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その6

「まあ病気ですって? わたしそんなこと全然知らないで……。

 それなら看病しに行かなくっちゃいけないわね。さあイシス、向かいましょう」


そう言うと、わたわたと猫足のデスクの上に散らばっていた小物――手作りの妙なぬいぐるみ(天宮の姫ヤーコのあやかしなんだとか)やきれいな薔薇色のリボンに気に入っている小鳥のブローチなど――を彼女用に生成された魔術式が張り巡らされた藤籠にぽいぽい入れる。すると「これでよし」と彼女なりのお見舞い道具を準備し終えたのか、イシスの返事も聞かずにくるりと背を向け扉へとことこ歩き出した。


ああ、突然部屋に訪れた玲子ちゃんを、執務中の王子さまはなんて思うだろう! きっと盛大に慌てた後、困惑しながらどうして部屋に来たのか聞いて、玲子ちゃんはそんな彼をベッドに無理やり押し込めて、持参した籠の中からたくさんお見舞いの品を出して驚かせるんだろう。簡単に想像がつく未来。そういうのって、ちょっと楽しい。


「もう、イシス! 早くしないと置いて行くんだからね!」


ろりいたドレス、という真っ白で繊細なレースとたくさんの花と小鳥の模様が縫いつけられたバルーンスカートの裾とふわふわの黒髪を揺らし、むくれた顔で彼女は振り向く。私が十年前、生まれ育った村とラーの家を棄てて手に入れたのは、可愛くって、ちょっと天然な、大好きなお姫さまの隣。


「はい、ただいま参ります」


思わず微笑んで応えると、どうしたのかしらと言いたげに不思議そうに目をぱちぱちされたけれど、構うものか。だって今日はいつも以上に愉快な日になりそうなんだもの。


信頼する侍女の仕掛けた小さな策略で二人の仲がうまく進展したか否かは、半刻と経たずに判明することになる。

これですべての話はおしまい!

最後まで読んでくれてありがとうございました。

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