異世界転移と悪役令嬢① 異世界転移
◆異世界転移
残業ゼロ、パワハラゼロ。親戚の会社という超ホワイト企業で事務職をしていた私は、毎日を平和に過ごしていた。
その日も、いつものように定時で退社し、夕焼けの街を歩いていた。ふと、視界の端に白い光が揺れた。
「……え?」
光は瞬く間に広がり、私を包み込んだ。息を吸う暇もなく、体がふわりと浮く。
そして――。
「やっと来たねぇ。いやぁ、転移って大変だよねぇ」
目の前に、太陽に手足が生えたような妖精が浮かんでいた。
「……え? え? 誰?」
「僕はソル。君の相談役だよ。AIってやつだねぇ」
「え? AI!?」
「見た目は気にしないで。僕も気にしてないから」
のんびりした声。のんびりした喋り方。のんびりした動き。
――いや、AIってもっとキビキビしてるんじゃないの?
「ここは異世界への道中だよ。これから君は異世界転移するんだ」
「異世界!?」
「そう。僕も君に付き添うよ」
「どうしてそんなことに?」
「君が選ばれたのは運だよ。
君は転移する直前、交通事故で亡くなりかけていたんだ」
「えっ……!」
「僕が同行するのは、君の転移に巻き込まれたからだね。
スマホを持っていただろう?」
「元の世界には帰れないの?」
「君はあの世界では死ぬ運命だったんだ。戻っても長くは生きられないよぅ」
「そんな……」
胸がぎゅっと締め付けられた。
戻れば死ぬ?もう戻れない?
「新しい世界で頑張るしかないね。ちなみに僕は、君にしか見えないし、触れられない。
僕から君以外の物質に干渉することもできないよ」
「そう……」
「うん、だからね。君を応援することはできるよぅ」
応援かぁ……。
私は頭を抱えた。しかし、抱えている暇はなかった。
「さあ、新しい世界に到着するよ。まずは仕事を探そう。」
「仕事!? 私、まだ気持ちの整理がついてないんだけど!?」
「でも、働かないと路頭に迷うよ?」
ソルの言葉は妙に現実的だった。




