部屋について
777号室。ホミカはそのドアを開いた。家賃7000円の部屋とは?
「これは予想外ね……」
とにかくキレイで高級感溢れる畳とフローリングが1部屋ずつ。しかもベッドが備え付けられた寝室もある。広い。本当に7000円でいいのだろうか。文句を言うとしたら、
「風呂・トイレ・台所はないのね」
年頃の女子には痛い仕様である。風呂・食事はどうしたら?
「斎藤さんに聞いとく必要がある、か」
適応力もホミカの自慢である。例えるなら河口あたりに棲息するカニ。
スーツケースから手提げを取りだし肩にかけ、再び斎藤のもとを目指す。
斎藤は部屋の前で待っていた。
「部屋はどうだった?」
やや誇らしげ。
「とても広くてキレイでしたが……」
なんとなく斎藤はその反応を予想していたようだ、頭をかきながら先を続ける。
「風呂・トイレ・台所がないんだよね。いや、申し訳ない。1階にあるから皆で兼用してるんだ。大丈夫! 男湯女湯別の源泉かけ流しだ」
草津かよとツッコミを入れたくなったホミカだったが、なんとか耐えた。
「ご飯はどうしたら?」
カップ麺耐久生活は勘弁。心からそう思った。
「こっちで用意するから大丈夫。あっちの食堂で皆で食べようじゃないか。7000円は食費もコミだから」
「……?」
至れり尽くせりだ。しかし、うまい話には大概裏があるものだ。ホミカはまだ警戒を緩めない。
「よし、じゃあ挨拶に回ろうか」
「はい」
どんな時でも律儀なホミカである。