38話 訓練場の王子様
――城生活2日目。
早朝に起きて、まずは顔を洗いに近くの水を貯めている場所に向かう。
うんうん。やはり、こういうのは自分でやるべきだ。
侍女さんには悪いが、誰かに洗ってもらうとか……と思っていたら、急に現れた侍女さんに捕獲。
そのまま、捕まった宇宙人状態で連れ去られ、問答無用で身綺麗にされる。
解放された後は、お養父様たちと食事。
そして、当然のようにいる外道どS軍師。
……とりあえず、昨日のことを許していないのでそっぽ向く。
「孔明君。何をしたんだい?」
「夫婦の会話をしただけです♪」
「……ちょっと、夫婦のあり方を教えてあげるから、あとで来なさい」
頭を抱えるお養父様。しかも、説教つきだ。
いいぞ、お養父様! もっと言ってやってください!!
「青い……はるぅ……♡」
……お義母様は、もう少し現実を見てください。
私と孔明様に、そういう甘酸っぱいのはないですから。
食事を終え、まずは孔明様にもってこさせた道具を強奪。
昨日、分けてもらっておいた竹で作った水筒を持ちつつ、さっさと工房に向かう。
ふふっ、今日は作業が多いので、作法の訓練は夜にしてもらったのだ。
しかも時間は短縮! 思いっきり物をいじれるぞー♪
そして、顔パスで通してくれる門番さんに挨拶をして、工房に向かっていると……
「……全員、並べ!!!」
という声が響いてくる。
工房に行く途中には、訓練場の横を通る必要がある。
どうやらこの声もそこから。今から訓練が始まるようだ。
……むう。RPG好き魂が騒ぐ。
おそらく兵士のみなさんが、剣やら槍やらを振り回すのだろう。
ちょっと見学していこう。
「……近く、城内で饗宴が開かれる! そこで、武芸者も招いての演武がされることになった!!」
隊長さん的な人の声が響き渡る。
そして、整列している兵士さんの中に、文長さんを見つける。
文長さんも私に気づいたのだろう。
もう、すごいキラキラした目で見てくる。
さすがに手を振ってこないが……ああ、あるはずのない尻尾をぶんぶん振っている様にしかみえない。
あの人、やっぱり大型犬だよなぁ。
それにしても、饗宴か。
たぶん、私を紹介する食事会だろうなぁ。
……誰か中止にしてくれないだろうか。
「そのため、今日は武芸者との立ち合いを訓練とする!」
と、ぞくぞくと隊長さんの後ろから現れる人、おそらく武芸者の皆さん。
おお、すごい!
筋肉ムキムキの人から、なんかやたら美形の人まで多種多様。
まさに、RPGの闘技場みたいだ。
「組み合わせは自由! 訓練ですが、勝利した武芸者の方には恩賞でますので、本気でやっていただきたい!」
ざわめく武芸者さんたち。
まさにRPGでよく見る展開。
でもこういう時って、大体、武芸者さん側がボコられるんだよね。
いやでも、そんなありきたりな展開は……
「軍侯! 一番手は自分が!」
「文長か。いいだろう!」
……ありきたりな展開が決定した。
たぶん、文長さん相当強いぞ。
化け物のイケオジさんに、攻撃入れられる人だし。
「……さあ! 俺を倒せるものはあるか!」
振り回す、あのバカでかい槍。
立ち合い訓練用の槍なのに、ここまで振り回した際の風が飛んできてる。
その凄まじさに、同僚の兵士さんすら引いてる。
やっぱり文長さんは化け物のようだ。
……弓の腕以外は。
(あ、やばい。武芸者さんが焦り始めてる)
なんか、急にせき込んで『体調不良』を訴える人まで。
本当にやる人いるんだな、あれ。
いやでも待てよ?
こういう時の展開って、いわゆる主人公的な人が現れる展開も……!
「……ここにいるぞ」
おお、武芸者集団の後ろから声が!
現れるぞ、熱血的な主人公が!
なんかこう髪が跳ねてて、バンダナとか、指ぬきグローブしてる感じのいわゆる主人公的な人が……
「…………」
……だが、現れたのは、超美形の中性的な人。
身長は、私よりは高いが小柄。
黒のセミロングが、カッコイイとも美しいともいえる。
そのまま、文長さんの前に立つ。
……ヤバイ、もう、美女と野獣みたいになってる。
「まったく、貴殿のような優男が……っ!?」
その瞬間、文長さんのすぐ横に槍が。
……全然見えなかった。
避けた文長さんもすごいけど、あの突きもヤバイ。
この人も『化け物』だ。
「……馬岱。字はまだない」
「上等だ……!」
そこから始まる攻防。
体格差もあるので文長さん有利かと思ったが、完全に互角だった。
力と速さのぶつかり合い。
その戦いは、素人の私が見てもどれだけヤバいか分かる。
(……まさか、こんな光景が見られるとは)
目の前の攻防戦は、ゲームで見たことがある戦闘ムービーシーンの比じゃない。
音だけじゃない、伝わってくる気迫もとんでもない。
『すごすぎる』、これしか出てこなかった。
……だが、周りの被害も尋常じゃない。
ふたりはもう、周りが見えていないのだろう。
周りの物が壊され、なんなら振り回される槍が、兵や他の武芸者さんにも当たりそうになる。
(これも、ある意味リアルならではなのかもな~……)
RPGでの戦いが現実で起きたら、そりゃ周りの被害がデカいだろう。
……ん?
なんかあのふたり、こっちに近づいてないか……?
「やるな、優男!」
「……馬岱だ」
いやもう、完全にこっちが見えてない!
まずい、避難を……!
――ガキィィィイン!
「え……」
……目の前に迫る槍の穂先。
文長さんたちの激突に、訓練用の槍が耐えられなかったのだろう。
穂先が折れ、こちらへ飛んでくる。
刃引きされているとはいえ、槍の穂先は金属。
あんな勢いで、私の頭に当たればどうなるかは明白だった。
(私、ここで……)
迫りくる『死』。
何も考えられず、避けることもできない『死』……。
「……え?」
その瞬間、誰かが私の横を何かが通り抜ける。
それは、目の前に迫っていた『死』……槍の穂先を簡単に弾き、そばまで来ていた文長さんたちの前に。
「なっ!?」
「……!?」
『不意打ちだった』、『槍の穂先が折れていた』、考えれば理由はいくつかある。
だがそれでも、あの化け物ふたりの槍を簡単に弾いた。
そしてふたりの首元に、短く持った槍と、いつ抜いたのかすら分からない剣を突きつけている。
この人がどれだけ強いか、もう想像もつかない。
「……戦いは、周りを見るのも重要ですよ」
私を守ってくれたその姿。
大きく、頼もしい背中。
後ろで結んだ黒く長い髪。
そして……
「あ……」
「……ご無事で何よりです、姫君」
驚いて、腰が抜けた私を優しく支えてくれるその腕。
「……緊急のため、許可なく触れることお許しください」
「あ、あの……えっと……」
「申し遅れました。我が名は趙雲。字は子龍と申します」
――少女漫画に出てきそうな、王子様がそこにいた。
※色んな有名人が出ていますが、フィクションです。
その、一応言い訳をさせていただきますと…この時期、趙雲(一応ぐらいのレベルですが)と馬岱はフリーです。
特に馬岱は、本当に急に出てくる人なので今後も好き勝手いじります…。
今までの内容的にそこまで気にされる方いないかと思いますが、歴史ファンの方、ご容赦いただけると…。




