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刃血鬼  作者: Omsick
六章 [四柱]血戦
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VS.シンジュ:4 “棘棍棒”

 シンジュの後頭部から血が噴き出す。


「後は…」


 系糸は即座に連血糸刃を作成するも、シンジュに首を掴まれて地面に叩きつけられた。


「がはッ」


「僕に対して時間稼ぎなんていい度胸じゃん。その腐りきった傲慢な精神性を、どう矯正しようか?」


(息がッ…)


 系糸は右手を紋傷に伸ばそうとするが、腹に無数の「何か」が刺さったような痛みを感じて思わず手を引っ込めてしまった。腹部に目を落とすと、確かに剣山のようなものが刺さっている。


「この鋭い鋭い木の枝の塊で、君の腹を抉る」


 そう言うとシンジュは枝を踏みつけて、躙り始めた。加虐心に歪んだ、醜悪かつな凶悪かつ最悪な顔をしながら。


「あがっ!?ゔあ゙あ゙あ゙あ゙!!あ゙あ゙、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙!!!!」


 いくら痛みに喘ごうが、それが和らぐことはない。むしろその悲鳴を聞き、シンジュは一層足に込める力を強くした。

 腹の皮を引きちぎられ、そこに数匹のピラニアをねじ込まれたような。そのピラニアが、体内の臓器を食い尽くさんとしているような。

 形容しがたい苦痛に耐えながら尚も血刃を抜こうとするが、身体がそれを拒否している。今この異常なダメージに抗おうと、シンジュの足に手を伸ばそうとする。


(違う…時間稼ぎ…僕が…攻撃されていれば…)


 系糸が死ねば血走か迷惑を被る以上、彼は死ぬわけにはいかないのだが、彼の根底にある自己犠牲精神がそうさせない。


(早く…来てくれ…)


 己の腹部で渦巻き肥大化し続ける阿鼻地獄から逃れようと願い続けるが、それは痛みを帳消しに出来るほど強い想いではない。

 針が胃を突き破ったところでシンジュは針を乱暴に引き抜き、血刃を系糸に向けた。


「じゃ、そのまま潰れてもらおうか」


「な…ん…で…」


 何故、何のために。どうせ抵抗らしい抵抗は出来ないのだから、最初から殺しておけば良かったのにと。系糸がそう思った時だった。



「私の弟分に…これ以上手を出すな」



 血走が後方から突っ込んできた。その勢いのままシンジュの頚椎に血刃を突き刺して掻っ切る。


「いいとこだったのにさ…邪魔なんだよ、君」


 得意の蹴りを見舞おうと、足を振り上げたところで三度目の狙撃が入るも、即座に貫かれた足を切断して再生。


「邪魔だ」


 血刃から棘のある木を生やして血走を強打。さながら棘棍棒のような姿をしたその武器は、打撃のみならず刺突によるダメージも生じる。


「うぐッ!?」


 故に出血は著しく、これまでの消耗も相まって、あと二度打たれればもう刃術を使用出来ない。強烈な一撃を食らった血走は、のたうち回る程の痛みを極限の精神力で抑えながら歯を食いしばり、ビルの柵を掴んで戦線離脱を防いだ。


「血走さ――」


「うるさい」


 振り向きざまに、棘棍棒を系糸にもぶつける。今までに受けたことのない、不思議な感覚。身体に穴を開けることで出血させ、さらに打撃による内出血も誘発させる。

 しかし、その程度は些事であると言わんばかりの最悪が、系糸に降りかかる。


 棘棍棒が当たったのは腹部――即ち、散々抉られた末の、臓物が外に出かかっている、痛々しい傷跡だったのだ。


「―――」


 もはや声も出ない。人が感知できる痛みのボーダーなど、とうに通過している。内臓を撒き散らしながら、系糸は倒れ込んだ。

 体全体の感覚が消えてきた。今、自分が横なのか縦なのか、そもそも此処は何処なのか。朦朧とする意識の中で一つだけ確かなのは、「まだ仕事が残っている」ということ。


 何故、刃血鬼になったのか。

 何故、怨野が系糸に近づいたのか。

 何故、酔闇に叩きのめされねばならなかったのか。

 何故、こんな目に遭っているのか。 


 一つ「何故」を考えてしまえば、後は「何故」「何故」と疑問が無限に湧いてくるだけ。そんなもの気にしていられるほど時間に猶予はない。


(…まだ…死ぬわけにはいかない…まだ…まだッ……――――)


 系糸は何度目かも知らぬままに、意識を喪失した。

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