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都々逸集:柄杓星
□柄杓星
夢で逢へればうつつはいらぬ
嘘をついてもみるこころ
恋の流れに身をなげだして
朝な夕なと泳ぎたし
ぬしはお陽様わし日時計よ
ひより申しで時わすれ
* * *
恋の嵐も涙の雨も
ひと夜かぎりの夢のなか
どこへともなくせきたてられて
めぐりつづける初の恋
あはずなりても想ふてゐると
八重の櫻の散りそむる
* * *
あきれ果てたとそつぽをむいて
まるい美人にかどがたつ
ひとを待つ夜の袖濡れたれど
月のすがたに雲はなし
風もなき夜に漂ふてきた
誰の夢やら心やら
* * *
賽の河原で石だけ積んで
ただくりかへすよな恋の日々
夢のさなかでつまんだ花と
香り似てゐる恋ごころ
しばらくぶりの恋ささやけば
雨の神さま雲隠れ
* * *
清水の
湧き出るやうな秘めたる恋を
掬ひとどけよ柄杓星
了




