プロローグ 1
『鋼人』と呼ばれる種族が暮らすアルマンディン王国。
その国の国境付近の小さな村に住む子供が二人、故郷を後にすることになった。
少年ノイドは騎士養成学校への入学が決まり、首都スペッサルティンへ。
少女ルテナは隣の領地の公爵に護衛として住み込みが決まり、グロッシュラー公爵領へ。
それぞれの道を歩み始めるため、迎えに来た騎士や公爵たちと合流した矢先、王国と敵対するクリノクロア神聖国の敵兵の奇襲に遭遇してしまう。
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木を打ち鳴らした乾いた音が響いた。
同時に木剣が朝靄の空へと高々とあがり、緩い弧を描いてむなしく地に落ちる。
その木剣を持っていたのは少女だった。
「……っ、いたっ!」
弾かれた勢いで、派手に尻餅をついて声を上げると、その喉元に木剣が突き付けられた。動きを封じられ、負けたと自覚して、少女が歯噛みする。
歳は八歳。
名前はルテナ・シックザール。
彫りは浅いが中性的な顔立ちは端正だ。柔らかそうな栗色の髪は短く、前髪の下で揺れる少しつり目な翡翠の瞳が精一杯相手を睨んでいる。服装は長袖長ズボン姿で、その上から急所を覆うように皮鎧を纏っているため、やんちゃな男の子のようだ。
「ふふん、またオレの勝ちだったな、ルテナ?」
「うぅ~、ひどいよ、ノイ兄。手加減してよぉ」
ルテナが抗議の声を上げると、木剣を突き付けていた少年が腕ごと身を引く。
肩口でややざんばらに切られた赤毛の髪、切れ長で目つきの悪い赤茶の瞳が、少女ルテナを見下ろしていた。
彼の名はノイド・ロートシルト。
ルテナとは血縁ではないが、彼らの暮らす場所は、百人にも満たない小さな村のため、全員が顔見知りだ。村で一番歳が近く、とても仲が良いため、兄貴分として『ノイ兄』と呼ばれ慕われていた。
彼はルテナと似たような格好をし、小馬鹿にするようなひねた表情をしている。そんなガキ大将を体現するノイドは木剣で肩を叩きながら鼻で笑った。
「それじゃあ訓練にならねーだろ」
「ノイ兄の方が背も高いし、二つ歳の差もあるし、勝てるわけないじゃん!」
「そりゃお前が弱いだけで身長とか歳は関係ないだろ。要するに修行が足りないって事だ」
ノイドの解説にふて腐れながらルテナは立ちあがり、ズボンについた砂を払う。
練習場にしている土を固めただけの開けた場所に、今は二人だけだ。
「あたし女の子なんだから手加減してよ」
「男より強い女だっているって聞いた事あるぜ?」
兄貴分に言い返され、ルテナは不機嫌そうな顔で木剣を拾いに行く。
戻ってくるのを待ち、ノイドは木剣を構えた。
「よし、もう一回だ!」
「えー、もうやめようよ。そろそろ行かないと……」
「んだよ、もういつ会えるか分からねーんだぞ」
「年に一回は帰って来るし、ノイ兄もでしょ?」
「お前は少しは近いだろうけど、オレは首都だぞ? 遠過ぎて年に一回なんて……」
「おーい、そろそろ行くぞー」
ノイドの言い分に被せて村から彼の父親が声を駆けて来た。
ルテナはすぐに立ち上がると、そそくさと村への道を歩き出す。
「あっ、待てよ」
素っ気ない態度の妹分の背中を追い、ノイドもまた駆けだすのだった。
予告通り、『怪異相談所『不可思議』』のクロスオーバー開幕です!
初回は二話同時に投稿いたします。
早く不可思議を書けって話ですけどね……。おまけと思ってください。
あ、あと……かなり死人が出ます。不可思議の方がマイルドかもしれない。
それから個人的に、カタカナ表現ができてとっても楽(笑)。不可思議は和風を意識しないといけないと思ってカタカナ表現はほぼほぼありませんから……先にカタカナ表記を思い出して「いや、これ日本語だとどうだっけ……」って調べることが多いのです。
愚痴はここまでにしておきまして。
というわけで、中世ファンタジー×ゾンビ(作中では別表記)アクション。はじまりはじまり。




