1-4
毎週土曜更新といいつつ、投稿。
基本は土曜で余裕があったらランダム投稿という事で。
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俺は飛び起きた。
いや起こされたというのが正しい。
広くもない洞窟、それを揺るがすほどの音響。
ギャオォッー!と響く重低音、それは何かの鳴き声であった。
そして俺の目に映ったモノは……怪獣の頭だった。
洞窟の入り口を隠す頭と首は大きい。
頭蓋骨だけで人間くらいありそうだ。
飛び起きた俺がこんな事を考えられるのには理由がある。
この怪獣の頭は入っても体は洞窟へは入れなそうだったからだ。
おかげで驚きながらも醜態をさらさずに済んでいる。
更に観察してみる。
爬虫類っぽい顔、妙な質感の肌は灰色。
威嚇しているのか鳴き声を上げる。
その時に口から覗く歯は鋭そうで鮫を連想させる。
これはあれだな、ドラゴンかワイバーンって奴じゃなかろうか?
トカゲっぽい顔立ちではあるが系統としてはそんな感じだ。
頭を左右に振ったりしているが十mほどの洞窟の内、せいぜい三mくらいまでしか入れていない。
怪獣はジタバタしている。
頭はあんまり良さそうではない。
そして大事な所……炎や毒といったブレスを吐かれたりはしていない。
魔法も使われていないと思う。
冷静に分析しているつもりだが、焦ってもいる。
何せこの状況を打開する術がないからだ。
しかも怪獣が動いている隙間から似たような奴らが後ろにいるのも見えた……。
もしかしてこの洞窟は怪獣の群れに包囲されている?
嫌な想像が頭を過った。
視てみるか。
俺は魔眼を起動する。
ぐはっ!怪獣の仲間達がいっぱいいるじゃん!!
「ハハッ……」
俺の口から乾いた笑いが漏れた。
現実逃避ぎみに違う事を考えてみる。
魔眼……俺の目で出来る事は暗視だけではなかった。
昨夜、混乱しつつも無理やり横になった。
そして目を瞑った時にこの魔眼に気が付いた。
何が出来るかと言うと、何かが見えた。
その何かは洞窟の壁が少しだけ明るく見えた。
目を瞑っているのにだ。
即、目を開けて壁を見てみた。
暗視が効いているせいで判らなかった。
次に暗視をオフにしてみた。
さっきと同じ様に壁が少しだけ明るく見えた。
何かが見える目……俺はありがちな所で魔力と睨んでいた。
そして今、魔眼を起動して見えたのはサーモグラフィーで見える輪郭の様だった。
それは若干くすんではいたものの白っぽい輪郭だった。
輪郭の数は十体以上。
羽を広げて飛んでいるらしき奴らもいた。
ゲームでいう所のワイバーンが近いと思われる。
尻尾まで考えると全長十mくらいありそうだ。
しかし羽は飛べる様な羽には見えない。
謎パワーで飛んでいるのだろうか?
ファンタジーだな。
魔眼の効果を確認出来たのは嬉しいが状況は好転していない……。
とりあえずやってみるか。
俺は洞窟に転がっていた石を掴んで怪獣の頭めがけて投げた。
人の頭に当たったらヤバイという大きさだ。
ゴッという鈍い音と共に怪獣が頭を振ったのが見えた。
そして再び洞窟内に響くギャオォッー!という重低音。
また洞窟が震えた。
ヤベッ!ここが崩れるかも。
それほどの振動があった。
それなのに投げた石はダメージを与えた様には見えない。
石が飛んでいった速度といい威力はあったはずなんだがな……。
俺の体が強くなってはいても怪獣ほどではなかったという事だろう。
「クソゲーかよ……」
文句の一つも言いたい。
チュートリアルくらい用意しておけってんだ!
いきなりハードモードな気がする。
石でダメだったんだから拳で殴っても効かないよな……。
武器なんてない。
ならばどうする?
「ステータス!」
「ステータスオープン!」
「メニュー!」
「自己閲覧!」
「情報閲覧!」
「くっ、ダメか」
打開策が思いつかなかったので定番の情報入手へと走ってみた。
ええ、だめでしたとも。
誰にも聞かれなくて良かった。
怪獣と目が合った。
曖昧な笑顔で返す。
返事はない。
次か……。
よしっ!ファンタジーっぽいんだから決まっている。
魔法だ。
だって体を使った攻撃は効きそうもない。
特殊能力は攻撃向きではない。
天職は死霊使い。
ここに死体はない。
魔法だろう。
俺は体内の様子に集中する。
活力は漲っている。
絶好調な気がする。
腕、足、頭、血が全身を駆け巡っている。
魔力、魔力……。
心臓が一番活発に動いている。
そして熱を感じた。
これか!?
血ではない何かが心臓の辺りに集まっている。
これ動かせるのかな?
やって見よう。
ピクリともしない。
全部を動かそうとしたのが間違いか?
少しずつ動かしてみよう。
ならば血と一緒に流す感じでどうだ?
▼
いつしかワイバーンの鳴き声も耳から消えていた。
無我の境地、瞑想といった所だったのだろう。
心臓にあった力の塊は細かく分散され血を通して体に満たされた。
何だか生物として上の存在へ駆け上がった気がした。
そのくらい力が漲っていた。
先ほどの比ではないと思う。
気のせいでない事を祈りたい。
「ふぅ……」
賢者タイムではない。
作業の終了で力を抜いただけだ。
俺の体を薄い膜が覆っている。
イメージとしてはそんな感じだ。
俺の心臓辺りにあった力を体表に出してみた。
実際に出ているかは判らない。
「やって見るか」
俺はまた石を拾った。
右手の上で石をポンポンと跳ねさせる。
へへっ、見せ場はこれからだぜ?
何だかラノベの主人公っぽくなった。
言葉に出して周囲に人がいたら切なかったろう。
俺はさきほどと同じ様に怪獣の頭めがけて石を投げた。
命中とともにドゴッという音がした。
さっきより芯に響いた感じの音だった。
怪獣の頭がずれる。
そして石は木端微塵になった。
またまた洞窟内に響くギャオォッー!という重低音。
洞窟が震える。
だが俺の耳には思ったより響かなかった。
違いがあるとすれば俺を覆っている力だろうか?
色々遮断してくれるのかも知れない。
何でもありか?魔力。
そして思う。
もっと威力があると思ったのになと。
ひょっとしたら怪獣の頭が弾け飛ぶんじゃないか?
心の奥底で期待していた。
俺TUEEEEの始まりだとも。
何かが違う。
体にあった力はもっと凄いモノだと感じていた。
使い方を間違っているのかな?
そう思った。
体表を薄く覆っている魔力を厚くする?
それとも心臓辺りで沢山余っている魔力を使う?
そうしよう。
石を投げる右腕に余っている魔力を送ろう。
まだ瞬時に魔力を展開出来るほど慣れていない。
再び瞑想に入る。
右の肩、右腕、右手……魔力を集中させる。
よしっ!
パーカーが弾けたりはしていない。
腕が膨れ上がったりもしていない。
筋力とは別の力だ。
いけそうだ。
石を拾う。
拾ったが握る段階で石が砕け散った……。
「ハハッ」
今度は乾いた笑いではない。
勝利を確信した笑いだ。
いける。
俺が主人公の物語の始まりだ。
怪獣君、やはりチュートリアルだったみたいだぞ?




