彼女に触れる事
儀式が終わればこの部屋に長くいる意味もない
「カメイリ 寒くないの」
『寒くないよ〜この部屋あったかいね』
足元に冷気を感じて見下ろすと見てるこちらが寒々しくなるような裸足だ
鏡のように磨き上げられた白い石材に真っ赤になってしまった足が映り込み痛々しい これが寒くないものか
目に映った服も とても着古し所々擦り切れたもので到底元の色が何色だったかはわからないような代物で早く暖かく清潔な服を着せてやりたい
「従者よ」
「はい なんでしょうか聖者様」
傍で膝間付いていたままの従者に声をかける
「名はなんと言う」
「クロードと申します」
「クロード 替えの服と湯あみの準備を急げ」
「かしこまりました」
浴室に着くとクロードがカメイリの胸元の紐に手を伸ばし手早く解いた
見下ろすと服に隠れていた肌が露わになっている
「1人で入れる!外にいろ」
手をはたき落とす
布を掻き寄せる肌を隠し 衝動的に叫ぶとクロードは目を見開いた後 かしこまりましたと一言言うと出て行った
しかし、困った
風呂に1人で入るのなんていつ以来だろう 細々としたことなど覚えていないが彼女の体のことだから適当に済ますなんてもやもやする
まぁやっているうちに思い出すだろう
「カメイリ」
『なぁに』
「1人でお風呂はいれる?」
『お風呂って?』
そこからか…
「手についた汚れをふき取ったり水で洗うことがあるだろ?それを全身でやるような…まあ あったかい水浴び、かな」
『ふーん?』
たぶんわかっていないな
カメイリには見せた方が早いのかもしれない
「カメイリ やってみせるから覚えてね」
『うん!がんばる!』
風呂に入るのにがんばるのもなんだか面白いとは思う つい笑うとカメイリも同じようにくすくす笑った
肌を隠していた手を退かすと垢にまみれてはいるものの柔らかそうな肌が見える
…俺の理性もがんばらなきゃな
この時 この体が目に見えて興奮がわかる男じゃなくて本当に良かったと思った
「カメイリ 覚えられたかな」
『んー難しいねお風呂って』
「だよな…でもまぁ次からは一人で入って 解らないことがあったら呼んでね」
『うん!』
きっと一から十まで教える事になるんだろうな…
正直ここまで無防備だとときめきとか興奮より 罪悪感とこちらの羞恥心で死にそうだ
だが 他の奴に見られるくらいなら俺が全部やってやる
「カメイリ お風呂気に入った?」
『うーん…濡れちゃうのはやだけど、ぽかぽかするのは好きだよ』
「そっか またぽかぽかしようね」
『うん!』
嬉しそうな気配が伝わってくる かわいい
侍女達が仔犬を囲んでかわいいかわいい連呼していたのも今では少し理解できる気がする
無邪気な歓喜はこんなにも かわいい
「カメイリ起きてる?カメイリ」
服を着ているうちに彼女の気配が薄れるのを感じて声をかける
初めての事がいっぱいで疲れたのかな?
彼女が寝ていることを確かめてからそっと大きな鏡の前に立つ
白い肌着のみを身に纏った優しい顔の赤毛の女の子が映っている
彼女ならこんな風に笑うかなと目を細め口角を上げてみる
かわいい
きっと本物の彼女がしたらもっとかわいいのだろう
手を真っ直ぐ伸ばす 爪が当たる硬質な音がする
そのまま掌を合わせるようにつけているとだんだんと温もりを返してくれて 本当に彼女に触れていると錯覚できる
顔を近づける
翠の目が綺麗だ
そっと口付けた
その冷たさに現実を突きつけられる
凹凸がかみ合うはずも無く唇だけで無く鼻と顎に硬い感触が返ってくる
この柔らかな頬も、薄いまぶたも 細い体にも触れることはできる
でも俺は触れない まぶたに口付けることも叶わないし抱きしめることもない、たとえどれほど頑張ろうとその白く滑らかだろう背中は見ることはできない
…この体である限り
「ごめんねカメイリ」
この体を好き勝手使ってごめんね
そして待ってて いつか君の手を俺の手でとってみせるから




