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大蛇と戦った湖。
そこから北西へゼロに乗って一日と少し、晶一行は移動していた。
ワイバーンの縄張りからこっち、ずっと木々に囲まれている。
林業を生業としているなら生活には困るまい。
森の恵みも豊富だった。
木の実、果物、キノコ、根菜、葉物、薬草と充実していた。
休憩で下に降りた時にタケマツからいくつか教えてもらっていた。
だがそれ以上にカヅキの力でモノの情報を知っていった。
終の手札は便利だった。
そう、とても便利だったのだ。
キノコをカード化すると写真と共にテキストが出る。
そこに食べられるかどうか、毒の有無等の情報が乗っていた。
しかも日本語、それ以外の言語、こちらの言葉への変更も可能だった。
チートである。
「カヅキさんの力……すげーな……便利過ぎ」
(えへへ、そう?そうかなー)
(うむ。とても使える力だ。鉄の矢を受けても弾き返しておった)
「壊れないんでしたね。防具にも出来るのか……凄い!」
(えへへ、やっぽそうかなー)
晶とタケマツからの称賛を浴びて、にやけるカヅキ。
顔が崩壊しそうである。
真面目そうな委員長顔で、ギャップが凄い。
だが整った顔のおかげだろう、この程度で済んでいる。
得だ。
晶はカヅキを褒めてから複雑そうな顔をしている。
何やら特殊能力に付いて思う所があるのだろう。
だが、そんな表情も直ぐに消えた。
割と切り替えが早いらしい。
まぁ、そうでなければ就活でとっくに潰れていただろう。
タフな男らしい。
いや、鈍感、又は考えなしの線も残っている。
「タ、タケマツさんの特殊能力は天の恵みでしたっけ?」
晶はカヅキの顔を見ていた。
見惚れているのかも知れない。
だがタケマツとも親交を深めたいと思ったのか、タケマツの力に付いて話を振った。
(うむ。まぁ雨乞いじゃな)
(えへへ……)
タケマツは淡々としたものである。
対してカヅキは戻ってこない。
素直な称賛が心地よいのだろう。
悪い男に騙されないと良いのだが……。
「天候を操るとか奇跡みたいで凄いですよね!」
(そうじゃな。お主らと違って代償もいらぬ。それなりの場所や天気にもよるがの)
「ほー」
晶は食べ物の重さ、カヅキはカードの重さ分、体の重さが減った。
カヅキはダ、ダイエットいらず!?などと理解した時、喜んだらしい。
天候を操るという奇跡に代償がないというのも凄い話だ。
(水場、海などがない場所では半日かかった事もある。水が大量にあれば半刻で雨を降らせられるのじゃが……)
「ほー。半刻……一時間だっけ?まぁいいや。作物を作ったりするのに便利そうです」
(うむ。それが一番役に立てる使い方じゃろう)
(農業が捗りますねー)
環境が整っていないと時間がかかる様だ。
砂漠では使えるのだろうか?
気になります。
カヅキも話に加わって来た。
ようやく普通に戻ったらしい。
タケマツの力、天の恵みは農作業にとても向いていそうだ。
(どうもワシらだけでなく、あちらから来た者の特殊能力は便利な生活が送れる力ばかりだと思われる)
(みたいです)
「ほほー。戦いの役に立つ力とかはないんですか?」
(話を聞いておる限りは持っておらぬな……使い方次第というのはあるが)
「なるほど……」
タケマツの言葉を聞いて自分の能力を戦闘に使うなら……と考えていそうな晶。
後、異世界人が最後の敵になるのはありがちだなとか思っていそう。
そして、その可能性は少ないかもと。
少なくても操られたりはしなそう。
能力を奪われたりも。
(殺伐としない反面、為政者に利用されそうですよね。こき使われなければ協力するのは吝かではないのですが……)
「とっつかまって、それだけをやらされたりしたら堪らんね」
(うむ。ワシらを薬や道具扱いしようという者がまったくいなくなっている訳ではあるまい)
「人……ですからね」
(その通りじゃ)
(悲しいけど、それが現実だと思います……)
そして全員の意見は一致していた。
人間の欲について、それぞれ思う所があるのだろう。
タケマツは相変わらず淡々と話しているが、晶、カヅキは悲しそうだ。
それが顔に出ている。
人生経験の差だろうか?
