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勇者、懲役1000年。 千年後、俺は勇者ではなく悪魔になっていた。  作者: 直助
第一章 千年の果てに

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第18話 重なるもの

 レグルスは、

 何も言わなかった。


 ただ――


 ミヅキを見ていた。



 ミヅキ・セレナリス。


 その名。


 月の王国。


 王家の末裔。


 黒い髪。


 揺れない視線。


 静かな魔力。


 ――似ている。


 誰かに。


 だが、

 言葉にはならない。


「ミヅキはね」


 リオラが軽く言う。


「歴史にすっごく詳しくてさ」


「私と違って、ちゃんと学問って感じ」


 肩をすくめる。


「私は現場だけど」


「この子は書物派」


 ミヅキは、

 何も言わない。


「レグルスとは、月の王国の遺跡で会ったの」


「私と同じで遺跡好きみたい」


「変に詳しいし……」


 少し笑う。


「結構、合うんじゃない?」


「お互いあんまり喋らないし」


「……そういうのは余計です」


 ミヅキが静かに言った。


 レグルスが、

 口を開く。


「ミヅキと言ったな」


 視線は変えない。


「君から、リオラよりも大きな魔力を感じる」


 一拍。


「この国には、今も賢者がいるのか」


 ミヅキの目が、

 わずかに動いた。


「賢者……ですか」


 少し考える。


「月の王国の時代には、

 そう呼ばれる人たちはいました」


 一拍。


「私の先祖――」


「三英雄の一人、大賢者がそうです」


 静かに続ける。


「ですが」


「王家がエクリシアへ移ってからは」


「その役割は、

 神に仕える聖職者へと変わりました」


 わずかに間。


「……あまり、好きではありません」


 顔を上げる。


「与えられた役割としての知は、

 自由ではないので」


 レグルスの視線が、

 わずかに揺れた。


 ――その言い方。


 重なる。





 記憶が、重なる。


 別の時間。


 別の場所。


「先生は」


 レグルスが言う。


「どうして戦うんですか」


 先生は、

 少しだけ笑った。


「この国の賢者たちは」


「少しずつ、

 魔力が弱くなっている」


 一拍。


「お前を除けば」


「私が最も強い」


 静かに続ける。


「そして――」


「私は、長くはない」


 風が揺れる。


「最期の使命だ」


「後に続く者たちの、

 道を作るために戦う」


 少しだけ間。


「……まあ」


 肩をすくめる。


「綺麗事を言えば、だがな」


 視線を細める。


「元々私は」


「王家の賢者という生き方が、

 好きではない」


 一瞬だけ、

 笑う。


「王族でなければ」


「私も異端者として扱われていたよ」





 部屋の静けさが戻る。


 レグルスは、

 ゆっくりと目を開けた。


 ミヅキが、

 こちらを見ている。


 静かな目だった。


「堕英雄アンタレス……」


 ぽつりと、言う。


「神と三英雄を裏切り」


「太陽の王国を滅ぼした存在」


 一拍。


「……悪魔」


 感情はない。


 ただ、事実を並べるように。


「銀色の髪だったと、

 伝えられています」


 視線が、

 わずかに動く。


「あなたと同じ」


 間。


「千年の封印」


「その期限が、

 ちょうど今の時代にあたる」


 レグルスは、

 何も言わない。


 ミヅキは、

 少しだけ首を傾げた。


「もし仮に」


「すべてが事実だとすれば――」


 一拍。


「辻褄は、合ってしまいますね」


 わずかに、

 口元が動く。


「……なんて」


 すぐに崩れる。


「神話なんて、

 だいたいそんなものです」


 軽く言う。


「後から都合よく、

 いくらでも変わりますから」


 だが――


 視線は外さない。


「それにしても」


「あなたからは、

 かなり大きな魔力を感じます」


 一歩も引かない。


「あなたは――」


 レグルスが、

 口を開いた。


「俺は――」


「そうだ!」


 リオラの声。


 割って入る。


「図書館も案内してあげてよ」


 空気を切るように言う。


「本だけじゃなくて、

 展示物とかもあるし」


 ミヅキを見る。


「図書館って、

 セレナリスの管轄でしょ?」


 少しだけ顔をしかめる。


「私、一人だとちょっと緊張するのよね」


 にやっと笑う。


「ミヅキがいれば安心」


 間を置かず。


「行こ行こ」


 ミヅキは、

 小さく息を吐いた。


 呆れたように。


 だが――


 特に否定はしない。


 いつものこと、

 という顔だった。


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