5ー6話 蒼と大地の相克
ガイアの拳が、ブライXマキナのハルバードを弾き飛ばした。衝撃がコクピットを直撃し、俺の体がシートに叩きつけられる。警告音が耳をつんざく。装甲の各所で、青白い光が激しく明滅していた。アストラルフォトンが、限界まで引き出されている証拠だ。
「くッ……!」
俺は歯を食いしばり、ブースターを再点火した。ガイアは一歩も引かない。むしろ、重厚な機体を軽やかに旋回させ、追撃の姿勢を取っている。青白い光が機体全体を包み、まるで大地そのものが意思を持って動いているかのように見えた。
「強い……本物だ」
通信越しに、ガイアの声が響く。この星の言葉で、はっきりと。
「お前の機体も、ただの鉄の塊ではないな。その青白い光……何だ?」
「俺とあいつの想いだ!」
俺はアストラルフォトンをさらに引き上げた。ブライXマキナの背中から、蒼い羽根が展開する。冬子の残滓が、機体を包み込むように輝いた。
「アストラルビット!」
周囲に十を超えるビットが展開する。それぞれが細いビームを放ち、ガイアの装甲を狙い撃つ。火花が散り、青白い光が弾かれる。だが、ガイアは障壁のような何かでそれを受け流し、一気に距離を詰めてきた。
「遅い!」
ガイアの拳が振り下ろされる。俺はハルバードを構え直し、正面から受け止めた。
「アストラルハルバード!」
三つのビットが融合し、蒼く輝く槍へと形を成す。冬子の光そのものだ。槍と拳が激突し、空間が歪む。衝撃波が周囲の小型機を吹き飛ばし、地上の瓦礫を舞い上げた。ガイアが押し返してくる。重圧がブライの関節に伝わり、警告音がさらに激しくなる。
「オゾウクの国を……よくも」
俺は叫んだ。ハルバードを押し込み、一気に距離を詰める。
「くらえ! アストラルナックル!!」
蒼い光を纏った拳が、ガイアの胸部に叩きつけられる。爆音が鳴り響き、ガイアの機体が大きく傾いた。だが、すぐに姿勢を立て直す。青白い光がより強く脈打ち、今度はガイアのほうから反撃が来る。
「面白い! ならば、こちらも全力だ!」
ガイアが加速する。音速を超える速度で、一直線に突っ込んでくる。俺はビットを引き寄せ、防御障壁を展開した。だが、衝撃は防げない。ブライXマキナが後方に弾き飛ばされ、空中で危うくバランスを崩しそうになる。
「鋼! 出力が危険領域だ! これ以上は機体が持たない!」
リヒターの声が通信に割り込む。グリーンも悲鳴に近い声で続ける。
「反応が不安定っす!」
俺は知っている。体が鉛のように重い。視界がちらつき、指先が震え始めている。だが、引けない。オゾウクの国を焼き、市民を殺し、今もなおこの空を支配しようとしている敵だ。
「まだだ……まだ終わってねぇ」
俺はアストラルフォトンを最大まで圧縮した。胸部に蒼い光が収束していく。
「アストラル……ビーム!!」
蒼白い奔流が解き放たれる。空間を焼き、一直線にガイアを貫こうとする。ガイアは機体を横に滑らせ、ビームをギリギリで回避した。だが、完全には逃げ切れない。装甲の一部が焼き切れ、青白い光が漏れている。ガイアもまた、大きく息を吐くような音を立てた。
「……こちらも、限界か」
俺は答えない。ただ、ハルバードを構え直す。ガイアも拳を握りしめる。二人の機体が、再び加速する。空中で、蒼と大地の光が激突する。ハルバードと拳。ビットと障壁。ナックルと重圧。何度もぶつかり合い、火花が散り、爆音が響く。ブライXマキナの装甲に亀裂が走り、ガイアの機体からも黒い煙が上がり始める。
「鋼! これ以上は無理だ! 撤退しろ!」
ショウの号令が飛ぶ。リヒターも叫ぶ。
「相手も同じだ! 円盤側も小型機を回収し始めている! 今なら間に合う!」
モニターに、円盤から放出されていた小型機が次々と引き揚げられている光景が映る。ガイアの周囲の機体も、徐々に距離を取り始めている。ガイアも、動きを止めた。青白い光が、少しずつ弱まっていく。
「……引き際を知っているか。悪くない」
ガイアの声が、静かに響く。
「今日はここまでだ。だが、次はないぞ」
俺はハルバードを下ろした。指先が震えている。アストラルフォトンが、限界を超えて揺らいでいる。
「……あぁ。次は、絶対に終わらせる」
ブライXマキナを反転させ、シェルターの方向へ加速する。ガイアもまた、円盤の方向へゆっくりと機体を向けた。二人の機体が、空中で一度だけ視線を合わせる。蒼い光と、大地のような光。どちらも、全力を出し切った痕跡を残したまま、戦場から離れていく。オゾウクの旧領地の空に、ようやく静寂が戻った。だが、それは一時の休戦に過ぎない。円盤はまだ、空を覆ったままだ。俺はコクピットの中で、深く息を吐いた。
「……ミカン。待ってろ」
次は、必ず。守るべきものを、守り抜くために。




