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 冒険者のまとめ役であるウィルに冒険者達を紹介してもらい、翌日から冒険者達と働く晶であった。

ウィルは浅黒い肌で明るい茶髪の熊みたいな大男であった。

ゼストは二mくらいあったが、ウィルも似たような大きさだ。

左頬、横に走る傷跡が精悍さを増している。

いつも大声で笑う時はガハハハッである。

単純で豪快そうに見える。

まとめ役だというので単純ではないと思うが。


 冒険者達と働く……つまり晶も冒険者的な立場になる。

報酬はアレス王子、タマギ王国から出るとの事。

何やら特別扱いっぽい。

まぁ、冒険者ギルドが進出してきていない現状ではそれしかないのかも知れない。

イェンも付いて回った。

ウィルが一緒の時も多い。

晶本人はともかく、周りのおかげで上手く働けていた。

もちろん魔物討伐では抜群の力を示していた。

それも冒険者達と上手くやれている一因であろう。

冒険者は強くてナンボ。

そういった面が強い。

だから強い晶は一目置かれる訳だ。

更に空を飛べるゼロが付いてくるので、警戒、奇襲、運搬、冒険者達はとても効率よく仕事をこなせた。



 仕事を終えた夕方辺りからは酒場兼食事処で呑んだ。

そういった店は何件もあるそうだ。

一緒に呑む、これも円滑に仕事を進めるうえで大事らしい。

晶は人付き合いが得意そうではなかったが、周りが動いてくれていたので何とかなっていた。

カヅキやタケマツからの指示で情報収集を怠らない晶。

魔物の種類や戦い方、この辺りで有用な植物、人々の暮らしに至るまで色々聞いていた。

カヅキとタケマツが生きていた頃と変わっている事もあるだろうから当然の作業。

イェンの手助けも大きかった。

イェンは父親がタマギ島にいる王の護衛その一員で兄も兵士、そして自身も兵士になったとの事。

明るく純朴な人柄である。

冒険者達とも分け隔てなく仕事をし話をしていた。

どんな所でも仕事ができそうな雰囲気。

それほどイケメンではないが周りに女性がいればリア充だろう。

少なくとも陰キャではない。

イェンはアレス王子から晶の事をある程度聞いているのか、周囲との繋ぎを上手くさせてくれていた。

おかげで黒髪、黒目については珍しいな、程度の話しか出た事がなかった。



「かんぱーい!!」


「「「かんぱーい!!」」」


「この一杯のために生きているな!」


「がはははっ!そりゃ言い過ぎだ」


「でも美味いよな」


「おうよ。生きて戻って呑めるんだからな」


「だな」


「しかしアキラはつええな。あんな棍棒でよくぶちのめせるもんだ」


「まったくだ。オークの残党もぶっ叩いていたし、どうかしてるぜ」


「そ、そうか?まぁ体が頑丈に出来てるからな」

(それで通すんですか……)


「頑丈か!俺らもそうだが親に感謝だな!」


「おう!島の者を早く呼べる様にしないとな!!」


「「おう!」」


「良い事を言うぜ!ここを足場に農地を広げ、鉱山を探さんとな!」


「金属が全く足りていないからな」


「島じゃ限界があるってもんだ」


「船で運んでくれるような物好きも、ほとんどいないしな」


「だな」


「ここで鉄でも見つかったらアキラも剣にしろよ。もっと強くなれるぜ」


「剣!いいね。早く欲しいよ」

(買えたのは鉄のナイフ一本ですもんね……)

(兵士以外は青銅の武器持ちも珍しくない様じゃし)


