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2-8

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。


2-8




 アレス王子達との食事は無事終わった。

アレス王子から黒髪、黒目の事を暗に言われたが何もするつもりはないらしい。

拘束されたり尋問されたりという事はなかった。

タケマツに油断するなと何度も忠告されただけあって晶は食事をしつつも気を張っていた。

周りから見ればただの挙動不審であったが……。

皆、大人なのか黙っていた。


 ぴよこはビクトリア王女の餌付け攻撃を躱しきった。

最後はいい仕事をした!と誇らしげに晶のフードへ収まった。

ビクトリア王女は残念そうに見えたが、まだあきらめていない模様。


 アレス王子達は食事の後、直ぐに仕事に戻っていった。

店の支払いは王子持ちであった。

それからオークは王子の買い取りとなった。

金貨、銀貨、銅貨、結構重い袋を渡されていた。

晶としても助かった様で礼を言い、昼食は終わった。

アレス王子は爽やかな笑顔で手を振って、この町で一番大きい館へ戻っていった。

オークの後始末で忙しくなるとの事。

運搬、解体、分配、やることは多そう。

そして後日、また話をしようと言っていた。

大きな声では言えない話だとも。



(私もマンガ肉を食べてみたかったなぁ……)


(ただの骨付き肉ではないか)


(あれはロマンなの!まぁ一口で十分そうだったけど)


(美味かったよ。最後は飽きたけど)


(見てたから知ってるー)



「アキラ殿は冒険者達が寝泊まりしている所へお連れしますが、そちらの……ワイバーンはどうしましょうか?」



 晶は念話をしながら歩いている。

晶の隣には一人の兵士がいた。

若い男だ。

オーク退治へも行っていた様で、兵士の装備から兜だけ外していた。

晶より少し背が低い。

明るい茶髪でソバカス顔の純朴そうな若者だ。

腰に剣を差している。

彼はイェンといい、アレス王子が案内に付けてくれた人だった。

そして今向かっているのはこの町ドンで冒険者が集まっている建物だった。

そう、冒険者がいるのである。

もっとも冒険者といえば聞こえはいいが、何の事はない短期派遣業だった。

依頼者と冒険者の仲立ちをするのが冒険者ギルド。

依頼は護衛、討伐、採取、素材調達、食料確保と色々ではあったが、長期に渡る仕事は余りないらしい。

そして危険も多い仕事。

だから依頼料は結構高額な物が多いらしい。

そのせいか金遣いが荒く、宵越しの銭はもたねぇ!的な者も多いらしい。

ドンではお金の使い道が少ないのでそうはなっていないそうだが。


 ここドンには冒険者はいるが、冒険者ギルドは出来ていない。

冒険者ギルドは国を跨いでの組織との事。

町がちゃんと機能して初めてギルドが進出を考えるらしい。

今、ドンにいる冒険者はタマギ島にある冒険者ギルドで依頼を受けてきている者達だ。

タマギ王国は他の国と移動がし難く、地元出身の者達がほとんどだという。

ある意味、ドンの冒険者は義勇軍といっていい。

志願して開拓に参加している様なものだろう。

タマギ島は危険な魔物を排除出来ているらしい。

海の魔物を除いてだが。

その海の魔物も上陸できる様な魔物は対処が難しくないとの事。

そして島は平地が少なく農地も広げられない。

資源も少ないらしい。

水には困っていないのだけが救いだとか。

だから南の大陸進出は昔からの祈願だったらしい。

実際、何度か挑戦したが断念した歴史があると。

今回は去年、満を持して人、物を細かく送り出し、結果過去最大級の構成になっているとアレス王子が語っていた。

その顔は嬉しそうでもあり不安そうでもあった。

開拓が上手くいっているからこその嬉しさであり、責任者の一人という事で不安なのだろう。

そう、アレス王子は南大陸進出の責任者、その一人であった。

一番上に立って指揮を執っているのは彼の祖父だという。

アレス王子は次席。

ビクトリア王女が三席らしい。

補佐として爺がそれに次いでいるとか。

アレス王子に第一王子が最前線にいていいのかと晶が聞いていた。

アレス王子は、この開拓は国家の最重要項目で、王族が出るべき事業だという。

そして、まだ王太子ではないとも。

弟二人に姉、妹がいるので何の憂いもないそうだ。

全力でやるだけですよ、と笑って言っていた。

笑って言うアレス王子に晶が驚いていた。

恐らく、あの若さで個より全体を大事としている事に驚いたのであろう、

しかも笑っていた。

晶は敵わないと思ったかも知れない。



「そうですね……ゼロと一緒にいたい所ですが……」


「……」



 晶がイェンに希望を言うがイェンは無言で首を横に振っていた。

晶も、そうだろうと思っていたのか、あっさり了解していた。



「森にいた方がいいか……ゼロ、森へ行ってくれ」


(解りました。ご用の際は念話で呼びかけてください)



