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ほろほろ鳥も夢をみる  作者: Miki Kukiri
53/68

小品:戒め 






 子どもが(へそ)をあらはにして眠ることを戒める言葉は多々あらうが 私の故郷の***地方には、次のやうな云ひ伝へがあつた 


 眠つてゐる子どものそばへ 毛に螺鈿のやうな光沢をもつ 鷺に似た鳥が 一羽やつてきて その子の臍を 長い(くちばし)でつゝく そして内から ちひさな雨蛙ほどのこびと(・・・)をほじくり出す 出臍であらうが 引つこみ臍であらうが 関係はない 鳥はこびとをくはへて 静かに飛び去る…… 


 こびとを連れていかれてしまつた子どもは どうなるか? 


 なんと 目をさましたあとは品行方正 言葉乱れず 姿勢を正し 高い志をもつて 決して揺らがず 辛抱強く 弱音をはかず 苦しむ人には優しくしてやり 邪悪な者には断じて退かず 慕われ頼られ尊敬され 富は殖え 地位は上がり 親に孝の心で尽くし 伴侶に和の心で接し 子には正義を訓へこむ 


 その名は広く轟きわたり されど慢心することはなく 世のなかがその人の放つ光で浄められていき 病の素はおそれ多さから滅んでいき 貧はなくなり 子はたくさん生まれ 年寄りは感謝して天寿を行き過ぎるほど全う 世は栄え栄えてとゞまるところなし 


 よいこと尽くめではあるまいかと思ふであらうが やがてその人も 陽が西に落ちるやうに臨終の床につく そして海をつくるほど涙を流すのである 


 自分はこんなふうに生きる人間ではない これは自分の人生ではない いつたい自分はどこへ行つてしまつたのか……と 






            了 






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