1話 後
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昨日は言い過ぎてしまった。
彼だって、きっと何か事情があって彼女と関わったのだろう。
それを、理由も聞かずに一方的に話してしまった。
我ながら大人気ないな。
「あんたが落ち込んでるなんて、何年ぶり? 」
私がしゅんとしているとマリアが話しかけてきた。
「あぁ、昨日、ワンコくんと喧嘩しちゃってね・・・・」
「・・・・あんた、喧嘩とかするのね」
「まぁ、ね」
思い出すだけでも悲しくなる。
「彼の気持ちを考えずに、自分の気持ちを押し付けてしまった」
「ふ~ん? なんかカップルみたいな喧嘩理由ね」
「そうかな? えへへ」
そうか、私達はカップルみたいか。
「なんでちょっと嬉しそうなのよ」
「いや、気にしないで? そう言えば、マリアも源太先輩と喧嘩する事はあるのか? 」
「そりゃするわよ」
「そうなの? 」
「えぇ、ほら、私って、少しワガママでしょ? 」
あ、自覚あるんだ
「それで、私ね? ついつい彼に甘えちゃうの。それで、たまに度が過ぎる事を言っちゃって。そうゆう時は彼もさすがに怒るのよ」
「うわぁ、源太先輩って怒ると怖そう」
「うん、怖いよ。でも、私も意地っ張りだから謝れなくって」
「そうゆう時ってどうするの? 」
「彼から先に謝るの。『すまない。お前の為を思って言ったつもりだったんだが、つい気持ちが入り過ぎてしまった』って。そしたらね? 『私の方が悪いのに、本当は、私が先に謝るべきなのにな・・・・』ってなってね? お互いに謝るの。それでその喧嘩は終わり」
「マリアが悪いね」
「そうなの。源太くんにはいつも迷惑かけちゃって・・・・いつか愛想尽かされちゃうんじゃないかって」
不安そうに笑顔を浮かべるマリアだが、そんな事は無いだろう。
源太先輩は一途な人だ。
それを私達は知っている。
だからこそ、マリアも源太先輩に惹かれたんだろう。
「桃花もさ、ちゃんと、アイツに謝りなよ? 私みたいに意地張っても、後悔するだけだろうし」
「うん、そうだね」
そうだ。
ちゃんと謝ろう。
彼に会いたい。
彼に会って、ちゃんと謝りたい。
早く休み時間にならないかな
☆☆☆
『2人の関係って、はっきり言って『異常』だよね・・・・』
僕は今朝風香に言われた言葉が気になっていた。
いつもなら、きっと軽口を叩いて逃げてたんだろう。
でも、昨日の事もあってか上手く口が回らなかった。
「斉藤くん」
休み時間になり、席を立とうとすると誰かに呼び止められた。
「少し、お時間よろしいですか? 」
顔を上げると、そこには姫川 雪菜が立っていた。
『おい、今姫川さんがはなしかけてなかったか? 』
『私達が話し掛けてもいつも無視するのに・・・・』
『なんであいつばっかり・・・・』
『羨ましい・・・・』
クラスメイトがヒソヒソと話している。
不味いな、今朝の事で大分目を付けられてるのに。
「ひ、姫川さん。授業始まるよ? また今度でもいいかな?? 」
「具体的には? 」
「昼休み、とか? 」
「お昼休みですか。その時間は少し予定があるので・・・・」
「じゃあ、放課後、とか? 」
「はい。わかりました」
そう言って、姫川さんはニコッと笑い自分の席に去っていった。
「わ、笑った・・・・」
この後、僕はクラスメイト達から姫川さんとの関係について根掘り葉掘り聞かれた。
特に風香ちゃんからは、
「ひなたくん、会長さんの次は姫川さんに手を出すの? 」
「どっちも手は出してねぇよ!? 」
「唇は? 」
「奪われた」
「変態!! 」
などと罵られてしまった。
この様子だと朝の質問はただの好奇心からなのかな?
