを心配するカヅキ達。
そして魔法使い達が走った。
森の先、小さな岩山にいる地竜目掛けて走っている。
魔法をキャストしたままだ。
いつでも攻撃魔法を放てるだろう。
「ちっ、さすがに気付くか。野郎ども出番だ!魔法使い達を襲わせるなよ!」
「「「おう!」」」
「「行くぞ」」
パスカルが地竜に動きがあったのを察知した。
そして待機していた冒険者達に大声で叫ぶ。
もう隠れる必要はないという事だろう。
冒険者達も大声で返す。
気合を入れるためでもあったろう。
魔法を放った後の魔法使い達にヘイトが集まらないように突っ込んでいく冒険者達。
勇敢である。
晶とイェンも走っている。
イェンの手には買ったばかりの鉄の盾と鋼の剣。
鋼の剣でも地竜にどれだけ効くかは判らない。
前の鉄剣よりは良いとイェンは言っていた。
イェンの隣を走る晶は剣鉈を抜いている。
まぁ、恰好だけだと思われる。
才能ないらしいからね。
周りの冒険者に対するアピールだろう。
難儀である。
そして魔法使い達から炎の魔法が放たれた。
森にあった暗い影が払われている。
眩い。
お互いの魔法が干渉し合わないように炎の魔法で統一されている。
そこを調整する程度には連携するのだろう。
むしろ強力な一個の魔法になっている。
「うぉぉぉっ!!」
炎の魔法を間近に感じて興奮している晶。
雄叫びを上げて走っている。
直接目にしていたらどうなっていたのやら。
(十m先に段差あり)
(その先は木がなく広場になっておる)
(ありがとう!)
包帯眼帯なのでカヅキ達からフォローが入ったり。
人や魔物ならともかく、地形は把握し辛い晶。
木も解りやすいが地面は解り難い。
助けられている。
そうこうしている間に炎の魔法が地竜に当たるのであった。
地竜戦の始まりである。




