10.帰れる場所
【前回までのあらすじ】
一ヶ月で酒場の屋根裏部屋から追放されたセツナたち。
どうやら仕事が繁盛しすぎて酒場の営業ができなくなってしまったらしい。
ただ、今日まで真面目に働いてきたセツナには居場所が用意されていた。
「時間」スキルもレベルアップして、新たな生活が始まる。
新しい我が家はリビングダイニングの一部屋にキッチンとベッドルームという感じだ。
広い庭付きで、以前の借主が菜園をしていた跡がある。
納屋には農具一式が揃っていた。
家賃も郊外だから格安だ。
家具や家財も残っていたので、食器やらなんやらもそのまま使わせてもらった。
相変わらず、ベッドは一つだけだけど。酒場の屋根裏の時よりちょっぴり大きめ。
今夜から、二人で手足を伸ばして眠れそうだな。
お昼時――
「ごはんはメイが作りますね!」
「何か手伝おうか?」
「先生はこの城の主なのですから、ソファーでドーンとどっしり構えていなさい。家事は全部メイがやります。これはお願いではなく命令です」
命令――ッ!?
「本当に大丈夫かな」
「何か問題でも? メイはミランダに花嫁修業の稽古をこの一ヶ月、つけられっぱなしでしたが?」
僕の知らないところでメイも色々と特訓していたようだ。
花嫁っていうのは、いつもの語彙力の暴走だろうけど。
裸エプロンならぬ白水着エプロン姿で、こっちに背中を受けてトントントンと食材を切る。
リズミカルにお尻をフリフリ。
触手ツインテールも駆使して、彼女は料理を作った。
魚介の漁師風スープとカットフルーツに、パン屋で買ったバケットだ。
味は……美味しかった。
パンと果物は切っただけなんだけど、スープの味付けがミランダの作る料理と遜色ない。
「美味しいよメイ!」
「天才ですからぁ~。あはぁ~先生にお褒められてメイの幸福も有頂天なのです」
後片付けは僕がすることにした。
メイは「自分がやるます!」と言ったけど、これくらいはさせて欲しい。
空になった皿の「時間」を食事前まで戻した。
使う前の綺麗な状態になる。
「やっぱり先生の時間ぐるぐるは半端ねぇですね!」
「こういう使い方はもったいないかな?」
「使うほどすごーくなるなら、いっぱい練習あるのみなのですよ」
「そうだね。だから片付けは僕に任せて」
「あうぅ! してやられたッ!? いっぱいくわされました!」
彼女を休ませる口実にも「時間」スキルは使えるみたいだ。
食後にリビングダイニングのテーブルで、二人でお茶を飲みながら一息つく。
今日はゆっくりして、明日から修理屋の仕事を再開することにした。
メイも空いた時間はミランダの酒場をお手伝いだ。
人間らしい暮らしがしたい。
願いはあっさりと叶った。
けど、メイの願いはまだだ。
「ねえメイ。これからなにか、したい事はあるかな?」
「あ! えーとえっと、メイは山ほどありますよ! お庭で畑もできますし、もっとたくさんのお料理を作ります」
ちょっと怖いけど、訊かないわけにはいかないな。
「神様探しは?」
少女は満月みたいに目をまん丸くする。
「忘れとったあああああああああああああああああああああああああああ!!」
忘れてたんかい――ッ!?
メイはスッと真顔になった。
「けどメイは今のままでもよかよーなのです」
「人間になりたいんだよね?」
「先生との暮らしは、まるで人間ではありませんか?」
胸のつかえがスッと消えた。
「じゃあ、しばらくこの町にご厄介になろう」
「はい! そうですね先生!」
ずっと暮らしていけるなら、悪くないと思う。
それに旅に出るにしても、お金は稼いでおいた方がいい。
今はこの町でやれることをしよう。
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