☆☆☆
「あれ? 」
休み時間、ワンコくんの教室に行くと彼の周りに人集りが出来ていた。
「う~ん・・・・」
話しかけに行きたいけど、この状況じゃあ無理そうだな・・・・
「あら? ももちゃん?? 」
「あ、しーちゃん」
諦めて自分の教室に戻ろうとすると、詩織に出会った。
「しーちゃん、どこ行くの? 」
「少し体調が悪くて・・・・」
「え、大丈夫なの? 」
「うん、少しだけ、頭痛がするだけ。そんな大した事は無いわ」
「う~ん、心配だな」
「大丈夫。それで、ももちゃんはどこに行くの? 陽くん?? 」
「うん、用があったんだけど、今はやめとく」
「そう・・・・」
詩織を保健室に送り、私は教室に戻った。
う~ん、次は体育だからな~。
お昼休みにもう一度出向いてみよ。
☆☆☆
「斉藤、いるか? 」
昼休み、僕の教室に突然源太先輩がやって来た。
強面でガタイのいい先輩が来て、クラスメイトはみんなビビっていた。
「どうしたんですか? 」
「あぁ、すまない。ここだとみんなを怯えさせてしまうみたいだから、屋上まで来てくれるか? 」
「?? 」
「話がある」
なんだろう。話って。
昨日の事かな?
そんな事を考えていると、屋上まで着いた。
「斉藤」
「はい。なんですか? 告白ですか?? 」
「いや、俺は彼女がいるから・・・・」
あれ? 彼女がいなければOKなの??
満更でもないのかしら??
「会長と、喧嘩したらしいな」
あぁ、やっぱり。
「してませんよ。ただ、少し気不味くなっただけです」
「そうなのか? 」
「はい。帰ったらちゃんと謝りますよ」
その言葉を聞き、源太先輩はホッと安堵した顔になった。
「良かった。心配だったんだ。お前達は仲は良いが少し気を使いあってる様に見えててな」
「『気を使いあってる』ですか? 」
「あぁ、なんだか互いに近付き過ぎず遠ざかり過ぎずって感じだからな。やってる事も『カップルの真似事』だからな。それに、2人とも互いに別の男女と仲良くしてても嫉妬すらしない。それに、会長は何か隠し事をしている。それなのにお前はわざとそこから目を背けている。なんて言うかな。友達の振りをした他人みたいなんだ。だから、実はあまり仲が良くないんじゃないかと思っていた」
「あはは、なんですかそれ」
そうなのかな?
もしかしたら、周りのみんなもそんな風に思っていたのかな?
「がんばれよ」
源太先輩が呟く。
「『謝る』ってのは、決して簡単じゃない。だからって、謝らずに互いに目を背け合うのは、辛いんだ。」
「マリアさんとの事ですか? 」
僕の質問に、源太先輩の顔が真っ赤になる。
「あ、あぁ、まぁ、なんだ? ちゃんと謝るんだぞ!? 」
「わかってますよ。心配してくれてありがとうございます」
「おう」
「後今の顔マリアさんに送ったら秒で返信が来ましたよ」
「なんて事をするんだ!? 」
「『ありがとうございます! 保存して焼き増しします!! 』だそうです。マリアさん、普段からこんな素直なら良いのに」
「・・・・はぁ、そこがあいつのいい所でもあるんだ」
「お、惚気ですか? 」
「違う」
☆☆☆
どうしよう。
今日は全く彼に会えてないな。
早く謝りたいのに。
早く伝えたいのに。
このままじゃ
このままじゃ『あの娘』が・・・・
「会長さん」
呼び止められ、振り向くと風香ちゃんがいた。
「どうしたの? 」
「早く、してくださいね? 」
「・・・・うん」
「貴女だけが頼りなんです」
「わかってる」
「お願いします」
「大丈夫」
風香ちゃんの目には、徐々に涙が溜まっていく。
そんな彼女を、わたしはギュッと抱き寄せる。
「『お兄ちゃん』を、助けて・・・・」
大丈夫。
わたしは、彼を助けるよ。
例え、『彼を裏切る事になっても』。
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