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物語異能の負け犬男子  作者: 柴犬男
恋する乙女の創作世界
33/38

1話 中

投稿しました。

「じゃあ『タマ』で確定したんだ? 」


リビングでテレビを見ながら僕達は雑談に興じていた。


「一周回って無難な名前だね」

「あいつも結構喜んでると思いますよ」

「そうかな~? 」


タマはテレビの画面を見ながら不思議そうな顔をしている。


「タマ~? 」

「? なんだ?? 」

「呼んだだけ」

「そうか」

「タマ~」

「? なんだ?? 」

「呼んだだけ~」

「・・・・そうか」

「タマ~」

「なんだよ!! 」


かいちょーがタマを呼んで反応を確かめて遊んでいる。

可哀想に、お前最初は悪い奴みたいな雰囲気を醸し出してたのに。今じゃただの飼い主に遊ばれる猫だ。


「ひ、陽? なんでそんなに温かい目で見つめてくるんだ?? 」

「お前も大変だなって思って」

「そうなんだよ! 」

「いきなりデカイ声出すなよ」

「ごめんなさい」


なんだろう? すごくからかいたくなるな、この子。


「好きな娘っていじめたくなるよね~」


かいちょーがニヤニヤしながら話しかけてきた。


「陽、私の事が好きだったのか!? 」

「はぁ? 」

「だから桃花とは付き合わないのか!? そういう事だったのか!? 」

「ちょっと待って、何言ってんだ」

「や、やめておけ! 陽!! 私は人型だけど猫だぞ!? このままだと獣〇になっちゃう!! 」

「よぉし、歯ぁ食いしばれ」


どうすんだよ、この空気。

さっきまでニヤニヤしてたかいちょーがものっすごい暗い顔になって俯いちゃったよ?

謝りなさい??


「ワンコくん、好きでもない女と同棲してるの? 」

「いや、勝手に居座ってるのはかいちょーじゃないですか」

「うん、まぁ、そうなんですけど、え、全然意識しない? 」

「う~ん、意識しないって言うか、意識出来ないって言うか・・・・かいちょーの事は好きなんですよ? でも、なんでだろう? かいちょーとは付き合わない気がするんです」

「そっか・・・・」


うわぁ、なんか申し訳ない気持ちになるよ。

何も悪い事してないんだけどなぁ・・・・。


「(やっぱり、あの時の事が・・・・)」

「え? なんて?? 」

「なんでもないよ」


かいちょーはそっぽを向いて口を尖らせてしまった。

さすがのタマも良くない空気を察したのかオロオロとしている。


「あ、えっと、ひ、陽、今日は桃花と帰って来なかったんだな!」


話を逸らそうと気を使うタマ。


「うん、まぁ、色々あってね」

「あの女は誰だ? 」

「女・・・・? 」


お、食いついてきた。


「ワンコくん、女の子と帰って来たの? 」

「はい、そうですね」

「誰? 」


気のせいか、かいちょーの顔に焦りが見える。

普段の飄々とした態度からは想像出来ないくてなんか怖いな。


「雪菜ちゃんです」

「!? う、嘘でしょう・・・・!? いくらなんでも早すぎる。こんなのって・・・・」


なんだ、この反応は。

なんでこんなに焦ってるんだろう?

ヤキモチかな??


「ワンコくん、明日からは絶対にあの娘と帰るな。そして出来るだけ関わるな」


む、なんでこんな事言われなきゃならないんだろう??


「なんでです? 」


少しだけイラッとしてしまい、強めの口調で聞き返してしまう。


「なんでもだ」

「理由を言ってください」

「今は言えない」

「じゃあ約束は出来ません」

「ダメだ、約束してくれ」

「無理です」

「同じ生徒会役員ですよ? 」

「それでもだ」

「クラスメイトです」

「それでも」

「友達です」

「ダメなんだ」


見ると、会長の目には涙が溜まっていた。


「信じてくれ、『陽くん』」


初めて『陽くん』と呼ばれた。


理由はわからない。


でも、彼女の気持ちは本気なのだと感じた。


「お願い・・・・」


じっと見つめてくる会長から目を逸らしてしまう。


「無理ですよ・・・・」


僕はその場から逃げ出した。


「ひ、陽!? 」

「ごめん、タマ。」

「桃花!? なんで!! 」

「追わないで、あげて」


☆☆☆


翌朝、なんとなく僕達の間には気不味い空気が流れていた。


「じゃあ、わたし、先に行くから」

「・・・・いってらっしゃい」


その日、高校生になってから初めて、僕は1人で家を出る事になった。


「じゃあ、タマ。留守番よろしくね? 」

「うん、まかせて・・・・」


静かな朝だ。


今日は風香ちゃんも日直なので朝早くに出かけて行った。


一人の時間が、こんなに寂しいとは思わなかった。


「・・・・ダメだな」


ダメだな。


なんで、僕はこんななんだろう。


会長はいい加減な人だ。


でも、絶対に意味の無い事はしない。


あの人には何度も救われている。


それなのに


それなのに・・・・


「きゃっ!? 」

「うわっ!? 」


曲がり角にさし当たった時、誰かとぶつかってしまった。


「すいません、大丈夫です、か・・・・? 」


そこには、姫川 雪菜が倒れ込んでいた。


「ん、斉藤、くん? 」

「あ、あぁ、おはよう」


早速出会ってしまった。


「何かあったの? 」

「え? 」

「斉藤くん、なんだか辛そうだよ」


雪菜ちゃんに話しかけられた。

彼女は、あまり人と話しかける様なタイプでは無い。

そんな彼女が話しかけてくる程、僕は悩んでいたのか。


「うん、大丈夫。なんでもないよ」


話せる訳が無い。

だって、会長に「姫川 雪菜と関わるな」って言われたんだよ?

こんなの本人に言える訳ない。


「そっか」

「うん」


微妙な空気が流れる。

また気を使わせてしまったな。


申し訳なさを感じながら、僕は雪菜ちゃんと一緒に登校した。



☆☆☆



「ひなたくん」


教室に着くと、僕の周りに何人ものクラスメイトが集まってきた。

雪菜ちゃんは教室に入るとスタスタと自分の席まで歩いていった。


「どうしたの? 風香ちゃん」


代表して話しかけてきた風香ちゃんに聞き返す。


「ひなたくん、姫川さんと付き合ってるの? 」


んん? どこから来た噂だ? これは


「ひなたくん、会長さんと付き合ってるんじゃないの? 」

「いや、どっちも付き合ってないけど」


うん、嘘は吐いてない。


「ほんとに? 」

「うん」


僕の言葉に顔を見合わせるクラスメイト達。


「でもさ、一緒に住んでるんだよね? 」

「うん」

「キスもしたんだよね? 」

「うん」

「ほぼ毎日一緒に登下校してるよね? 」

「うん」

「付き合ってないの? 」

「付き合ってないよ? 」


あらためて確認されると不思議だな


ここまでの事をしてるのに、なんで僕は会長と付き合ってないんだろう??


「なんで急に? 」

「う~ん・・・・あのね? 私達、今までひなたくんと会長さんの関係に疑問を抱かなかったんだ」

「うん? 」

「あのさ」


風香ちゃんがはっきりと口に出す。


「2人の関係って、はっきり言って、『異常』、だよね・・・・? 」

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