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物語異能の負け犬男子  作者: 柴犬男
アリスの狂気
13/38

4話 中

投稿しました。

【あ! お兄ちゃんおかえりなさい!! 】


玄関を開けた僕に向けて『アリス』が無邪気な声で語りかける。

しかし、会長の姿を見た事で『アリス』の声音が一変する。


【お兄ちゃん、またその人を連れてきたの? 】

「あぁ、綺麗な人だろう? 」

【わたし、その人嫌いだわ 】

「ありゃりゃ、わたし嫌われてるみたいだよ? ワンコくん」

「そうみたいですね」


『アリス』は、会長と僕をじぃっと見つめる。


【ねぇ、企んでいるの?】

「さぁ? エッチな事かな?? 」

【ふ〜ん・・・・】


ダメだ、思考が、まともでいられない。


【じゃあ、こっちからいくね? 】


『アリス』の背中から、たくさんの触手が伸び、僕達に襲いかかる。



「今だッ!!」

「『吹き飛ばすッ!!』」

【!?】


会長が叫ぶと、僕達の背後に待機していた風香が芭蕉扇を思いっきり仰いだ。


「・・・・がんばって!!」


風香ちゃんの声援を受けて、僕、会長、『アリス』はどこか遠くへと吹き飛ばされた。



☆☆☆



「ね〜ね〜、やっぱ作戦立てた方がいいと思うな〜」


家に向かう最中、風香がそんな事を言ってくる。


「いや、だって会長が『自分のやりたいようにやる』って言うからさ」

「そうだよ風香ちゃん、指示待ち人間じゃダメだよ。ちゃんと自分で考えて行動しなきゃ」


うわぁ、聞きました?

ブラック企業の上司みたいな考え方だよ。

この人、生徒会長なんだぜ??


「でも、そうだね。君には大役を任せるよ」

「大役? 」

「風香ちゃん、君にはわたしとワンコくん、そして『アリス』を吹き飛ばして欲しい。できれば、あそこの山とか広い所が良いかな。」

「別に、良いですけど・・・・」


・・・・なるほど。

おそらく、『アリス』との戦いはかなりの規模になる。

それをこんな住宅街で繰り広げればおそらく明日の新聞の一面に飾られてしまう。


「あの、わたし、置いてきぼりなんですか? 」

「うん、ごめんね。」


無慈悲な会長である。

でも、仕方ないとは思う。

風香の異能は戦闘向きでは無い。

芭蕉扇の逸話は「孫悟空と一騎打ちしていた羅刹女が形成不利と見て芭蕉扇で悟空を吹き飛ばした」というものである。

どちらかと言うと今までもサポートに徹してくれていた。


「僕も、その方が良いと思うな」

「ひなたくんも〜・・・・わかった」

「うん、ごめんね? 」

「でも、約束して! 」


突然叫ぶ風香に驚く。


「最後まで、『生きたい』と願って」

「・・・・うん、約束する」


保証も何も無い、薄っぺらいけれど、大切な約束を僕達は交わした。

振り向くと会長がニヤニヤとしながらこちらを見つめていた。


「いや〜、青春ですな」

「今日で青春どころか人生も終わる可能性ありますけどね。」

「いきなりシリアスな事言うのやめて」


☆☆☆


【やられたのだわ・・・・!】


『アリス』が悔しそうな声で呟く。


「はっはっは! ねぇねぇ、今どんな気持ち? 『こっちからいくね』なんて大見栄切って飛び出して、出鼻を挫かれて、今どぉんな気持ちぃ?? 」


愛読者には、自分の強さを過信してる奴が多い。

僕みたいな無能な人間なんかは、いつも見下されている。

そんな自信過剰の愛読者様の出鼻を挫くのは気持ちが良い。

今日のオカズとしよう。


【う、うるさい! 今のは、ちょっと油断しただけよ!! 】

「あれあれぇ? どうしたのぉ?? そんなに動揺しちゃってぇ?? 」

「ワンコくん、そのぐらいにしとかないと。さすがに可哀想」


気付くと、「ひぐっ、えぐっ・・・」と嗚咽を漏らす声が聞こえてきた。

人形なので表情が変わらないのだが、中身はアリスの原作と同じぐらいの年齢の様だ。


「たまんないっすね・・・・」

「ワンコくんは、本当に一回死んだ方が良いかもね」


あれ? この人誰の為に戦うんだっけ??


ドゴォッ


地面が割れる音が響く。


【もう、怒ったわ。】


『アリス』が地団駄を踏む。


【『チクタクチクタク時計は進む』】


割れた地面からたくさんの木々が生い茂り始める。


【『これより、女王の裁判を開始するッ!! 』】


木々の間から、たくさんのトランプ兵が現れる。

でも大丈夫ッ! こっちには最強最悪の生徒会長 桜木桃花がいるんだもんね!!


「ワンコくん」

「はい!」

「ここで新情報です」


お、どうしたどうした?

『アリス』をぶっ飛ばす作戦でも思い付いたのかな??


「わたし」

「はい! 」

「異能が使えません」




・・・・・・・・は?




「はぁ!?」

「いや〜、いつ言おうかなって思ってたんだけどね〜」

「いや、ちょっ、えっ!? はぁッ!? 」

「なんか、段々言えない空気になってきちゃったから、ずっと黙ってたんだけどね・・・・ここまで来たけど、うん、めんご☆」


確かに、会長が異能を使っている所は見た事が無い。

いや、それにしても


「なんでこのタイミングで言うんですかーーーーッ!?」


トランプ兵に追い回されている最中ですよ!?

正気ですか!?


「君となら死んでも良いやって思って」

「このドアホ会長様ッ!!」


やべぇじゃん! ピンチじゃん!!

大見栄切って大ピンチじゃん!!


【あらあら、反撃しないのかしら? このままだとあなた達、死んじゃうわよ?? 】


わかってるよ!

こちとら、作戦も異能も何も無い状態でノリと勢いだけでここまで来たんだ!!

無防備に突撃したら、本気で死ぬ!!


【退屈だわ。本当に退屈。わたしは追いかけっこがしたい訳では無いのよ? 】


そう言って、『アリス』は背中から生えた触手を伸ばし追い詰めてくる。

くそ、あの触手めちゃくちゃ早いぞ!

それに殺傷力も高い!!

背中から淫獣の生えた化け物め!!

こんなの勝ち目が無いじゃないか!!


「あっ!」

「会長ッ!」


『アリス』の叩き割った地面に会長がつまずいてしまう。


【まずは1匹♪ 】


僕はまた会長を傷付けるのか?


僕はまた目の前で人を見殺しにするのか?


僕は、誰も救えないのか?



・・・・・・



・・・・・・・・



・・・・・・・・ない



「会長ッ!!」



死なせない


死なせない!


絶対にッ!!!!


「死なせるもんかァァァァァァァァッ!!!! 」


手を伸ばせ!


つかめ!!


叫べッ!!


我が名はッ!!


「『童子喰』ッ!!!!」

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