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実質亀ックス

 そして時間は流れて放課後。僕は図書委員として仕事があったため、なんとか僕を問答無用に連れ去ろうとするエリスから逃げ切って図書室で後輩と仕事をしていた。


「……ふーん、だからいつもは先に帰るあの人が残ってるわけですね。モテモテじゃないですか先輩」


 ……いや、仕事をしているというよりはただ駄弁っているだけという表現が正しいかもしれない。図書委員の仕事なんて大した量はないから喋りながらでも出来るのだ。


 今は昼休みにあった話をしていたところだった。


「違うんだって、エリスはこの後一緒に遊ぶから待ってくれてるだけで……」

「ふーん? 先輩は先週も先々週も一緒に遊ぶって言ってましたけど? なんで今日だけそんな風に待ってるんですかね」

「なんかエリスの気合がすごくて……」

「一体何ックスに向けての気合なんですかね……?」

「下世話な勘ぐりはやめようか! 僕は何もする気はないよ!? ただ一晩中ゲームとかしてダラダラ過ごすだけ!」


 図書室の貸し出し本の管理カードを整理しながら、ド直球な下ネタを振ってくる後輩の女の子……「高風 翼(たかかぜつばさ)」に応対する。


「ゲームをするだけ……ですか」


 高風も管理カードの仕分けをしながら会話をしているわけだが、今の発言に気になるところがあったのか、僕の方をじっと見て、こちらを指差しながら喋りだす。


「前から言おうと思っていたんですよ! 思春期の男と女がしょっちゅう二人きりでいて何も起きないのが日常なのはむしろ異常だって!」


 そして、急に声を荒げて騒ぎ出したかと思うと何かおかしなことを口走り始めた!


「だってそうでしょう!? 二人とも友達がまともにできたことはなくて、趣味はゲームとライトノベル! そんな空想上のキモオタ男女二人が出会ってしまったら普通は夢見るでしょう、ラブコメ!」

「いや別に僕はエリスが友達だったらそれで十分だし……」


 高風の演説の途中で口を挟むが、その言葉にさらに呆れたように肩をすくめられる。


「なーにが『友達だったら十分』ですか。いい子ちゃんみたいな発言しやがって」

「しやがって!?」


 いつもは丁寧な受け答えをしてくれる後輩から放たれる突然の暴力的な言葉に思わず驚愕してしまう。


 高風が何に激高しているのかはよく分からないが、このまま騒いでいればもし先生が見回りなんかに来たとき面倒なことになりそうだった。

 だから僕は静止の声を上げて高風を止めようとする。


「高風、落ち着いて。司書さんきたら騒ぐなって怒られちゃうよ?」

「なんでこの先輩こんなすました顔してるんですかね! この際はっきり言いますけど、あなたたち二人は臆病すぎるんですよ! 出会う、話す、ヤる、これくらいあっさりした関係を相手に求めましょうよ!」

「直球過ぎる! もっと遠回りな表現を目指そうよ!」

「うるさいうるさい私の気も知らないで!」

「そんなこと言われても知らないよ! というか高風の気持ちと僕らの関係はないじゃん!」

「ええいこの鈍感男! 仕事は私が引き受けるからとっとと彼女の家に向かいやがれ! 月曜の仕事の時に童貞卒業報告も忘れないで下さいよ!」

「わ、何だ、押さないでよ! え、ほんとに帰れって!? その手の動きはバイバイのつもり!? エイトビートを刻んでるけど!?」


 そうやって僕はいつも司書さんが使っている図書室備え付けの部屋、司書室を追い出された。


「え、ええ……」


 なぜ高風があんなに興奮していたかという事実も分からぬままに司書室を追い出されてしまった僕は茫然として……。

 そして、捕まった。


「さあ、行きましょうか」


 肉食獣の目をしたエリスがそこにいた。


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