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第19話 ドラゴン

「まさか…猫耳とはな。」


優は今目の前にいる女性の姿に驚いた。彼女の頭には黒い猫耳、そして下には黒い尻尾が付いていたのだ。だがここは異世界。フェルクのような獣人系種族がいるのは聞いていたがまさか猫耳女がいるとは想像はしてはなかった。


もしここで萌えキャラ好きの人々がいたらたちまち長い行列ができ、握手やサインを求めるだろう。それだけ彼女の容姿は完璧なのだ。とりあえずそれは置いといて…。


「おい!大丈夫か?」


優が問い掛けると猫耳女性はゆっくりと顔を上げた。女性は意識は有るが酷く窶れていた。そしてゆっくり口を開いた。


「あたしを…殺すのね。」


「大丈夫だ、殺さない。名前を教えてくれるか?」


「ティナ・パルマ…。商人の護衛よ。」


「商人の護衛?」


優は町を出る前にウォーリーに言われていた事が一つあった。それはブラックシーフ盗賊団に人質にされた商人達がいるのだと言う。彼らはバロシュードに向かう途中で拉致され、このグローム砦に囚われているらしく、見付けたら助けて欲しいと言われていた。商人達はウォーリーの知り合いでもある。


「ティナと言ったな?君の他に囚われている人達はどこに?」


「…商人達はあたしを除いて皆殺しにされたわ。」


「皆殺しだって?」


「襲撃された時にその場で殺された。あたしら護衛も必死に戦ったけど、相手が多すぎて…。」


「そうか…君はここに監禁されていたのか?」


「あたしは猫人族の女だってことで殺されなかった。それ以来ここに閉じ込められていた。」


「他に生存者は?」


ティナが首を横に振る。


「あたしの他に女性が三人いたけど…彼女達は捌け口にされたわ。毎日のようにね…。」


(まさか…さっきの女性達が?)


「悪いんだけど…水くれない?酷く喉が渇いて死にそうなのよ。」


「わかった。」


優はバッグパックから水筒を取り出すと蓋を空け、ティナに渡した。ティナは水筒の水を少しずつ飲んでいく。一通り飲み干すと優に水筒を返す。


「はぁ~生き返る…。」


「今拘束具を解く。フェルク鍵を開けてくれ。」


「あ、ああ。」


フェルクはティナに近付くと拘束具の鍵で彼女の鎖を外し始めた。ティナはフェルクを見ると突然豹変した。


「ア、アンタ!盗賊団の仲間じゃない!?どうしてここにいんのよ!」


ティナが牙を剥き出しにし、フェルクを威嚇した。フェルクは小さい悲鳴を上げ、裏にのけ反る。それを見たスティーブが押さえた。優がティナを落ち着かせる。


「落ち着け。彼は俺達に協力してくれているんだ。」


「はぁ!? この変態狼が? コイツはあたしらを〇〇〇にしていたのよ? 毎晩、毎晩牢屋の前に来て〇〇〇〇して…。」


ティナは少し涙目になっている。優は呆気を取られた。ティナにはよほど酷いものだったようだ。スティーブが笑った。


「小僧? お前さん大胆だな~。」


「ち、違うんだ!あれは我慢できなくてつい…。」


フェルクは必死に訴えるが全部言い訳に聴こえてしまうのは気のせいだろうか。確かに男であれば溜まるものは溜まる。出さなければならないだろう。


「気持ちは分かるよ。経験しなければならないからな、それは…。」


優は苦笑いをしながら言った。ティナはお構い無しに放送禁止用語を浴びせる。


「アンタ!あたしの〇〇〇みて、ニヤニヤして楽しんでいたでしょ!?」


「俺だって…俺だって我慢出来なかったんだ!!うわあああん!」


フェルクは号泣した。なんだか何処かの議員の会見の一場面を見ているようだと、優とスティーブは笑いながら思った。流石にほっとくとティナがフェルクの喉を噛み千切って殺してしまうので間に入った。


「よーしそこまでだ二人とも。今はこの状況を乗り越えないとな。」


「…わかったわよ。正し、この変態狼とは一緒にいたくないわ!」


「俺だって、こんなキチガイ女と一緒に居たくないよ。」


「はぁ?キチガイ女ってどう言うことことよ!?」


ティナが鋭い爪で威嚇した。


「いい加減にしろ!!」


スティーブが怒鳴る。優は少し呆れた。このままで大丈夫かと内心で思ってしまった。








グローム砦 外


アレックスは砦近くの高台からギリースーツを着込んで身を潜めていた。彼女の手にはDSR-1が握られている。この狙撃銃はドイツの特殊部隊"GSG-9"の要望で開発されたものでもある。特殊作戦や隠密行動に適しているため今回の作戦に彼女自身が選んだのだ。彼女いわくドイツ以外の銃は使いたくないらしい。


