表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/184

71 ひねくれた答え合わせ。

「大丈夫って……全然大丈夫じゃないですよ!どうしてくれるんですかっ!」

今から残り一時間で一体どこまでできる…?可能な作業は最悪営業中にやるとして、何からやるか……?今朝は何の仕事が残っていたっけ……?

パッと思い浮かべただけでも、掃除や洗い物やフライヤー作りなど大量の、なんならいつも以上に大量の作業が残っているという現実が明確だ。

ああ、昨日納品待ちと電話待ちに時間を割きすぎた……もっと平行して色々とやっておくべきだった……


「うるさいですねぇ。そんなキイキイ喚かないで下さいよ、みっともない。だから大丈夫ですって。『不甲斐ない店長の準備不足の為、今日はいつもより三時間遅れで営業を開始します。』と俺の方から既に伝えてありますから。」

「……は?伝えてあるって、誰に?」

いちいち嫌みな物言いだけど、それはこの際もうスルーしてしまおう。丁寧に気にしてたらキリがない。このハヤデラさんは嫌みを混ぜないと会話できない人なのだ、そう思おう。


「ですから、貴女の店の常連さんにですよ。エルフの集落のトップの人、バム……なんとかさん。その人に俺がわざわざ話しておいてあげたんです。感謝して下さいね?貴女、現状まだエルフの集落しか顧客に出来ていないのでしょう?俺の想定ではもうドラキュラ族くらいは顧客に出来ているはずでしたが、まぁ仕方ないと諦めてあげますよ。」

「え?ほんと、何言ってるんですか?長老さんに直接話した?どうやって??」

長老さんの魔術具講義みたく長々と話すくせに、長老さんと違いこちらの理解速度を放置で話を進めるので、結局内容が全然分からないし色々と拾い切れない。ハヤデラさん、教師にはなれないな。


「方法などどうでもいいでしょう。貴女が気にしても意味のないことです。どうせ貴女では実践できないですし。それより重要なのは、俺の気配りのおかげで、貴女に三時間以上の猶予が出来たという点だけですよ。はい、お礼は?」

嫌みを気にしないと決めたばかりなのに、彼の物言いについムッと口を尖らせてしまった。

いちいち失礼な人にお礼なんて言いたくないけど、でも実際助かったのも事実だ。今から三時間以上あれば、諸々の仕事も終わるだろう。……ああでも、お礼言いたくないな……仕方ないな……

「………アリガトウゴザイマス。」

「超渋々な言わされた感じですね。素直に礼も言えないとは嘆かわしい……が、まぁ許してあげましょう。」

「はいどうも……」

心を!心を殺すんだ鈴浦亜里!感情を殺して真摯に対応する!クレーマー対応と同じだぞ!!



「じゃあ有難いハヤデラさんのおかげでまだ時間の猶予はあるということで……色々と聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

「お、ちゃんと許しを乞えるとは急に賢くなりましたね。いいでしょう、少しだけ付き合ってあげますよ。」

おお、意外とチョロいぞこの人。さて何から聞こうか。


「じゃあまず……どうしてこの時間に電話してきたんですか?昨日は、私の納品が終わったらまた掛けるって言ってましたよね?てっきり、こちらの様子をリアルタイムで知る方法があって、業務終わったらすぐに電話来ると思ってたんですけど……」

「なんだ、そんなことですか。納品後云々はただの方便ですよ。あの時は俺が眠くて貴女の長話に付き合いたくなかったんでね。」

「はい?」

「ここ数日苦戦していたんですが、昨日ようやく異世界と電話線を繋げそうだったから寝ずに頑張っていたんです、俺偉い。しかし思ったより手間取りましてね。こっちから一方通行に電話が繋がった時にはもう深夜、俺だっていい加減眠くなりますよ。だから適当に言い訳してさっさと面倒な会話は切って、俺は気持ち良く寝てさっき起きた。とそれだけの話です。」

「……そうですか……」

こっちは電話待ちのせいでシャワーとか布団での睡眠とか、色々と犠牲にしたってのに!言わないけどさっ!!


