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刃血鬼  作者: Omsick
五章 [死生朱雀]
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仲間割れ?

「何も…出来ない」

 外で鳴り響く戦闘音は耳に入るのに、何もできない。速華は、拳を握りしめた。

「…一つ、聞いていいか?」

 迷眼が口を開く。

「そもそも、鬼神府会議がいつ行われるかは盟団のメンバーしか知らないはずだ。探る事は禁止されてないが、[四柱]と[調査隊]が繋がってるとは思えん」

「思えない、というよりその線はあり得ないな。[調査隊]長の性格を忘れたか?」

 二葵が口を挟んだ。

「脅されでもしたんじゃないの?」

「絶対にない。さては速華、[調査隊]長の事を何一つ分かっていないな?彼女の凄まじい精神力を!」

 二葵が演説かのように手を大きく振り回しながら、高らかに言い放つ。

「うっ…分かったわよ。で、迷眼、話の続きは?」

「ああ。[調査隊]の自浄作用は凄まじい。そもそも嘘を見抜く刃術持ちなんかが登用されている以上、あの盟団にスパイを紛れ込ませることは不可能に近いんだよ」

「迷眼、それはつまり…」

「聞こうか。()()()()()()?」

 迷眼が目を見開きながら言った。

「俺達の中に、あるいはその盟団の中に、確実にいる」

「待て、それなら私と速華は除外するべきだろう?」

 二葵が再び口を挟んだ。

「速華は無所属、私はそもそも身内を茜亡に殺害されている。手を貸すわけが無い」

「知ってるわ、お前は最初から疑っちゃいねえよ」

 それまで何も言わなかった谷崎が唐突に擁護する。

「つーかよ…心做じゃねえのか?犯人はよ」

「…一応、理由を聞いてもいいか?」

 谷崎が、それまで何も関係なかった心做に矛先を向けた。

「てめえは盟団以外の関わりが多すぎる。震奮、迷眼の弟、3ヶ月くらい前に、道端で人間を殺害しまくった野郎、その他大勢だ。[四柱]の雷の詳細が未だ分かってない以上、その人脈の中に奴が含まれてないとも限らねえ」

「私は[調査隊]に、悉く情報を洗われている。それらしき人物がいれば検挙されているし、そもそも私がそれを逃すとでも思っているのか?」

「現にてめえは殺人野郎、怨野を見逃してんだろうが。[四柱]の雷と何か関わりがあって隠してんじゃねえのか?」

「怨野…か。確かに、見逃していると言えば否定はできない。だが、手段こそ糾弾されるべきだが、あれでも根は罪狩りだ。彼の方が自由に動ける以上、[四柱]の雷と通じてるのが分かれば私が殺されるだろうな」

「出来るわけ無いだろ?わざわざ人間を殺さないと自己強化出来ねえ、努力不足のゴミに。てめえは自分が殺されず、安全圏から――」

「…驚いた、谷崎。貴様がここまで愚かだったとは」

 心做は立ち上がり、谷崎に掴みかかった。

「いいか?そもそも彼は実行犯ではない。あれは怨野ではなく、怨野が指示した別の者の独断だ。その上、彼は赤亡の強化に大きく貢献している。何一つ為せない貴様の尺度で物事を決めるな」

 谷崎は歯ぎしりをする。

「紅亡幸辛は、不意打ちとはいえ[鳴亡兵団]のメンバーを1人倒した。区代表でないにも関わらずだ。貴様も、少しは兵団の壊滅に手を貸せば見直されるだろうに」

「はぁ?幸辛?あんな」

「「ギャンブル中毒のガキが?」とでも思っているのだろうが…人を舐めすぎだ。突きつけてやる、貴様は弱い」

 心做は谷崎の思考を読み切り、完全にタイミングを合わせて言った。その行動が、谷崎の怒りを更に逆撫でする。

「さっきからずっと…何なんだよテメェはァァァ!!!」

「鬼神府、制限解除。これより、鬼神府内での暴力行為が解禁される」

 谷崎の蹴りを心做は軽々と弾き、逆に顔面に拳を入れた。

「ポテンシャルはあるのに、何故それを活かそうとしない?」

 体勢を崩した谷崎の足を掴んで回し、壁に向かって投げつける。

「ちょ、やめてよ!何でこの緊急事態に――」

「鬼神府は壊れない。緊急事態も何も、()()は安全なんだ。迷眼も言っただろう?勝利を祈るしか無いと。ここからじゃ戦況も分からない、他に私達に何ができるんだ?」

「余所見してんじゃねーぞ…タコがっ!」

 壁を蹴って、谷崎は跳んだ。

「奇襲は黙ってやれ。そういう物の積み重ねが…」

 心做は飛びかかる谷崎の横に回り、腹部を蹴り上げる。

「貴様が弱い理由だ。脳に赤文字で刻んでおけ」

 谷崎は完全に意識を失くし、その場に倒れ込んだ。

「ノイズは無くなった。さて、この状況を打開する為の議論でも始めようか」

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