売ります買います
斎藤はホミカをなんとか足名稚から引き離し、ホミカは断腸の思いで444号室をあとにした。次は555号室。3階に上がる。
やたら高級感のある階段。ふつう蜘蛛の巣が張っていると相場で決まっているのだが……。
そして、555号室。斎藤が本日4度目のチャイムを鳴らす。中でごそごそと音がしたのち、オープン・ザ・セサミ。
中からは、民族衣装のような奇妙な服装でフードで顔を隠したいかにも怪しい人物が現れた。口元しか見えない。年齢不詳を絵に描いたような存在。
「大家サんこんニちは。今日は何か御入り用でスか?」
声から判断するに女性のようだ。わざとか元からか言葉がやや硬い。
「いやいや、今日は前話したホミカさんを連れてきたんだ。はい、ホミカさん、こちらはマーさんだ。」
「剣ホミカです。よろしくお願いいたします」
「ホミカさんでスね。こちらこそよろしクお願いいタします」
怪しそうだがいい人のようだ。
「あノ、そのニット、500円で売っテ頂けませンか?」
マーチャントっぽい。マーとはここからきているのだろうか。
「え?」
「いヤ、600円ならいかガです?」
ここでホミカはこれはいかんわと思った。
「ごめんなさい。これは私の中でも相当なお気に入りですので」
なんで私が謝っているんだろうと少し腑に落ちないホミカ。
マーはくつくつと笑った。
「それハ失礼しました。何かアったらよろしクお願いシます」
この日脳内要注意人物リストに3人目が刻まれた。




