◆真相の裏側
時弥は腕を押さえて足をふらつかせている姿に目を丸くする。
「杜斗!?」
右腕から流れている血に驚いて駆け寄る。
一体どこから撃たれたんだ!? 周りを見回した。すると……
「まったく。大人しくしてればいいのに」
思ってもみなかった声が聞こえて呆然と少女に目を移す。その手にはハンドガン。
「理絵ちゃん……?」
「予想外だわ。新人だって言うから軽く見てたのに」
状況が掴めずに時弥はただ少女を見つめるしかなかった。
「どういう事……?」
「どうやら親玉はこいつらしい」
痛みに言葉を詰まらせて杜斗は理絵を睨み付ける。
「仲間がいるとは思わなかったわ。言ってくれなかったのね」
可愛い顔がまるで悪女のように歪んでいる。時弥は倒れそうになった。
「どうするんですか?」
茶髪が理絵に問いかけると少女は小さく舌打ちして杜斗と時弥を見やる。
「殺しっていうのはリスクが大きいわ。彼らにも共犯になってもらいましょ」
そう言うとえんじスーツがトランクを開けた。中に入っていたアタッシュケースを取り出して地面に置き開く。
「! 覚醒剤……?」
隠すようにして被せてあるスカーフの下から出てきたのは、ビニール袋に小分けにされている白い粉。それを1つ取り出しアタッシュケースを閉じたあとリムジンのダッシュボードから何かを出して戻ってきた。
「……俺、それだけはやった事ないんだけど」
「俺だってそうだ」
2人は準備されているものにぼそりとつぶやく。
「大丈夫よ。打ってしまえば楽園に行けるわ」
「虚像の楽園だ」
薄笑いで杜斗が言い放つ。
「君たち、こんな事してていいの?」
「!」
時弥は3人の青年に目を向けて問いかけるように発した。
「うるさいわね」
「あんたに言ってない」
「!」
冷たく言った時弥に理絵はムッとする。
「覚醒剤がどれほど人を苦しめるものなのか知ってるのかい?」
「う、うるせぇよ……」
「これは人を内側から破壊するものなんだ。人としての尊厳や権利なんか無視されるんだよ」
「だからなんだってんだよ……」
「時弥……」
杜斗は小さな声で時弥を呼んで目で合図した。
「!」