「おぉ……」



 晶がゼロに言うとゼロは町の上空へ行き、森の方へ飛んでいった。

イェンはゼロが飛ぶのを間近に見て驚いたのか、晶のいう事をちゃんと聞いたのを驚いたのかは判らないが、驚いていた。

通りがかりの者達も驚いていた。

騒ぎにはならなかった様だが。

乱雑な町というのが幸いしている。



「では行きましょうか。案内をお願いします」


「は、はい」


(何だか反応が可愛いですねぇ)


(アレスより年はいってそうじゃがの)



 イェンの案内で道を進むのだった。

カヅキよ、たぶんカヅキよりイェンの方が年上だぞ。

可愛い呼ばわりは酷い。

晶は自分よりあたふたしている者がいると落ち着くのか悠然としたものだ。

微妙に小物臭い。



(あばら家というか、掘立小屋というか……)


(雨風さえ凌げればいいって感じですよね)


(こんなもんじゃろ)


(でも……みんな一生懸命だなぁ。何か、こう……力に成りたいって思っちゃうな)


(ふふっ、そうですね)


(そうじゃな)



「こちらです」



 晶達はドンの人々を見て意見が一致している模様。

好意的である。

そしてイェンが結構大きい建物の前に止まった。



「おー」


「今はほとんどの者が外へ出ているみたいですね」


「もう昼だもんね。そりゃ仕事の最中か」


「です」


「勝手に入ってていいのかな?」


「ええ。大事な物は館で預かっています。武器防具の手入れ道具や布団代わりの毛皮くらいしか置いてませんよ」


「ほー。そうなのか」


「お、私は一度戻っていいでしょうか?色々準備してきます」


「ん?イェンさんはずっと付いていてくれるの?」


「はい。アレス王子から指示されましたので」


「そっか、ありがとう。あ、あと口調は適当でいいよ。俺偉くも何ともないし」


「そう?それじゃー楽にさせてもらおうかな」


「うんうん。それで」


「では後ほど」


「おー」



 イェンはアレス王子の指示で晶に付いてくれるらしい。

他の者とのトラブルを恐れいているのか、晶を監視するためなのかは判らない。

もしかしたら常識が足りなそうな晶を補う意味かも知れない。

とにかくアレス王子が色々心配なのであろう事は何となく解る。

そしてイェンは良いヤツっぽい。

晶も上手くやっていけそうな感じに見える。

男かーなんて晶は思ってそうだが、女が来たらガチガチになっているかも知れない。

難儀なことである。


 晶はほーとかへーとか言いながら建物の中を見ている。

大部屋しかない。

板の間は寝る所だろう。

テーブルもない事から食事は外か、胡坐でも掻いて座って食べると思われる。

そういう場所だからか、履物は脱ぐ様だ。

土間的なつくりだ。

下駄箱もある。



(雑魚寝じゃな)


(プライベート皆無ですねぇ……)


(男臭っ!)


(ふふっ、頑張ってくださいアキラさん)


(何をだよ……)


「ぴ」


「ぴよこ、どうした?」


「ぴー」


「下を歩きたいのか?ほれ」


「ぴ」



 ようやくのんびり出来た晶であった。

その後鉄の胸当てを外し、軽装になったイェンと合流した。

イェンの紹介で冒険者のまとめ役と挨拶したり、町を案内してもらっていた。

まだまだな町ではあったが、危険は魔物だけっぽい。

恐らくだが、この町にいるのはタマギ王国の者だけ。

しかも開拓というタマギ王国の未来がかかっている仕事。

みな一致団結している。

晶の素性を察知出来る者がいるかも知れないが、今の所何をされるでもないだろう。

余計な事をしている暇があったら壁作りにでも参加するに違いない。


 町には子供がいなかった。

女もおばちゃんばかりだった。

職人の旦那に付いて来た様なおばちゃん。

晶にとって幸か不幸かは判らない。

そして物資が足りていなそうというのも晶達の一致した意見であった。

どうやらタマギ島からは頻繁に来れないらしい。

自給自足、無い物は無いで開拓していく様だ。

なるほど人々が一致団結して頑張らないと何ともならない。


 試される大地。

南の大陸はそういう場所らしい。




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