鷹の送り手
とある大国の城の中、美しい女が窓辺に立っていた。
濃緑のドレスを纏うその女は長いプラチナブロンドの髪を緩く編んで赤紫のリボンで留めている。赤紫の瞳が見つめる先には一羽の鷹。その鷹は窓から滑り込み、部屋の中にある止まり木へと舞い降りる。
「お帰りヒューイ。ネスは上手く行ったか?」
鷹の鳴き声を聞き、女は微笑んだ。
「どうなりました?」
微笑む女へと話し掛けたのは、金茶色の髪に碧い瞳の男。その男の腕の中には、女によく似たルビーの瞳の幼子が抱かれている。
「結婚するって。」
「それは良かった。」
「ネスなら、その内自分で覚悟を決めただろうけどな。……辛く苦しい思いをした人間には、耐えた分以上の幸せが訪れて欲しいと願ってしまう。」
苦く笑った女へと男は歩み寄り、子を抱いているのとは反対の腕で女を抱き締めた。
「私も、そうなって欲しいと願います。」
ルビーの瞳の幼子が声を上げて笑い、二人は微笑み幼子を眺める。
「ライは、幸せか?」
幼子の頬を愛しげな表情で撫でながら、女が聞いた。
「勿論です。貴女に出会い、人生最良の日がどんどん増えていっています。」
「まだまだこれからだよ。共に、もっともっと、増やして行こう。」
「はい。愛しています、シルヴィア。」
「私もだ。愛しているよ、ライオネル。」
二人の唇が優しく重なり、それぞれに幼子の頬や額へと口付けた。
「その内、一座がルドンへとやって来たら、ネスは王子達の遊び相手になってくれるかな?」
「その時にはもしかしたら、ネスにも子供が出来ているかもしれませんね。」
「あぁ。それはとても、幸せな事だな。」
「そうですね。」
そうして二人は、祖母の元で遊んでいる二人の王子を迎えに行く為、部屋を後にした。
ネスへと届けられた手紙には、
『可愛い弟、ネス
彼女の気持ちは本物だ。お前を一人の男として想っている。信じてやれ。そしてお前も、素直になれ。でないとぽっと湧いて出た男に掻っ攫われて後悔する事になるぞ。
それと、彼女に踊りは向いていないらしい。歌は上手いと聞いた。
自分の子は可愛いぞ。ライは毎日デレデレしている。
その内、ゾーイを連れて会いに来い。酒でも飲もう。
お前の兄と姉より愛を込めて』
そう、書かれていた。
これにて『マジェンタの瞳』シリーズ完結となります。
最後までお付き合い下さり、本当にありがとうございました。




