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刃血鬼  作者: Omsick
四章 [鳴亡兵団]
33/69

連続爆死事件

 楽しんでいるようにも見えた系糸は、

「はーっ…はーっ」

と、糸が切れたように落ち着いていた。座ったまま、胸を抑えながら呼吸を荒くしている。

(さっきまでの感覚は…?)

 綺麗な切断面の首が、そこに転がっている。顔は苦痛に満ちており、恐らくは目を刺された…というより、引き抜かれた時の痛みだろう。抜けにくい、ということは、それだけ抜く際に傷が生じやすいのだ。彼の血刃に付いている逆針のような構造は、引き抜く際に肉という肉を抉り取っていた。

「僕は間違ってない…毒をもって毒を制すって言うし…」

 系糸は言い聞かせるように呟く。

 殺しを殺しで償わせる行為、一般の感性ならば気は進まないだろう。その大多数に含まれる系糸もまた、例外ではなかったのだ。

「…いつか、慣れるよね」

 小声でそっと漏らし、その場から立ち上がった。

 ―――

「…うげっ!」

 最初に目に飛び込んできた天井で全てを悟り、血走は顔をしかめた。

「恩人に向かって開口一番それかよ」

 殴ろうとする療病を諌め、心做は質問した。

「血走。死因は何なんだ?覚えているだろう」

「え?ああ、爆発ね。ターゲット殺ったんだけどさ、急に頭が爆発したんだよ」

「急に?」

「急に。首切った時にさ、何か血刃が刺さってたんだよ。引き抜いたら何か起こるかなーって思って放置したら…ドーン!って」

 手を大きく広げて、子どものように示す。

「標的の刃術じゃないのか?」

「違うよ。確かターゲットのは自動追尾だったし、そもそも首切った段階で消えなかったんだから」

 一部を除いて基本的に、所有者が死んだ時点で刃術、血刃は消失する。それが無かったということは――

「ターゲットに、「死亡時に爆発する」刃術を仕掛けた奴がいる。連日の爆死事件も――」

「十中八九そうだろうな」

 療病が割って入る。

「何急に。君インドアなんだから知らないでしょ?」

「知っているさ。そもそも犯人は俺なんだから」

 血走は肩の紋傷から素早く血刃を引き抜いて、療病の首元に突きつけた。

「さっきも言ったよな?俺は恩人だぞ」

「いや、お前のことだから、そうやって良心につけ込むようなこと言って誑かしてるんじゃないかと思ってさ」

 ドスの利いた声で言い、睨みつける血走。

「ヒヒっ、冗談に決まってるだろ?心做も動きやしねえしな」

「…呆れた。時と場所を考えろって話」

 血走は乱暴にドアを開けて、外に出ていった。

「お前のせいだぞ、療病」

「別にィ〜?俺は冗談が通じねえ奴が悪いと思うんだけどな〜?」

 ヘラヘラしながら、療病は肩を竦める。

「そもそも爆死事件なんて知ったこっちゃねえ。何のことかもさっぱりだ」

「彼女が言った通りだ。連日県内全域で、罪狩り、罪競い問わず死体がそこら中に転がっている。[調査隊(エキパデアンケタ)]によれば、それら全ての死因がいずれも」

「爆死ってわけだな。だが、そんな懸念するような事象じゃないだろ?」

 療病は尋ねた。そもそも心做に勝てる存在などほぼいない。血走も、不意打ちでなければ大抵の敵には押し勝てる。[赤連(ウニエ・ロシエ)]が警戒することなど無いに等しい。

「私は動くことができない。階級が離れすぎている」

 しかしこの世界のルールでは、悪人にもチャンスがある。罪狩りを撃退すれば成務票が解除されるうえ、一時的に標的に指定されなくなるのだ。

「他の罪狩り達に依頼しちゃ駄目なのか?血走を派遣するなりできるだろ?」

「本拠地がわからない。[調査隊]が現在探っているようだが」

 時刻は午前2時過ぎ。襲撃者は、宵闇に紛れて療病のアパートに接近していた。

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