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第21話 バーゲインス・ブラザーズ

グローム砦 中庭


巨大な赤いドラゴンがゆっくりと中庭の石畳に着地しようとしている。その下には、松明でドラゴンを誘導をする男二人がいた。ドラゴンはそのまま大木の様な両足で地面に降り立つ。着地の時に少し地面が揺れる。


ドラゴンは翼も地面に下ろし、首も同じようにすると黒い鎧を着た一人の男が背中に乗っており、男は地面に降りる。誘導していた男が近づく。


「ハリー様、お疲れ様です。どうでしたか?例の魔導船の方は?」


黒い鎧を着た男、ハリー・バーゲインスはため息をつく。


「無駄足だった…。金貨や宝石を積んでいるかと思ったらただのゴミだけだよ。まあ、最後は乗員もろとも海に叩き落としたけどね」


クスクスと笑いながらハリーは言った。


「兄さんは居るか?」


「ボスなら部屋に居ますよ」


「そうか…分かった。そんじゃハリアーの世話を頼むね」


「へい。分かりやした」


ハリーはそれを言うと砦の方に歩いていった。残った男達は赤いドラゴン、ハリアーをゆっくり宿舎へと移動させ始めた。ハリーは中庭の砦の扉を開くと廊下を歩いていく。廊下の突き当たりの階段を登って行くと領主の執務室に着いた。だが今では悪党共の、親玉の部屋になり果てている。ハリーは執務室の扉をノックする。


「兄さん、俺だよ」


「ハリーか?入れ」


ハリーはそれを聞くと執務室の扉をゆっくりと開けた。中に入ると、豪華な装飾の施された部屋の真ん中の机にブラック・シーフ盗賊団の首領、ザルドス・バーゲインスがふんぞり返っていた。机には酒の瓶が大量におかれている。ザルドスは酒の入った瓶を置くと言った。


「戻ったな、どうだ?仕事は」


「残念ながら無駄足だよ…。宝なんて積んでもいない」


ハリーは執務室のソファーに座る。


「何だと?ちゃんと調べたのか、ハリー?」


「ザルドス兄さん、僕が見逃すわけないだろ。全部調べたさ、でもあったのは干物と塩だけだ」


ハリーは近くにあった酒の瓶を掴み、一口飲んだ。


「くそ!またガセか!? 」


ザルドスは机を叩く。その衝撃で酒の瓶がいくつか落ちた。


「リゲイン王国から財宝を積んだ魔導船が出るはずだったはず…くそ!」


「兄さん、その情報…例のガキからか?」


「ああ、いつもの兎族のガキさ」


ザルドスは机の引き出しから一枚の羊皮紙を取り出す。それには魔導船の情報がこと細かく記載されている。魔導船の出発時刻、船の護衛兵の人数など警備上重要な情報が載っている。


「あのガキ、この情報通りに動けば宝は手にいれることができるよー、なんて言って宝の一つもねぇじゃねえかよ」


「確かそいつ、カトレア草原の商人のキャラバンの情報を教えてくれたんだよね?」


「ああ、お陰でカトレア草原に行った連中は皆殺しにされたがな」


「僕が行った時には全員がバラバラ死体になっていたしね」


その時執務室の扉を勢いよく開き、一人のオークの男が息を切らしながら入って来た。


「ボス…ゼェ、ゼェ、大変です!」


「何だ急に?どうした」


「襲撃です!」


「何だと!?騎士団か?」


「いえ、騎士団ではありません!」


「じゃあ何なんだ!?」


「見たこともない武器を持った二人組の男です!」


「お前ふざ…」


ザルドスが言いかけた時、砦全体に大きな爆発音が響き渡った。ザルドスが執務室の窓から外を見ると、砦の食堂のある場所から赤黒い炎が吹き出していた。どうやら食堂の方で戦闘が起きている様に見える。


ザルドスは再びオークの方を向くと言った。


「すぐに全員を叩き起こして、迎え撃て!」


「分かりやした!」


オークは急いで執務室から飛び出して行った。


「ハリー、お前はドラゴンで空に上がれ!」


「分かったよ、それじゃ他の飛竜も上げていいんだよね?」


「構わん!総力戦だ。出し惜しみは要らん!!」


「じゃ、行ってきます」


ハリーはまるで新しいオモチャをもらった子供の様な笑顔で執務室を後にした。







グローム砦 食堂


その頃、牢屋から食堂に来た優達は盗賊と戦闘になっていた。食堂で盗賊達の宴会にたまたま居合わせてしまい、100人近い人数が一斉に攻撃してきたのだ。幸いにも盗賊達は刀剣類で攻撃してくるだけだった。優達(ティナを除く)は構わず、飛び道具である銃を使用し、盗賊を次々と倒していく。


宴会の料理の上に盗賊の血や肉が飛び散り、食堂内に血生臭い臭いが充満し始めた。


「たく!コイツらと来たらROE(交戦規定)を無視しまくりじゃねぇかよ!!」


イサカを撃ちながらスティーブが言う。


「仕方がないよ。異世界に、ましてや盗賊団にそんな決まりなんてあるはずはないさ!」


スティーブの裏では優が89式改を連射モードで撃ちまくりながら言った。


「だな!」


スティーブはその間に近づいてきた盗賊の頭をイサカで吹き飛ばす。その血飛沫の向こうではティナがナイフを二本逆手に持ち、華麗な舞で盗賊を切り裂いていく。盗賊達はそれを見てたじろぐ。


