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刃血鬼  作者: Omsick
三章 罪狩り
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VS.定目

「て…定目(ていもく)?…違う、定目(さだめ)かな?」

 赤亡の任務受注後、自らも受注した血走は、刃術の加速を利用し飛行していた。

「…気配?」

 名字が読めず苦心していた状態から一転、輪の射出方向を変更し急降下。標的の死角と予想される場所へ逃げ込んだ。

「どっかで刃術が発動されたね。近くだし、多分標的だと思うんだけど…もしかして、バレた?」

 熟練した武術家が殺気を感知できるように、刃血鬼も同じく刃術の発動を感知することができる。血走もまた例外ではなく、おおよその方向を特定することができた。

「成務票が示した場所は何故か上方、この辺はビル群…ちょっと待って?都心付近に誘い込まれた?」

 酔闇との戦闘以降数時間が経過し、時刻は深夜3時。にも関わらず、未だ一定数の人が行き交っていた。

「…お腹減ったし、吸血でもしよう。強制サーチの刃術でもない限りは安心だし」

 刃血鬼の吸血方法はシンプル。相手の血を血刃に貯め、紋傷に刺すことで成立する。相手に傷は残らないが、しばらくの間かなりの痛みが生じてしまう。

「でも飲みたくはないな、クスリとかが配合された汚い血は」

 当然だが血は健康体のほうが味はいい。薄味なら痩せ型を、濃い味なら肥満型と一応バリエーションもあるため、人間だった時の意識を全て振り払うという条件下ならば、むしろ良質な食事である。

「ごめんねー。んじゃ、いただきまーす」

 丁度良さそうな少年を見つけた血走は、目を輝かせながら、血刃を突き刺した。

 ―――

「あ"ー、吐きそう。なにあれ、依存性あるの?」

 悪態をつきながら、吸血した相手を蹴り飛ばす血走。

 すこぶる不味いのに、気づいたら数回は吸血していた。腹八分目どころではなく、既に満腹なのだ。

「なんであんなもん沢山摂っちゃったんだろ。任務終わったら、死体撃ちみたいにゲロぶち撒けてやろうかな…ま、十割血なんだけどね」

 一人で冗談を呟きながら、急上昇した。体は重く、気分も悪い。コンディションは最悪と言ってよかった。

「標的はあれかな…気持ち悪いままで戦うのは御免だけど、そろそろ夜が明けちゃうし急がないと」

 血走は一気に加速し、「おらー!」と標的めがけて突撃した。

 単純で幼稚な攻撃方法だが、場数を踏んでいる彼女は当然、何の策も無しにこの行いに出た訳では無い。

 そもそも彼女の刃術は加速であり、連続で輪をくぐり続けると、相手の実力次第では視認ができない程のスピードとなる。

 並の刃血鬼ならば一撃必殺。耐える、或いは躱したのならば手練れ。相手の力量を測る一種のボーダーラインと、彼女は決めてた。

「失礼するよ!」

 ビル屋上で佇む男の横腹に、超高速の突進が命中する。

「だr――」

 ドスッ、と、もはや鈍器でしか鳴らないような音が響き、男は大きく吹き飛んだ。

 ガン、と柵に当たったところで、男は意識が少し遠のいた。

「なんか言おうとしてなかった?」

 近寄る血走。男は呼吸が荒くなっており、その瞳は恐怖に震えていた。

「ま、いっか。君の名前、能力。自白してくんない?あれ読めないんだ」

「……」

 応答もできない状態にある男だが、彼女は容赦なく問い詰める。

「君も知ってるよね。「罪狩りと戦闘した場合、勝敗に関わらず、自己への成務票はリセットされる」。君は前回の交戦の後、更に人間10人を殺してる。そこで止めてればこうはならなかったのにね」

「――ッ…!」

 歯ぎしりをする男。

「ちょっとモヤモヤするし、ちょっと名前だけ教えてよ」

「言ったら…助けるのか…?」

「いいから」

 男の言い分は無視し、少し低めの声で主張する血走。

「さ…定目(さだめ)狙射ねらい

「おっけ。んじゃ、バイバイ」

 有無を言わせず彼女は、定目の首を鮮やかに切断した。

「あースッキリした…いや、してない」

 背伸びし、帰ろうとした血走は振り返る。

「頭、なんか刺さってない?」

 定目の頸動脈付近。彼女の物ではない血刃が、突き刺さっていた。

「一瞬チラッと見えてたけど、形状が違うよね。ま、いっか。引き抜いたら何が起こるか分かったもんじゃないし」

 彼女がそれを投げ捨てたときだった。

「…へ?」

 直後、背後より閃光が迸る。

(なるほどね…ファイナルアタック的な」)

 定目の死をトリガーとし、爆発。彼の盟団が仕掛けたか、或いは第三者か。

(この距離じゃ逃げられない。死にはしないだろうし、釣られてやろうかな)

 血走は、ビルが半壊する程の爆発に身を委ね、空へと投げ出された。

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