「じゃあ、こちらの様子を探る方法はないんですね?その割にはなんか私の事情をよくご存じでしたけど……」

「そんなのありませんよ。貴女のリアルタイムなんて知りたくもありませんし。そちらと繋がっているのは、電話とパソコンと、納品便の輸送くらいですね。全部俺のおかげです、感謝して下さい。」

「ドウモアリガトウゴザイマス……」

いけない、また片言になっちゃった。まぁ渋々お礼を言ってあげてるだけ偉いとして貰おう。


「そっちと繋がっているのは電話と事務所のパソコンと納品便だけ……いつどうやって、とか聞いてもどうせ無駄なんですよね?」

「ええ。貴女が気にしても無意味です。貴女はいつものシステムをいつも通りに使えることを感謝して有り難みを噛み締めながら使っていたらいいんです。」

「はぁ……じゃあちなみに、発注タブレットの通信や店内無料Wi-Fiも使えるようにできませんか?色々と暗躍してくれてる有能なハヤデラさんなら、なんとかなりません?」

発注タブレットの通信が直れば、毎晩ベル君に魔具を借りるという迷惑をかけながら急かされて発注する必要がなくなるだろうし、店内Wi-Fiが通ればスマホも使えるかもしれない。

「ええー?これ以上俺を酷使する気ですかぁ?………まぁ気が向いたら試してみますよ、仕方ありませんねぇ。」

「是非よろしくお願いします。」



二十分ほど話し続けて元々カラカラだった喉が限界を迎えたので、受話器のコードに邪魔されつつ、なんとか紅茶を淹れる。お気に入り私物の紅茶棚とポット一式がデスクの近くにあって助かったけれど、始めから子機で電話取れば良かったな……

そしたら電話しながらでも開店準備できたかもなのに。今からでも切り替えちゃおうか。

「言っときますけど、俺の話を聞きたいのなら、朝飯食べながらとか仕事しつつとか、そんな片手間に聞かないでくださいよ?貴女はそんなに器用じゃなさそうですし。渋々付き合ってあげてる俺にもっと敬意と感謝の意を持ってください。」

「え、あ、はい、すみません……」

なんだこの人、心でも読めるのか?!それともやっぱり何らかの方法でこっちをリアタイで監視してるのか??!


先手を打って釘を刺されてしまったので、そのまま大人しく質問攻めを続けることにする。えっとじゃあ次は……?

「えっと、じゃあ次いいですか?そちら…今ハヤデラさんがいるのは、日本で間違いないんですよね?それでSVということは、本部の営業所に所属しているんですよね?何処の地域ですか?なんか年齢も若そうですけど、入社したてとか?」

「おや、俺に興味出ちゃいましたか?では自己紹介してあげましょう。全神経を集中させて下さいよ?」

「……ハイ、オネガイシマス。」

ハヤデラさん、ナルシストなのかもしれない。今までの質問を通して、今回のが一番テンションが上がっている。



そうして自己紹介とも自画自賛とも取れる、やけに長々とした紹介を受け終わった頃には、電話ディスプレイに映る通話時間はそろそろ四十分を迎えようとしていた。

私の質問はあんなに気だるく面倒くさそうに、なんなら最低な言い訳までして全力で逃げていたくせに、自分のこととなると嬉々として舌が回っていた。うん、やっぱり早寺さんはナルシストだ。

まぁ彼がこちらの相づちも聞かずに楽しそうに喋り続けるもんだから、私も話をおざなりに聞きながらひっそりと朝食を摂れたからある意味良かったけどね。今日のご飯はサラダとバナナとプリンです。わお、なんて健康的でしょう。



早寺秀人さん、二十四歳。身長百七十二センチのB型で福岡出身。

SV歴四年のそこそこベテランさんで、所属営業所は私の地元、とある関東の市周辺。若干十二名で構成される営業所の中では一番の若手で、担当店舗の売上上昇率トップを誇る、一番のやり手さんらしい。(全部自称)

「そして今回、営業所初どころか全国コンビニチェーン初の試みとなる、カインマートチェーン異世界支店計画の発案、企画、実践、そしてタイムリーな日本からのバックアップを、この俺自らが担当しているんです!どうです、俺のことよく分かったでしょう?」

「……え?」


失礼ながら途中から話半分、プリンと紅茶の見事なコンビに意識半分で、はいはいすごいすごいと話を流していたのだが、彼の自己紹介の最後の台詞は聞き捨てならなかった。

「私の異世界転移の件、全部早寺さんの仕業なんですか??」

「は?だからそう言ったでしょう?それに仕業と言うよりも御業と言ってほしいところですね。」

「マジですか……」


ぶっちゃけ、こんなに重要な事実をポンとお手軽に提示されるなんて、想定もしていなかった。

私の現状について何か手がかりくらいは得られないかなー、でもこの人素直に教えてくれなさそうだしなー、なんて構えで始めた質疑応答だったのに。まさか手がかりどころか超ド級の答えが聞けてしまうとは。

「これは話半分の態度でいちゃいけないやつだ……」

早寺さんが全ての元凶だというのなら、今までの疑問が全部解決するかもしれない。

この際だ、全部聞き出してやる!そしてさっさと日本に帰る方法を探すんだっ!!

新キャラSVの早寺さん、実は全キャラクターの中で最も詳細なプロフィールが決まっている人です。

主人公の誕生日すらもまだ決めていないのに……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