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第7話「……レンブラントを側近にしてること、とか?」

「――なぁ、アンソニーさんよ」


 別邸からの帰り道、アンソニーが送ってくれている。

 ”女の子だから”なんて殿下の前ではふざけていたが、彼の耳のないところで話をするためだ。大枠の話は済ませてきたがもう少し時間が欲しかった。


「なんだい? お嬢さん」


 ……こいつ、外に出てもこの呼び方かよ。

 まぁ、フランクって呼ばれても面倒と言えば面倒ではあるが。


「ディーデリックさ、俺の正体に気づいてると思うか? アンタから見て」

「正直なところ、さっきまでは100気づいていると思っていた。

 この街で冒険者やっててアンタの正体に行きつかない方がおかしいと」


 やはりそうなるよな。レンブラントはともかく、アンソニーのようにこの街に入ってさえいないような男でさえ調べられるのだ。ならばディーデリック・ブラウエルほどの聡い青年が気づいていないとは思えない。


「けれど、さっき君と手を繋いで部屋に入ってきた坊ちゃんを見ると……。

 俺にも分からん。あの人、たまに何を考えているのか分からなくなるんだよ。

 そこら辺は”陛下の血”なんだろうな」


 戦争で死なない程度に有能で、暗殺の的にされないくらいに無能か。

 的にされることも濡れ衣を着せられることもなかった故に玉座に座った男。

 実際、どんな人間なのかは全く知らないがなんとなく分かる。


「……レンブラントを側近にしてること、とか?」


 あいつ自身が言ってたことだ。自分は騎士団に嫌われていると。

 ちょうど”何を考えているか分からない”の実例になると思った。


「なんか聞いているのか? あの2人について」

「詳しいことは知らないけど、レンブラントが騎士団には嫌われてるって」

「なるほどな、俺は嫌ってはいないよ」


 半歩先を歩くアンソニーの表情は絶妙に伺うことができない。


「頭は下げたくないのに?」

「そ。頭は下げたくないだけだ。まぁ、他の連中が嫌う理由は分かるけどな」

「……聞かせてくれたりするかい、その話」


 他人の過去を根掘り葉掘り聞くのは趣味じゃないんだが、それ以上に気になる。

 ディーデリックが敬愛する騎士団と、重用する腹心。

 この2つに距離がある理由に興味がある。


「もう何年も前のことになるが、ディーデリックが襲われたことがあった。

 偶然にも居合わせて坊ちゃんを助けたのが、あのレンブラントだ。

 それで坊ちゃんがあいつを気に入って傍に置くようになった」


 何年も前となると当然ながらディーデリックの成人前か。

 レンブラントの方はいったい何歳だったのか。

 あいつの顔を見ていてもイマイチ歳が分からない。


「別に嫌われるような要素は無さそうだけど」

「ああ、ここまでならな。問題はあいつの素性と経歴が洗えなかったこと。

 家も育ちも親も、あいつがどこの誰なのかを示すものが何も」


 ――マジか。王族の側近でそれかよ。


「ヴィネアってミドルネームもマクシミリアンって姓も後付けだ。

 名前だけじゃ格好がつかないからと坊ちゃんが名乗らせた。

 いや、レンブラントって名前もそうか。あいつはレンと名乗っていたらしい」


 なっ???!!! そこまで?!


「……う、聞かない方が良かったかも」

「別に坊ちゃんとの付き合いが長い連中はみんな知ってることだ。

 それで、なんというかさ、仕込みじゃないかって疑いがね」


 そもそもディーデリックへの襲撃がレンブラントを忍び込ませるためと。

 あり得ない話ではないが……。


「何年前なんだ? 具体的に知りたい」

「だいたい6年くらいだったと思う。殿下が9歳で、あいつが14歳だったかな」

「えっ、あいつ、まだ20歳なのか?!」


 俺より7つも下なんて嘘だろ、それであの風格かよ。


「――自称だから怪しいところではあるが、背は伸びたと思うぜ。

 少なくとも不老長寿の怪物じゃない」


 ニヤニヤと笑うアンソニー・グッドゲーム。


「だから嫌われてるってよりは、疑っているって方が正しいのかな」

「……アンタは? 一番に疑ってそうだけど」

「疑ってたよ。でも、観察しているうちに大丈夫かなって」


 意外とふわっとしてるな。

 なんか徹底的に調べ上げる部類の人間だと思っていたけれど。


「それに騙されて痛い目を見るのは、坊ちゃんだろ?

 素性の分からない魔術師を抱えるリスクはみんなが警告したしな」

「……意外とドライなんだ?」


 アンソニーが静かにこちらを見つめてくる。


「かもな。ただ、俺はディーデリックを1人の男と認めた。

 そんなあいつがリスクを承知で特異な魔術師を隣に立たせた。

 なら後は見守るしかない。俺はそれが男だと思ってる」


 9歳当時はともかく、どこかでディーデリックを子供ではなく男と認めた。

 だから彼が選んだレンブラントに危険があろうともそれを飲むと。


「それに俺の直感としては、レンブラントは坊ちゃんを敬愛している。

 腹に何か抱えてはいるだろうが、坊ちゃんそのものを裏切るとは思ってない」


 なるほど、彼自身の読みも含めてディーデリックに任せていると。

 ……年下の子供、守るべき相手を”1人の男と認める”か。

 俺の人生ではまだ経験したことのない感覚だ。

 後輩との付き合いは疎かにしたまま冒険者をやめることになった俺には。


「ヤバい魔術師だなとは思ってる。けど、俺もアンタと同じ読みだ」

「だろ? でも、ここら辺がな、人によって違うからさ。

 レンブラントが騎士団に嫌われていると感じるのも当然と言えば当然よ」


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