▼
(マスター!先で争いがある様です。恐らく片方は人族かと!)
休憩の後、再び空へ上がった晶一行。
ゼロからの念話。
まだ野営の時間には早い、そんな時間帯であった。
「ひと、人!?こっちの大陸にも人が進出してきているのか!!」
(来ておったのか!やるではないか)
(来ていたんですねぇ)
驚きの度合いは違ったが、それぞれ驚いている模様。
晶はついに霊体以外で人に会える、そんな感じで驚いている。
タケマツはワシら以外でよくここまで来れたなという感じだ。
カヅキは控えめな感想。
「ゼロ!争いの場所へ向かってくれ。上空から状況を把握する」
(解りました。マスター)
晶の指示を受け、進行方向を少し変えるゼロであった。
静かだがぴよこもいる。
晶の手の中で、お休み中。
さすがに飛行中はフードには入れないらしい。
落としても気づかなそうだしね……。
晶が優しく両手で持っていた。
(人とオークの戦いらしいのぅ)
(その様です。どうしますかマスター?)
「ここの所、何度も見ているオーク達だな。武器は棍棒、対する人は剣や槍を持っているな……だが多勢に無勢か」
(オークの方が多いですね)
(人の装備は整っておる……おそらく兵の類、タマギ王国の者じゃろう。二十ほどか、騎乗の者もおるな)
「おぉ。ってオークがどんどん増えているな。百くらいいる?もっとか?」
(凄い勢いで突進してますね。人の方は上手く陣を築いて対応してますが厳しそうですよ)
「魔法が使えればなぁ……派手に一掃出来たりしたんだろうなぁ」
(アキラさん、マンガの読み過ぎです。教室にテロリストは来ませんし、飛行機でハイジャックにもあったりはしませんよ?)
「す、少しくらいいいだろー」
(ゼロ殿が待っておるぞ。どうするのだ?)
(マスター……)
「俺を人の近くまで送ってくれ。オーク達の中でいい」
(解りました。その後はどうしますか?)
「人から離れた所のオークを頼む」
(承知!!)
ゼロの背中、上空で下の戦いを分析する晶一行。
タケマツが兵士だといい。
晶がオークの数をいう。
カヅキが人の連携を褒める。
そして晶が願望を口に出していたり。
それが何なのか的確に評するカヅキ。
解るという事はカヅキも……いや想像は止めておこう。
晶は人族の助っ人として参戦するらしい。
ゼロに指示を出している。
戦うと聞いて嬉しそうなゼロ。
言葉に気合が入っている。
さすが戦闘民族、いや違うか。
本質は同じだろうけども。
ゼロが地面の近くを飛ぶ。
「うおぉぉっ!!」
そしてゼロの背中から晶が飛び降りた。
ご丁寧に雄叫びを上げながらである。
今できる派手なやり方のつもりなのだろう。
土煙が少し上がっている。
ズシャッという音も。
前傾姿勢で左手は地面に、右手は腰の後ろへ回している。
左足を伸ばしてもいた。
何かのポーズだろうか?
アメフトで見た気もする。何だろう。
みなの視線を集めるという目的ならば、目的は達している。
死線ではない。
いやそうなる可能性は高いが。
オークにとって。
人、オーク、それぞれが晶を見ていた。
「助っ人は必要か!!」
言葉が通じるのはタケマツ、カヅキから聞いていた。
晶が人に向かって大声を張り上げる。
ここで、断られたら面白いのに……すごすご森へ帰るのだろうか?
「いらぬ」「およびでない?」すごすご。
マヌケそうで、ちょっと見てみたい。
気になります。
「頼む!手を貸してくれ!!」
残念。
人側にいた騎乗の者から声が返って来た。
若い男の声だ。
まだまだ元気を失っていない声。
晶が声の主を振り返る事はなかった。
晶は近くにいたオークを蹴り飛ばす。
爆散はしていない。
足が無くなっただけだ。
凄惨な現場になるのは変わりなさそう……。
助ける相手が女騎士ではなくとも戦う晶。
クッコロ……とか呟いていた気がするが何の事だろうか……。