「こんなに楽な作戦はないわね。」


DSR-1を下ろし、アレックスは肩の力を抜く。ふと腕時計を見ると時刻は夜中の12時になっていた。作戦が始まって既に40分近く経っていたのだ。少し小休止をしようと思ったアレックスは近くの岩に寄り掛かるとバッグパックからエネルギーバーを取り出し、包みを剥き食べ始めた。


「私、テロリストに撃たれて死んだのにまさか異世界に転生するなんてね…。」


アレックスはエネルギーバーを食べながらここまでの経緯を振り返ってみた。アレックスは転生する前はドイツ国内で発生したテロリストによるビル占拠事件のために、狙撃兵として参加した。彼女は同じ部隊の隊員を援護するためにテロリストの占拠した向かい側のビルの上で狙撃位置についていた。ライフルに手を置き、いつでも撃てるようにしておいた。無線機から隊長の連絡が来ると応答した。


「アレックス、テロリストは人質を殺害すると言ってきた。」


「 では…突入ですか?」


「作戦本部も早期に解決をしろだそうだ。既にビルの出入口に全部隊を配置した。」


アレックスはライフルのスコープでビルの窓を見た。窓際には黒い覆面を被った犯人二人が人質を脅しているのが見える。


「アレックス…射殺許可が降りた。狙撃せよ。」


「了解。」


アレックスは犯人に狙いを定めると引き金を引いた。スコープ越しに犯人の頭から血飛沫が飛び散る。続いて隣にいた犯人の胸と頭に弾丸を撃ち込んでいく。


「標的沈黙。」


「了解、突入!」


その後にドイツ連邦陸軍コマンド部隊がなだれ込んだ。


人質を解放していく場面をアレックスは黙って見ていた。隊員の一人がHQ(本部)へ連絡をする。


「こちらにディクシー。本部、犯人は全員で三人か?」


「こちらHQ、そうだが…。」


「一人いない!」


「バカな!? これだけの人数がいるのに見逃すはずがない! 探せ!」


現場が騒然とする中、アレックスは目の前のビルの屋上に目をやった。なんとそこには三人目の犯人らしき人物が対戦車ミサイル"ジャベリン"を持って地上にいる野次馬に向けて構えているではないか。


「帝国主義者共め!神の裁きを受けろ!」


アレックスのいるビルまで聞こえるほど大声で男は叫んだ。


「裁きを受けるのは、アンタだけよ!」


アレックスは反射的に犯人を撃ち抜いた。だがジャベリンが発射され、なんとアレックスのいる屋上に飛んできた。急いで逃げ出すがミサイルが彼女の後ろに着弾し、大爆発した。アレックスは爆炎に巻き込まれ意識を一瞬に持っていかれた。


気付いた時には異世界に転生しているとは彼女自身も思わなかった。


そして今に至る。


「まるで絵本みたいな話ね…。」


アレックスはエネルギーバーを食べ終えた時、何かが羽ばたく音が辺りに響き始めた。咄嗟に銃を手に取り、構えた。


「何?この音は?」


周囲を見てもなにもない。アレックスは空を見上げた。月明かりに照らされ、黒い物体がこちらに飛んでくるのがみえた。鳥にも見えるが大きさが倍近くある。アレックスは装備品の中から暗視ゴーグルを取り出し、電源を入れてかけた。


出力を調整してその黒い物体を見た。それは普通に考えられないものだった。


(嘘でしょ?ドラゴン?)


暗視ゴーグルを通して見た物は翼竜のに似た巨大なドラゴンだ。大きさにしてアメリカ軍のV-22オスプレイと同等だろうか。ドラゴンはそのままグローム砦に飛んで行く。アレックスはDSR-1のスコープでドラゴンを見た。背中には人が乗っているではないか。


「不味いわ…。もしかしてあのドラゴンは盗賊団の?」


ドラゴンは砦の中庭にホバリングをしながらゆっくりと降りていく。アレックスは無線機を取り出すと周波数を合わせ連絡を始めた。


「優、私よ。不味い事になったわ。」


砦の中庭に空飛ぶ巨獣が着地した。



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