貧乳と呼ばないでの巻
若干ではありますが、グロい表現を含むので、苦手な方はバック願います。
尚も信長は迫り来る。
血飛沫は、クレアの綺麗な顔立ちを染め上げた。
「もう、来ないでよ!」
大剣を通じて伝わる肉を引き裂かれる振動に、遂に拒むことを断念した。
大剣は、地面に無造作に転がる。
信長はニヤリと笑みを溢しながら二度ほど首を左右に揺らした。
するとメキメキと音を立て、引き裂かれた患部が塞がっていった。
自然治癒にしてはあまりに早い、信じがたいがそれは再生というべきに相応しいかった。
「ア、アンタやっぱり化け物?」
クレアは地面に落とした大剣を再び手にし、剣先を信長に向ける。
バックステップで間合いを取った後、信長の右肩目掛けて力任せに大剣を降り下ろした。
――ビシュ――
――ドサッ――
切れ味が抜群なクレアの大剣は、信長の右腕を削ぎ落とした。
信長は顔色一つ変えず、地面に落ちた右腕を左で拾い上げる。
「まさか、また再生?」
クレアの予想は当たった。
拾い上げられた右腕が切断部に押し付けられると、ジュルジュルと粘りけのある液体を迸らせ、再生していった。
「ちょっと、何、何? グロいんだけど……」
クレアは思わず身を引いた。
信長は右腕をグルンと回し、関節の具合を確かめると再び襲っていた。
「あ~もう。時間が稼げれば……」
嘆くクレアに長政が、傷付いた体をおして近付く。
「某が……時間を稼ぐ。見た所……クレア殿には秘策があるご様子」
「あるにはあるけど、アンタその体で……それにお市さんだって……」
「市は瀕死ではあるが息はある……頼む、クレア殿……某の我が儘を……」
「わ、わかったわよ。死なない程度に頑張りなさいよ」
「御意……」
長政は槍を携え、信長の前に出た。
「さぁ、某が相手だ!」
信長は、標的を長政に移し刀を振り回す。
長政は押されながらも、果敢に対応に当たった。
◇◇◇◇◇◇
「もう、面倒臭いわね。え~い」
クレアは、本来の姿である貧乳に戻った。
戦場に靡く、羽衣は聖なる力を纏い、眩い光を放った。
とは言え、貧乳は貧乳である。
「やっぱり、しぼんだままか……」
クレアはガッカリしながらも、大剣を魔法の杖に変え再び前線に戻った。
「ぐはっ……」
――ドサッ――
長政はまるで重い荷物のように、地面に横たわった。
「しっかりしなさいよ! アンタ、男でしょ? チンチンついてるんでしょ?」
「な、何と、ハレンチな……」
長政はクレアの言葉に、一瞬痛みを忘れた。
いや、本当に痛みがなくなったのだ。
「これでもう大丈夫」
「これは? クレア殿、何をなさったのですか?」
「魔法よ、ま・ほ・う。アンタに説明してる暇はないから、下がってて」
――ドガッ――
少々乱暴だが、長政を蹴りあげ後方へと誘った。
「はて? 貴女は一体……」
長政は夢か現実かも定まらず、クレアを見届けることしかできなかった。
「さて、信長ちゃん。アンタにはきつ~い、お仕置きをさせてもらうわね。は――っ!」
魔法の杖から聖なる光が溢れだし、巨大な塊となる。
クレアは魔力を最大限に集中し、信長に向けて解き放った。
「ぐぉぉぉ」
信長は断末魔を上げると、光の中に消え去った。
「ふぅ……こんな感じかしら?」
クレアは深く息を吐くと、ジェイムの方に視線を向けた。




