4話 中
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目を開けると、『陣羽織』を羽織った会長が立っていた。
会長の周りには、何処となく温かい雰囲気に包まれていた。
「へぇ、しーちゃんは陣羽織になるんだね〜」
【かっこいいわね! ももちゃん!! 】
緊張感が無い人達だな〜・・・・
自分の時も思ったけど、どうやって喋ってるんだ? あれ??
「ワンコくん」
「はい? 」
突然かいちょーが僕に向けて手の平を差し出してくる。
「ん! 」
「・・・・? 」
「ん!! 」
「え、な、何ですか? 」
「いや、武器になってくれないと私戦えないんだけど・・・・」
あぁ、なるほど
「いや、わかんないですよ? もしかしたら陣羽織からめちゃくちゃ殺傷能力の高いビームとか出せるかもしれなーーーー
「本気で言ってる?? 」
物凄く冷たい目で見つめられた。
「は〜い、武器になりま〜す。せぇのっ、『童子喰』っ】
多分近年稀に見る緩い変身だったと思う。
【陽くんは剣なんだね〜、かっこいいねぇ〜 】
【でしょう? 惚れちゃダメですよ?? 】
【ふふっ 】
え、笑って誤魔化された?
地味にキツイな??
【おいおい、いつまでやってんのさ〜?? ↑】
待ちくたびれたのか、『ハイド』が欠伸をしながら尋ねてきた。
【あのさぁ、やる気無いなら殺しちゃうぜ?* 】
「まぁまぁ、落ち着きなよ。人間たまには落ち着くのも必要だよ? 」
【いや〜☆ ボクちゃん『悪を為す』為だけに生まれた存在だからねぇ? 残念ながらもうウズウズしてましゅ♪ 】
『ハイド』は股間に手を持って行きぐぢゃぐぢゃとイジリ始める。
「お姉さん、あの人公衆の面前で何やってんの? 」
【・・・・】
【オナーーーー】
【んあ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ん♡♡♡♡】
僕の言葉を遮り、ぶちぶち音を立てながら『ハイド』が自分の足を引きちぎる。
【ン"き"も"ち"い"ぃ"・・・・♡】
『ハイド』はうっとりとした顔をしながらその場で立ち尽くしてしまう。
【かいちょー】
「な、何? 」
正直に言おう。
【僕あいつと戦いたく無い】
「奇遇だね、わたしもだよ」
だって、自分の足を引きちぎって興奮する奴だぜ?
絶対変態じゃん!
【ねぇ♡ ボクからいくよぉ? いいかなぁ? 良いよねぇ??♡ 】
『ハイド』が狂気的な笑みを浮かべながら跳躍する。
「うわっ! 」
【ひ"ぃ"ん"ッ!♡】
『ハイド』は、自分の足を振り回しながらキシシっと笑っている。
【いやぁん♡ なんで逃げるのぉ??↓ さびちぃよぉ!! キシシ♪ 】
「いや、無理でしょ! 戦う以前にその武器は生理的に受け付けないって!! 」
わかる。
あの武器は正直怖い。
いや、だって、生足だぜ?
振り回す度に血がビシャっと飛んで僕にかかるんだよ。怖いよ。
【ん〜?↑ じゃあ、こんなのはどうかなぁ〜?? 】
『ハイド』の足がノイズが走る様に錆び付いた鉈に変わる。
【キシシ♪ これで戦えるかなぁ? あぁ、この武器良いなぁ〜♪ 殺しやすい! 】
『ハイド』は、基本的には人間だ。
体力も、運動神経も高いとは言えない。
だが、読めない。
攻撃は当たる。
それなのに、全く手応えが無い。
受けた攻撃すらも奴にとっては『快楽』でしか無いのだ。
【ねぇ〜え、もっと楽しんでよぉ〜?→ キシシ♪ 】
マズイな、これは、消耗戦だ。
僕の異能は、高い攻撃力を持つがかいちょーの項を大量に消費する。
それに、詩織さんの異能まで展開させてるんだ、並の消費量じゃないはず。
そして、『ハイド』は自分の足を引きちぎった事で長時間の戦闘は望めない。
これは、どう戦おう・・・・。
「なぁ、しーちゃん」
かいちょーが『ハイド』に聞こえない様小声で話しかけてくる。
「志姫ちゃんって、力持ちだったっけ? 」
【いいえ、あの子は基本的に体力、運動神経、学力のほとんどが普通の人間より劣っているわ。常に『ハイド』を抑え込んでいたのもあるけど、半分は才能の問題ね。】
「ふーん・・・・」
普通の人間より劣っている?
「ワンコくん」
【はい】
「ちょっと『ハイド』のスカートめくってみたいんだけど、良いかな? 」
【喜んで】
【え、え、二人共何するつもりなの?? 】
ふっ、かいちょー、わかったよ。
あんたの狙いが!
