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ほろほろ鳥も夢をみる  作者: Miki Kukiri
55/68

短詩集:夏風そだち 



□夏風そだち 





 をんなごころを

 ひろげてみれば

 さびしさつのる

 水中花 

 





 迷子の象の

 とぢこめられし

 玩具箱あり

 胸のなか 

 





 しあはせこぬと

 嘆くぶらんこ

 ただ揺れてある

 春の夜 

 





 *  *  * 





 義母(はは)の薬を

 たしかめてゐる

 待宵草の

 ひらく午後 

 





 夢よさめるな

 さめたら我は

 夜のさなかの

 枯れ小花(こばな) 

 





 やまを越えくる

 夏風あびて

 ことばかたらぬ

 父むすこ 

 





 *  *  * 





 金魚の尾ひれ

 追ひてまどふた

 こどもの夢に

 いまもまだ 

 





 わづかながらの

 しあはせもつて

 みづいり水晶に

 はひりたし 

 





 しよせんこの世は

 恋歌ひとつ

 うたひ終はれば

 またひとり 

 





 *  *  * 





 猫が寝がへり

 鈴の音ちろり

 夢はさめたか

 朝顔も 

 





 想ひ秘めたる

 卵の夜を

 もうすぐ春と

 見あげ泣く 

 





 母をなくせし()

 夢を見む

 紙風船のやうな

 夜 

 





 *  *  * 





 通りすぎゆく

 影に加はる

 ふるさとの養母(はは)

 いかならむ 

 





 うつつごころの

 うつろとなりて

 母の手こひし

 (らい)の夜 

 





 かかと減らせし

 つめたき靴が

 勿忘草(わすれなぐさ)

 訪ねゆく 

 





 *  *  * 





 老いた姿を

 恥ぢたる歌が

 水無川(みづなしがは)

 くだりくる 

 





 冬の虹みて

 愛するひとを

 さがしさがして

 時の果て 

 





 花のしかばね

 重なる夜を

 位牌ぬすみし

 女衒(ぜげん)ゆく 

 





 *  *  * 

 




 街のさなかに

 居場所なけれど

 胸の火のそば

 生きてゆく 

 








    夏風そだち 了 






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