「化物かよ!あいつら!」


「トロールを出せ!」


食堂の一番大きな扉が開くと、中から緑の肌と木の棍棒を持つ巨人が出てきた。5m位ある身長と醜く太った体は周囲に嫌悪感を与える存在に見えた。


「何だあれ!?」


「クレイジーモンスターのお出ましか!」


トロールは優とスティーブを見ると雄叫びを上げて突進して来た。


「まずいぞ!避けろ!」


「くっ!」


二人は横に避けると、トロールはそのまま盗賊を巻き込みながら壁に突っ込んだ。優は再びトロールに狙いをつけ直すと、89式改の銃身に取り付けたショットガンを撃った。


トロールの腹部に命中したものの、分厚い脂肪に阻まれ致命傷には至らず、優は毒づく。トロールは棍棒を振り上げた。優はトロールの棍棒を持つ右手に弾丸を放った。弾丸はトロールの右手の指を破壊すると棍棒が地面に落とした。


「優!伏せろ!」


ふと優が裏を見ると、スティーブがいつの間にかM72LAWを取り出し、構えていた。


「わ、ちょっと待て!」


優が声を上げたと同時にM72から66ミリHEAT弾が発射された。ロケット弾はトロールの口の中に当たり、トロールの頭が西瓜が破裂する様な爆発を起こした。頭がなくなったトロールはフラフラと巨体を揺らし、そのまま裏に倒れた。


「確か、日本ではウォーターメロンを割る遊びがあるんだよな?優」


爆発の衝撃で転がってしまった優は咳き込みながら立ち上がる。


「それはスイカ割り。日本の夏の風物詩の一つだよ、スティーブ。それにこんなに血生臭くない」


もしこのスイカ割り(?)を日本でやればたちまち警察沙汰になるだろう。ましてや子ども達に悪影響を与えかねない物だと、両親と教育委員会が大騒ぎするはすだ。


「室内でロケット弾は不味いよ」


「すまん、つい反射的に撃ってしまった」


「ついって…」


周りを見るとロケット弾の爆発の衝撃で食堂の天井部分が崩れ落ちていた。盗賊達も瓦礫の下敷きになって大半が戦闘不能に陥っていた。その瓦礫を避けるようにティナが優達の方に歩いてきた。


「一体…何なのその武器は?死ぬかと思ったわ」


ティナの黒い毛並みが瓦礫の埃で白っぽくなっている。彼女も爆発で吹き飛ばされて危うく下敷きになりそうになったようだ。


「ティナ、大丈夫か?」


彼女は少し不機嫌そうに言う。


「もう少しで押し潰されるところだったのよ。大丈夫じゃないわ」


ティナの猫耳が下がる。その後ろには瓦礫に挟まれたフェルクがいた。


「だ…誰か、助けて…!」


「おい!大丈夫か!?」


「抜けられないよ~」


優がフェルクの側に駆け寄る。フェルクの上にはテーブルと瓦礫が一緒に重なり、身体を挟んでいるようだった。優は近くにあった角材を手に取ると瓦礫の隙間に差し込み、梃子の原理で瓦礫を退かし始めた。


「スティーブ、ティナ手伝ってくれ!」


「おう!」


「あたしは嫌よ」


ティナは裏を向いた。


「どうしてだ?」


優が聞く。


「そいつは盗賊団の一人なんでしょ?だったら置いて行きましょうよ」


「ティナ、こいつはもう盗賊団の一人じゃないよ」


「じゃ、何なの?」


「俺達の仲間さ」


「ふざけんじゃないわよ!」


食堂にティナの声が響く。見れば彼女の尻尾が逆立ち、怒りに満ちた表情になっていた。猫は威嚇の時にこんな感じになる。


「こいつらはあたしを陵辱したのよ!それを今さら忘れて仲良くしろって?馬鹿にするのもいい加減にしな!!」


ティナは怒鳴り散らした。優は角材から手を離すと彼女のそばまで歩いてく。


「おい、優…。」


スティーブが心配そうに言う。


「こいつが憎いか?殺したいほど憎いか?」


優がフェルクを指差して言った。


「憎いわよ…。」


「そうか、分かった。」


すると優はホルスターから9mm拳銃ことSIGP220を取り出し、銃のスライドを引き初弾を送り込む。


「こいつは拳銃と呼ばれる武器だ。この引き金を引くだけで相手を殺すことができる。」


「何のつもり?それで殺せって?」


「君がそれだけこいつが憎いなら殺せばいい。」


「優!?」


「止めてくれよ!殺さないで!」


スティーブが驚く中、フェルクは情けない声を出す。そうしている間にもティナはためらいもなく優の持つ拳銃を手に取る。ティナはフェルクに拳銃を向け、狙いを定めた。


「あんたなんか…あんたなんか!死んでしまえばいいのよ!!ああああああああああああああ!」


「止めてくれぇぇぇぇぇぇ!」


フェルクの叫びと同時に拳銃から弾丸が発射された。
























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