「いや槍だろ!間合いが長くていいぜ!」


「たて……盾こそ要」


「弓っしょ!一方的にやる!これこそ人の進む道!!」


「がはははっ!俺達でここを守り、危険を排除しようではないか!!」


「「「おう!」」」



 言葉は荒いが独特な雰囲気の宴会。

悪くなさそう。

性別が男だけってのもいいのだろう。

女っ気がないが、楽しそうな宴会に見える。

酒もビール?いやエールだろうか、それしかない。

ワインもあるらしいが、女性が出てくる様なもっとお高い店でしか呑めないらしい。

そしてタマギ王国には資源がないとの事。

島だからだろうか。

晶も武器を買いにいったが、武器は兵士に優先的に回るそうでまともな武器は買えなかった。

鉄のナイフだけを買っていた。

まぁ、刃物があるだけで大違いだろう。

主武器は木の棍棒と拳だけだが……。

冒険者達は自らが命を預ける武器に一家言ある様だ。

それぞれ晶に今後使うべき武器を示している。

楽しそうだ。

まとめ役であるウィルはさすがである。

上手くまとめていた。



「俺もデイジーの店に行くんだ!」


「お前の稼ぎじゃ、しばらく無理だろ」


「ぐぬぬ。でも行くんだ!」


「おう、頑張れよ」



 俺も稼いで呑みに行くんだと若い冒険者が気勢をあげている。

そういう店もこちらに来ているみたいだ。

若い女性もいない訳ではないらしい。

年嵩の冒険者から適当な言葉で慰められていたり。



「若い女があんまりこっちにいないのは判ったけど、エ、エルフとかドワーフはいないのか?」


「いないな。少なくともタマギ王国にはいないはずだぜ」


「俺も見た事がないな」


「中央大陸にはいるぞ」


「あー、ウィルは何度かあっちに行ってるもんな」


「ぴっ」



 晶がエルフやドワーフに付いて尋ねると周りの冒険者達が話に乗って来た。

そしてウィルは見た事があると判った。

そう聞いた晶が嬉しそうにしている。

ぴよこが食べ物を持ってくる手が止まっていると晶の手を突いて催促している。

オコらしい。


 ぴよこは恐らく魔物。

イェンが王国公認の使役魔物の登録をしてくれていた。

ゼロもである。

人を襲わず、晶の言う事を聞いてくれているので通った登録。

ぴよこは晶の言う事を聞いているかは怪しかったが……可愛さで押し通した気がしないでもない。

本来は担当の役人か冒険者ギルドでやる登録らしい。

国公認か、冒険者ギルド公認か、結局はどこが責任を持つかという話だそうだ。

ぴよこは登録の証として首に白っぽい布を巻いている。

食事風景と相まって前掛けの様である。

ちょっと可愛い。

ゼロは大きいので何もなしだった。



「おう。エルフは一度見た。ドワーフは鍛冶屋で何人か見た。獣人はそこそこいたぞ」


「やっぱいるんだ……」

(ワシの言葉を信じてなかったのか?)

(いやぁ……)

(私も何人か見ましたよ。獣成分少な目でした……)

(カヅキさん、何で残念そうなの?)

(モフモフは耳と尻尾だけ……)

(……モフモフ)


「ウィルさん、ムロン帝国では亜人は奴隷しかいないって聞きましたけど、どうなんですか?」



 若い冒険者も興味が有る様でウィルに聞いている。

ムロン帝国は中央大陸の真ん中で覇をとなえた国。

異世界人を一番喰いモノにした国でもあった……。

異世界人の復讐にあって都が大打撃を受け、属国が一斉に離れて力を落としている。

とにかく周辺国にとっても受けが悪い国らしい。

属国が無くなっても帝国は帝国と名乗っている模様。

それどころか皇帝は大帝と名乗りだしたとか。

やけっぱちであろうか?



「あー、そうらしいぞ。俺の行ったコナモ王国も奴隷はいたな」


「奴隷……」


「何だ、アキラは奴隷が欲しいのか?タマギ王国じゃ犯罪奴隷しかいないから迂闊な事を言うなよ?」


「違う違う!そんな制度があるんだなって驚いただけだ!」


「そうか。それならいいんだ」


「奴隷ってどうやって従えているんだ?」



 晶がウィルに釘を刺されている。

奴隷を欲しがっていると思われたのだろうか?

それに対し慌てて否定する晶。

たぶん本心だろう。

人の尊厳に関わる話だ。

だが奴隷には興味があるのか晶は話を続けた。



「タマギの犯罪奴隷は魔導具を首に着けられているな。あと、話では魔法でも従えられるらしいぞ。呪術師だったか珍しい職の者しか出来ないらしいがな」


「ほー」


「珍しいし、危険でもあるから国に管理されているらしいぞ。呪術師」


「それもそっか」


「おうよ」



 ウィルは物知りだった。

奴隷に付いて良く知っていた。

ウィルも興味があったのかも知れない。

そして呪術師。

何となく危なげなイメージ。

晶もそんな風に受け取っている模様。

それでも他人事の様だ。

軽く話している。




「アキラ、あの方(・・・)から連絡が来た。明日会おうと」



 宴会の最中、イェンから耳打ちされた晶。

あの方……アレス王子からの連絡らしい。

さっきイェンの所へ来ていた小男がそうだろう。



「……判った。明日行こう」


「はい」


(来ましたかー)

(いよいよじゃな)



 晶は少し考えてからイェンに返事をした。

カヅキ、タケマツが晶の代弁をしていると言っていいだろう。

ついに晶の今後を左右する話し合いが成されるはずだ。

晶が緊張するのも無理はない。

だがカヅキ達はそれほど気にしてはいないのか結構軽い口調であった。

既に死んでこれ以上悪い事はないからなのか、いざとなればゼロに乗って逃げればいいと思っているのかは判らない。

晶がいないと出来る事が減るので逃げればいいと思っている気はする。



 運命の対談は明日と決まった。

賑やかな宴会の中、晶、イェンの二人だけが真面目な顔になっている。

いやぴよこもだ。

白身魚が口にあったらしい。

塩焼きだ。

真剣な顔で突いている。



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