【なんだぁ? 作戦会議かぁい??↑】
ずっと気になってたんだ。
かいちょーが『ハイド』に向かって走り出す。
すると、危険を感じたのか『ハイド』が片足をバネの様にし、跳躍する。
それを見越し、かいちょーは『ハイド』を下から『覗き込む』。
【・・・・え?】
「見えたか? 」
【み、見てないわ】
【ばっちり】
やっぱりな。
おかしいと思ってたんだ。
「【お前、男だろ】」
【・・・・あぁん?↓】
『ハイド』は詩織さんの妹、志姫ちゃんの異能のはずだ。
だが、先程股間を覗き込んだ時、
付いていた。
男性特有の
神に与えられし性の象徴
それが『付いていた』
気になってはいた。
志姫ちゃんが死んだのは大体一ヶ月前、室内で自殺が確認されたというのに、なぜここに『ハイド』が立っているのか。
志姫ちゃんは死んだ。
死んだ人間は生き返らない。
当然の話だ。
それなのに、あいつは存在している。
志姫ちゃんの記憶を持っている。
『何者でも無い誰か』が。
「『ハイド』、お前、自分の事をどこまで理解してる? 」
【どうゆうこと・・・・? 】
「お前はいつ産まれた。お前は、本当に志姫ちゃんか・・・・?」
【さっきから何言ってんだよ、ボクは志姫ちゃんから産まれて、産まれ、産まれ、産まれ・・・・た? 】
段々と『ハイド』の顔が歪み始める。
【ボクは、『ハイド』、だよ、な? いや、『ハイド』? 志姫?? 誰?? ぼく? わたし? おれ? おまえ?? だれ? どれ? なに? ぼくは・・・・】
『ハイド』が膝をついて倒れ込む。
【ぼくは、『ハイド』、『ハイド』? ちがう、ぼくは、ぼくは・・・・】
『ハイド』は地面をガリガリと引っ掻き、爪が剥がれながら、ブツブツと呟いている。
【『ハイド』・・・・】
「ごめんね、しーちゃん。こいつは、もう・・・・」
『ハイド』の顔はノイズを発しながらビリビリと見えなくなっていた。
誰かもわからない人間を、理由もわからず戦い、ぶちのめした。
こんな生産性も、何もない戦いに意味があったのかわからない。
とりあえず、この人をどうにかしなければーーーー
【月夜、あの男、壊れちゃったみたいよ? 】
空気がピリッと変わる。
暗闇の中からゆっくりと目の前から一人の女性が歩いてくる。
街灯の明かりの下に立ち、顔がはっきりと見える様になる。
「こんばんは〜、ひーくん。良い夜ね〜♪」
【姉、さん・・・・? 】
そこには、白衣を着用し、露出の激しい服を着た姉が立っていた。
【月夜さん、説明してください。】
詩織さんが低い声で尋ねる。
「や〜ん♪ そんなに怒んないでよ〜。ただ『なんの個性も存在感も無い一般人に悪意を詰め込んだらどうなるかな〜』って思って。ちょっと実験してみただけよ〜? 」
「実験? これが・・・・?? 」
かいちょーが周りの惨状を見つめる。
周りには大量の血が飛び散り、足を引き千切られ、全身がボロボロの女装少年。
「なんで、貴女が『ハイド』の栞を持っていたの・・・・? 」
詩織さんが、悲しそうな声で尋ねる。
「志姫ちゃんには申し訳ない事をしたわ。ひーくんの卒業式にお忍びで会いに来たんだけどね? 志姫ちゃん、とっても悲しそうな顔をしてたからストレスを発散させてあげようと思ったんだけど、死んでしまったんでしょう? あぁ、可哀想に。私、とっても悲しいわ? しくしく。」
【志姫ちゃんに、何をしたの・・・・? 】
「ん〜? 確か、スタンガンでバチバチってしてからネットで見つけた適当なおじさんに預けてみたの! その後は知らないけど、死んじゃったみたいだし栞は貰っといたわ。だって、もう使わないでしょう? 」
【この人も、貴女が巻き込んだの? 】
「ん? ・・・・ああ! 安心して? 死体の処理は私がやっておくから。」
そう答えながら『ハイド』をいじる姉の姿は、『お人形遊びをしている幼女』の様に見えた。
「その人は、誰なんですか・・・・」
「さぁ? ひーくんの学校帰りに見かけたから連れて来たんだけど、誰なのかしら?? 」
「!? うちの生徒なのッ!? 」
「あぁん! そんなに怒んないでよ〜、ちゃんと最後にイイコトしてあげたから〜♡ 」
『ハイド』の顔をしっかりと見つめる。
いつの間にか彼の顔からはノイズが消えていた。
そこには、『ハイド』の本当の顔がしっかりと写っていた。
そこには、
【翔・・・・? 】
クラスメイトの『伏見 翔』が横たわっていた。
翔は、僕の友達だった。
高校に入り、席が近いと言うそれだけの理由で仲良くなった。
彼は、とても頭が良かった。
勉強が出来るだけでなく、色んな分野の知識を持っていた。
尊敬した。憧れた。
高校生になって一ヶ月も経たない付き合いだけど、それなりに仲が良かった。
その友達が、死んでいる。
目の前で。
「あれ? その子、ひーくんのお友達だったの?? そっか、ごめんね?? 」
僕の友達が、僕の姉に殺された。
悪意もなく、
理不尽に、
好奇心で、
殺された。
【・・・・■してやる】
「ワンコくん? 」
【■してやる】
「し、しーちゃん? 」
体が熱い。
憎い。
あいつが。
僕の、友達を、
殺したあいつが。
会長の叫び声が聞こえる。
でも、もう遅い。
もう、耐え切れない。
「んふふ♪」
姉の微笑む姿が目に入り、視界が真っ黒になった。
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