37話 ……バカぁぁああああ~~!
「……お願いします」
「…………困ったわねぇ」
私の土下座を見ながら、困ったようなため息をつくお義母様。
まあ、無理もないだろう。
休憩時間を超オーバーして戻ってきたら、ちょっと弓を作りたいので、礼儀の練習時間を少しだけ削っていいですか? と言ってきたのだから。
「月英。ひとつ聞くけど、その弓は本当に必要なものなのかい?」
「……国に潤いをもたらすようなものではないです。でも、私はどうしても作りたくて」
そう。これは『どうしても』なのだ。
あの弓は絶対に、文長さんの役に立つから。
「……だったら、言うことはないかな」
「お、お養父様!」
「私は言うことがあるわよ?」
「で、ですよね……」
お義母様は、いくら義理の娘とはいえ時間を割いて私に教えてくれている。
怒って当然なのだ。
「……月英の好きにさせてあげてもらえないでしょうか?」
「え……」
「孔明君?」
孔明様の意外な言葉に、私だけでなくお義母様も驚く。
「月英が、無作法なのは知っております。作法の知識だけでなく、足は平気で開くし、肌が見えていても気にしない、しかも、必要ならばと自分から肌を見せようとする時がある」
「ちょ、ちょっとそれ、初耳なのだけど!? というか、本当なら別の意味で監禁して、四六時中教育しないといけないぐらい大問題なのだけど!」
「そ、そんなに大問題なんですか!? それこそ、私も初耳なんですが!?」
「「「…………」」」
え、なにこの空気!?
いや、おしとやかじゃないし、礼儀正しくないということは、さすがの私にも分かる!
でも、そんな監禁されるぐらい大問題だったの!?
りょ、隆中の人たちは……田舎仲間のみんなはやってたよね?
やってたと言ってくれ、私の記憶の中の隆中のみなさん!
「……まあ、この通りの有様ですが……」
あ、有様……。
私、そんなに終わっていたのか……。
ふふっ、もう人であることを諦めて、ぽんぽこ言いながらタヌキの真似して歩くか……
「……ですが、彼女を『こちら側』の事情に巻き込みたくありません。本来ならば、彼女は気兼ねなくその智を披露するべきなのですから」
「……孔明様」
急であり、意外な言葉が私の心に刺さる。
なんと言えばいいか分からない。
……今の自分の気持ちが分からない。
照れる? 嬉しい? 感謝? そのどれでもあって、どれでもない。
そんな不思議な気持ちだ。
「……はあ、私の負けです。許します」
「お義母様……!」
「ただし、条件付きです! ひとつ! 作業中以外、誰に対してもちゃんと教えた礼儀で接すること!」
「は、はい!」
「……守れなかったら、当日に最終手段を敢行します」
「さ、最終手段? それは……」
「……恐ろしくて言えません。それぐらい、禁断かつ最後の手段ということです」
あ、あんなにいつもニコニコなお義母様が、そんなに恐れるもの!?
いや、想像もつかないんだが……!
「ふたつ!」
「は、はいっ!」
ま、まだあった!
最終手段のあとのものだから、とんでもない内容で……
「この城で起きた、月英ちゃんの青春記録を、私に提出してくださーい♪」
「お断りしまーす♪」
……もしもの時のための最終手段。
ゆるゆるお義母様が言うってことは、大したことないかもしれない。
////////////////////////////
その後、隆中に戻る孔明様を入口まで送る。
だが、孔明様は言葉を発してくれない。
「……あの、孔明様。勝手しちゃって怒ってますか?」
「……弓についてなら、怒っていたらあの時助け船を出さないし、お前の注文も受けたりはしない」
その手には、私が隆中で手に入れて、明日もってきてほしいと頼んだものが書いてある木簡。
「えっと、じゃあ……」
……何を言っていいかわからない。
なにか言わないとと思うんだが……
「もう一度言うが、お前は好きにその知を振るえばいい。だがな……」
「え……!?」
孔明様に抱きしめられる。
もう、なにがなんだか分からない。
されるがままだった。
「……矢を射られた。事故だった、認識違いだった、理由はあるのだろうが、そう聞かされる『夫』の気持ちを考えろ」
「……」
……また、言葉がでなくなる。
なんだか、心臓がドキドキする。
うまく、孔明様を見られない。こんなの、初めてだ……。
「あ、あの、孔明さ……」
「……お前に何かあったら、見てこいと言った私の目覚めが悪いからな♪」
まさに、イタズラ成功とばかりの孔明様の顔。
…………やられた。
謀られた、騙された、からかわれた、もてあそばれた……!!!
「…………バカぁぁああああ~~~!!!!!!!」
私は全力で叫ぶ。
もう、二度とあの陰険どS軍師の言うことに騙されない!!!
そして、全力で走り去る。
「……我ながら、上手くやれないものだ」
私が去った後の、孔明様の呟きを聞くこともなく。
おお、なんかラブコメ展開になってる!
連休中、概ね誤字やら、分かりづらい描写直しました。
たぶん、見やすくなってるはずです…!




