6 .紋章
評価ありがとうございました。
「ああん?ふん、初対面のお前の言うことなんて信用できねぇな。」
「あなたが何者なのか分からない今渡すのはなぁ。」
「つまり、私がお金を払って何者か証明すればいいってことですか?」
「「それならいいが…」」
二人の返事を聞いた私は腰にぶら下げていたカバンに手を入れて300リオン取り出します。それと同時にお嬢様に仕えていることを示す紋章を取り出しました。
紋章は魔法でしか印が付けれないので偽ることは出来ません。
「では、これで譲っていただけますか?」
「こ、これは…もちろん、喜んでお譲りいたします!」
お金儲けをしようと思っていたらしいおじさんはすぐに譲ることに納得してくれましたが守ることを考えていたおじさんは何か考え込んでから口を開きました。
「ですが…その作法とかに問題あるでしょうし生活は…」
「作法に関してはもちろんこちらが責任を持って躾けますし、生活としてはメイド見習いのような感じで預かろうと思っております。お嬢様の新しい道のお役に…」
そう、案とはこれのことなのです。頭がいいようですから、すぐに覚えてくれるでしょう。
「そうですか…では俺たちは介入しません。」
おじさん二人は引いてくれました。私はおじさん二人にお金を渡しフェビスロの子供に手を伸ばします。
「来てください。立てますか?」
「なにもしない?」
フェビスロの子供はくりくりとしたおめめで私を見上げてきます。今更ですが言葉は通じるようで良かったです。
…かわいい。
屋敷で働くものの癒しとなることでしょう。
「はい。危害は加えないと誓います。」
そういうとフェビスロの子供は立ち上がりました。二人で馬車の方へと戻ります。いつも真面目で今は御者のリナンの目がもう可愛さにメロメロです。顔にもふりたい、と書いてあります。
「お嬢様、フェビスロの子供を連れてきました。」
「そう、ありがとう。じゃあ、サリーの隣に座らせてくれる?」
「はい。」
手を引っ張って座らせると再び馬車は走り出しました。今度こそ屋敷に着きます。
私が許可をもらってフェビスロの子供を下ろすと、やってきたリナンがしれっと頭を撫でていました。迎えのメイドがとても羨ましそうに見ています。
それを横目に見つつ、お嬢様方を下ろしていきました。全員下ろすとお嬢様が指示を出します。
「リナン、フェビスロの子供をメイドたちで洗ってください。サリーはわたくしを部屋まで送ってティータイムの準備をしてくださいませ。二人分でお願いします。」
「「はい」」
なぜ、二人なのでしょう…?それはともかく、リナンの目がメイドなので感情を抑えつつもハートになっていることにお嬢様も気づいたのでしょう。私ではなく、リナンにフェビスロの子供を預けることにしたようです。それにしても堂々とお嬢様然としているお嬢様も可愛らしい。
「それとフェビスロの子供といちいち呼ぶのも…という感じなのでお名前をお聞きしたいのですが…」
お嬢様がそういうと、フェビスロの子供はふるふると首を振りました。
「なまえ、ない、です。」
その答えにお嬢様は少し目を見張り、何かいい案はないかしらと首を傾げます。と、すかさずリナンが手を挙げました。
「僭越ながら、ミアという名前を提案いたします。」
…リナンがいつになく真剣です。
「ミア、ね。素敵なんじゃないかしら。お母様、お父様、どうですか?」
「いいと思うぞ。」
「あなたもいいかしら?」
フェビスロの子供ーー改めミアはこくりと頷きます。その後ろでリナンが感無量としう風に小さく拳を握りしめていたのは気づかないふりをしておきましょう。
「では、お嬢様失礼致します。ミアちゃん、いきましょう。わたしのことはリナン姉様と読んでください。」
「リナンねーさま?」
真面目なので冷静な顔をしていますが雰囲気が完全にゆるゆるとしました。同僚となる予定ではあるので別に姉様と呼ばれても問題はないですね。
そんなこんなでリナンとミアが歩いて行きました。お手伝いに立候補するメイドの大群が見えます。参加していないのはエリーゼ様とスティーブ様のそれぞれ執事とメイドが二人ずつといったところですか。
「ふふっ、大人気ですね。サリーも混ざりたかったのでは?…ごめんなさい。」
それを見たお嬢様が嬉しそうに微笑んでその後私に謝りました。
「別に気にしませんよ。」
そういうと私はお嬢様と歩きだす。スティーブ様とエリーゼ様の執事とメイドも主君を迎えに来たようです。
「ミア、馴染めそうでよかった。それにしても、珍しくリナンの感情が丸わかりだったわ。」
歩きながらお嬢様が安心したように溢されます。馴染めないとしんどいでしょうから。
「リナンのあの表情は私も初めて見ました。」
それに、リナンがあそこまでメロメロになるとは確かに予想外でした。驚きです。
読んでくださりありがとうございます。
ちなみに作者は勝手にリナンに共感を覚えています。作者だけど。
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作者が泣くほど喜びます。