モフモフな二人だけの巻
クレアとジェイムの降り立った地……そこは残念ながら、ベスタニャ王国ではなかった。
厚い雲が空を覆い隠し、激しく叩き付ける雨……人気のない砂浜……何とそこは無人島だったのである。
しかし、この地に降り立ったばかりのクレア達に、それを知るよしはない。
「ちょっと、どうなってんのよ……」
クレアの魔力が奪われるように、衰退していく。
人間の姿を維持出来ず、ハムスターの姿に戻ってしまった。
クレアは、何度か人間の姿に戻ろうと試みるが、五分もしないうちにハムスターに戻ってしまう。
「クレア……これは厄介なとこに来ちまったな。とにかく、この嵐が過ぎ去るのを待って、この島に誰かいるか探すんだ」
クレアは、納得がいかない表情を見せるが、今はジェイムの考えに従った方が得策と考え背中に飛び乗る。
勿論、ジェイムの背中にだ。
激しい雨に自慢のモフモフは晒され、見る影もなくなっていたが、そんなのはお構い無しだ。
「はぁ……はぁ……はぁ……とりあえずここで、嵐が過ぎ去るのを待つしかないな」
ジェイムが避難した場所は、頑強な岩肌に自然に出来た横穴だった。
「こんな所で嵐が過ぎるのを待つの? 信じらんないんだけど」
「クレア、贅沢を言っている時ではない。ひとまず体を休ませるんだ」
ジェイム体を寝かせ、横穴から見える雨を眺めた。
「ジェイム……本当はね、頼りにしてるよ……ありがとう」
「な、何だよ。急に……。俺は……何だ、その。ベスタニャの人々が心配だし、ナップやメルル達のことが……」
「むにゃむにゃ……」
「何だ、寝ちまったのかよ。仕方ないな……」
ジェイムは背中のクレアを起こさないように、体勢を変えた。
◇◇◇◇◇◇
翌日、昨日の嵐が嘘のように、澄みきった空が広がった。
まず、やるべき事……それは水と食料の調達だ。
二人は仕事を分担し、クレアは水を、ジェイムは食料を探す事に決めた。
それと平行して、この島の様子を探る。
とりあえずは、そんな所だ。
クレアが最初に訪れた場所……それは横穴から程近い山林の奥だ。
山林は、防風林の役目も果たしており、比較的奥は嵐の被害を受けず、綺麗なものだった。
池や湖は見当たらないが、清流の如く溢れる、雪解け水を発見することが出来た。
本来、魔法があれば水を作り出すことなど容易なことだ。
だが、魔力の弱まった今、この水は命を繋ぐ重要なものだ。
「あぁ、冷たくて美味しい~」
雪解け水はひんやりとして、透明感があり、クレアの喉を潤した。
クレアは、幼少の頃サバイバル生活に憧れていたが、実際本当にこういう生活になると、感慨深いものがある。
見ると聞くでは大きな違いがあるのだ。
過酷な状況を実感すると、横穴へと戻った。
◇◇◇◇◇◇
一方、ジェイムは食料を探す前に、島全体を把握するべく、島に聳え立つ山頂の頂きに立っていた。
「これは……薄々感じてはいたが、小さな島ではないか……」
大パノラマが広がる島の外観……一周二キロ程の小さな島。
それはいいのだが、島の周りは見渡す限りの地平線……脱出するには困難を極める。
勿論、外からの救助など見込めそうもない。
「まず、生きる術を探さなくてはならんようだな……
想像以上に過酷と判断し、ジェイムは覚悟を決めたのである。




