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40 荒ぶる鷹のポーズって昔あったよね。

こんにちは、鈴浦亜里です。本日はお日柄も良く、空は見えないですがきっとお日柄も良いはずで、しかし私の心は思いっきりブルーです。

伝書鷹を使おう!って意気込んだはいいものの、早速初っ端から躓いてます。


伝書鷹を使う為には、まずメッセージを手紙形式で書かなきゃいけないらしいんだけど、そこから既に苦戦して早数刻。適当な便箋を引っ掴んでペンを握りしめた段階から、全く筆が進んでいない。

おかしいな?さっきの水仕事や掃除なんかの肉体労働よりもよっぽど辛いんだけど、なんでかな??


畏まった連絡の仕方ってどうしたらいいんだっけ?なんて台詞から始めるべき?手紙だから時候の挨拶から?尊敬語とか謙譲語とか使った方がいいよね??「いらっしゃいませ、こんにちはー!」とかは要らないよね???まだいらっしゃってないから意味ないよね??


敬語なんて仕事かデュッセニーでしか使ったことなかったし、それすらもテキトーだから、正しい言い方が分からない。

なんで学校の授業でしっかり教えてくれないの?訳の分からない数学や化学よりも、ビジネスマナーの方が将来役立つよね??おかしくない??

しかし今更ここで学校教育の文句を言っても仕方ない。そもそも学校でちゃんとビジネスマナーの授業があっても、私起きてたか不明だしね。



相当長い時間をかけてようやっと手紙を完成させた所で、よっこらしょと伝書鷹を用意する。

迷いすぎた結果訳が分からなくなって、長文の割に本題がやたら短いお手紙になってしまった。敬語もおかしい気がするし。

そしてなんかもう陽が落ちかけているような気がするけれど、気のせいだよね?樹々で薄暗いお外が更に暗くなってきてる気がするけれど、そんなことないよね?ね??


「で、丹精込めて書いた手紙を伝書鷹の嘴のところに置いて…?」

ノートのメモ書きとにらめっこしながら進める。魔術具使うまでの手順が長すぎて頭こんがらがりそう。

普通にポスト投函か、電話しちゃう方が明らかに早く済むのに…なんでデュッセニーに無いんだ……

「今時に手紙ってのもまぁ風情があるとも言えるかな?いや、やっぱ面倒だな…」


「これで後は…?あ、これか。えっと、『イシュ・ラ・ヴァルふぇ…』、じゃなくて、『イシュ・ラ・ヴァルファルジィーク』!」

伝書鷹さん、名前言いにくすぎない??誰だって噛むよこんなの。

なんとか言い直した瞬間に、魔術具特有の白い光がパチパチと光る。ここまで来るのも長かったなぁ…



しかしせっかく感慨に浸ったのに、白い光が静まっても大きな変化が見られなかった。反応なし。

「あれ?てっきり書いた手紙が里まで送られるシステムかと思ったのにな?これって要はLI○Eでしょ?」

え、せっかく頑張って書いたお手紙、無意味だった?何にも起きないんだけど??


変化のない伝書鷹の絵と、変化のない嘴の上の手紙を睨み続けて暫くして。

『アリサマレンラクアリガトウゴザイマス!キェーーー!!マジュツグハ……』

それまで沈黙を貫いていた鷹さんの絵が、唐突に喋り出した。

「え、なにこれ喋るの?オウム?え、キモ…」

嘴も眼も羽も何にも動いてない、平面でステンドグラスの鳥の絵から、やたら甲高い声だけが響いてくるのだ。気味悪い。しかも声がキンキンすぎて何言ってるんだか聞き取りにくいし。

そのキチガイさを文字で表すなら、半角カタカナが似合いそうだ。


『……サトノミナガタノシミニシテマス!!アシタノオヒルゴロデスネギェーーーーイ!!!』

「あれ、これよく聞いたら、私の手紙じゃないや。…長老さんから?」

キンキンと息つく暇もなく喋り続ける鷹さんに意識を集中させ続けて、ようやく何言ってるんだか分かってきた。


てっきり意味もない金切り戯れ言かと思ったら、長老さんからの返信を読み上げてたっぽい。

メッセージ内で名乗ってはなかったけれど、聞き覚えのある丁寧な文調と熱い魔術具マシンガントークを放つ人物なんて、一人しかいないよね。

そうか、手紙そのものを物理的に送るんだと思い込んでいたけど、手紙の内容を相手方の鷹が読み上げるんだ、これ。


その長老さんからの返信には、私が送った質問の答えも含まれていた。まぁ大半は、アイテムボックスの自慢と、明日から開く当店への期待の言葉で占められていたけれど。

私が送ったgdgdな長文よりも遥かに膨大な量の文章を、三回も繰り返し叫んだ所で、ようやく伝書鷹さんは大人しくなった。


ふぅ…正直うるさかった。キンキンと耳が痛くなるような大声で、休むことなく喋り続けてメモする隙もくれないし、なんだか所々変な叫び声が入ってたし…

うるさいしキチガイな割には使い勝手が悪いから、もう次は使わないかな?対面で話しに行った方がよっぽどいいや。


で、その内容がこちら。私の質問→長老さんの回答で纏めてみた。

喫茶店が出来たら来たい? → 是非とも!里の皆も、リーリャ達から話を聞いて興味津々です!

里まで宣伝に行きたいんだけど? → 里まで距離もあるし宣伝しなくても大丈夫です。もう既に皆行く気満々です!!

里から当店までの距離は? → エルフなら走って数時間。普段の狩りなんかよりはよっぽど近い場所にあるので、バンバン通います!

明日昼頃から正式にオープンします! → 楽しみですとても楽しみです私が一番に行きます私が商品買いまくります食べまくります楽しみで寝れません云々……



まるでどこぞの修〇のような熱血さに多少辟易しつつ、長老さんからの回答を反芻する。

立地は里から通える場所にあって、興味も持って貰えてて、今日のリーリャさん達にドリンクを奢ったおかげで商品の事前PRも出来ているっぽい。ついでに買い占めるって宣言してる太客もいる。


…これは、相当の来客と売上を期待していいのでは?!

手紙書くのに苦戦して、キチガイな金切り声の鷹さんに耐えた苦労も、無駄じゃなかったね!

これはますます、明日のオープンが楽しみになってきたよ。

荒ぶる鷹のポーズ、懐かしくて調べたら、もう十年くらい昔の出来事らしいです。時の流れにビックリです。

個人的にはこのキチガイじみた鷹さんはまだまだ流行中なのに……

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