441 燃え盛れコブダリオン!
<<<おおおおおおああああああーーーーーーッ!!!>>>
コブダリオンは、全力で泳いだ!
すり鉢状の大穴の斜面を、滑るように、その身にまとう炎の鎧で地面を焦がしながら、まっすぐに泳いだ!
先ほどのような青い炎は、もはや魔力が足りず出すことはできないが......それでも。
その火力、熱は......凄まじい。
ごうごう、ごうごうと音を立てながら燃え盛る炎の鎧は、まさしく彼の決死の覚悟が生み出した最後の力だ。
コブダリオンは......魂を燃やしながら、一つの火の玉となり、一心不乱に泳ぎ続けた!
ビュビュンッ!!
ビュビュビュビュンッ!!
ぎょろりと動く無数の瞳でそれを視認したヒュミダファイは、もちろん迎撃を開始する。
ヒュミダファイの体表上に到達し、そこを泳ぎ始めたコブダリオンに向かって、この超巨大サザエは数えきれないほどの矢舌を射出し始めた。
<<<ああああああーーーーーーッ!!!>>>
しかしヒュミダファイの矢舌は、コブダリオンの魂の炎を、貫き破ることができない!
ジュジュッ!!
ジュジュジュジュッ!!
どの矢舌も、コブダリオンの炎の鎧に近づいた途端に黒焦げになり、朽ち果てていくのだ!
これは、コブダリオン自身もあずかり知らぬことではあるが......決死の覚悟で生み出した今の彼の炎は、ただ熱いだけでは、ない。
外敵から身を守る守護の力を備えた、魔法の炎なのだ!
代償として魂を削り生み出しているだけはあり、その防御力は折り紙付きである!
<<<あああッ......!!>>>
そしてコブダリオンは、ついに第一目標へとたどり着いた。
それは、ヒュミダファイの封印の要......今もなおヒュミダファイが嫌がって近づかない、白く光り輝くヒトデである。
コブダリオンは一旦跳ねあがるように宙を舞ったかと思うと、頭からまっすぐに落下!
<<<はぐッ!!>>>
そして地面に落ちていた封印ヒトデを口でくわえ、拾いあげると......今度はヒュミダファイの核たる部位が秘められた、岩山の如き殻に向かって、突撃を開始した!
「「「ブシュウウウウーーーッ!!!」」」
その行動に対してヒュミダファイは、過敏と思われる程に反応した。
怒りの叫びか、恐怖の嘆きかわからないが......封印中は霧を吐き出し続けていた殻のトゲの先から鋭く空気を噴き出して、そんな音を立ててから......ヒュミダファイはブルリと体を震わせた。
そして、生み出した。
幾重にも連なる、貝肉津波を。
コブダリオンを止めるための、数えきれないほどの高く分厚い壁を!
ああ、なんということだろう!
いかに今のコブダリオンの守護の炎と言えど、あれほどの質量を持った貝肉を燃やし尽くすことなど、到底できはしない!
このままコブダリオンはヒュミダファイにのみこまれ......他のコブダイ戦士たちと同じ末路を、たどってしまうのか!?
......否、である。
何故ならば、今、この大穴の底には、まだ、あと一人。
エミー・ルーンがいるからだ!!
「らあああああーーーーーーッ!!!」
びゅん、と風切り音を立てながら、エミーは【黒触手】を使って自身の体を放り投げ、ちょうどコブダリオンと貝肉津波群の中間地点に降りたった。
彼女はコブダリオンの突撃、そしてそれに対するヒュミダファイの反応を見て、確信したのだ。
今や彼のコブダイこそが、この災厄に対する、唯一の対抗手段であるのだと!
故に!
「らッ!!」
エミーは一声吠えて気合を入れると、強い弾力を持つヒュミダファイの体表上で......思いきり、垂直に跳ねとんだ。
「ああああああ......!」
そして空中を舞いながら、肩から伸ばした【黒触手】を編みあげて、一つの巨大な何かを作りあげていく。
それは、どす黒く巨大な剣。
【黒大剣】だ!!
「ああああああ......!!」
そして、それだけでは、ない!
エミーは作り出した【黒大剣】に魔力をまとわせていく。
【大蟷螂】だ!!
そして、魔力の刃を伸ばし、もともと巨大な【黒大剣】の刀身を、見た目以上に延長していく!!
「ああ、ああ、あッ......らあああああーーーーーーッ!!!」
そして、エミーは!
その小さな体に秘めた、規格外の膂力でもって!
その大きな剣を、ヒュミダファイに向けて......思いきり、振りおろした!!
ドッ......オオオオオオオーーーンッ!!!
エミーの【黒大剣】がヒュミダファイの肉と、その先にある地面に叩きつけられ、凄まじい轟音が鳴り響く!
そして!
ズッ......パアアアアアアーーーンッ!!!
【黒大剣】の振りおろされた軌道の延長上にあった、幾重にも重なるヒュミダファイの貝肉津波が!
一直線に、斬り裂かれた!
エミーの【大蟷螂】はそのまままっすぐ、ヒュミダファイの殻にも届いた。
残念ながら、その殻には傷一つ作ることはできなかったようだが。
しかし。
今、この場において、肝要なことは。
貝肉津波が斬り裂かれ。
そこに......コブダリオンが泳ぎ進むための......道ができたということだ!!
<<<恩に......着るッ!!>>>
コブダリオンは、地面に片膝をつきながら肩で息をして、そこら一帯に響きわたる程腹の虫を鳴かせているエミーに一言、礼を言ってから。
まっすぐ。
まっすぐ、まっすぐに。
ヒュミダファイに向かって泳ぎ始めた!
もはや、ヒュミダファイには抵抗の手立てがない。
ジュワジュワと音を立てながら、切断面を必死に再生させているようだが、遅い。
ヒトデをくわえたコブダリオンは、さらにその魂を燃やし!
ぎゅん、と、凄まじい速度で、エミーの作り出した道を泳ぎきり!
<<<おおおおおおッ!!らあああああッ!!!>>>
ついには、ヒュミダファイの殻に対して!
これまで、ずっとずっと、そうであったように!
もとあった、箇所に!
口にくわえた封印ヒトデを......ぐっと、押しつけた!!
すると、次の瞬間!
もともと白く輝いていた封印ヒトデが、さらに強く光を放ち!
周囲の風景を、白一色に変えた!
そして......!!




