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ほろほろ鳥も夢をみる  作者: Miki Kukiri
34/68

小品:新しいもの




 新しい恋人がほしいわ、彼にはもうあきちゃったの。


 友人Aが厚い化粧をおとしながら、疲れた顔で、(わたくし)に言いました。


 友人Bは、新しい仕事がほしいよと言い、友人Cは、新しい車がほしいと言いました。




 私は、ほかの友人たちにも訊いてまわりました。


 もしも、新しいものをひとつもらえるとしたら、なにがほしい? と。




 答えはだいたい予想通りで、船、家、はたまた宝石……。


 新しい地位、新しい組織、新しい法律などと望んだ人には、やはり先のことまで考えるのを習慣にしているらしい雰囲気があり、感心させられました。


 かわった答えとしては、新鮮な血、いけにえ、かたきの魂などがありました。




 多くの国をめぐりながら、おなじことを問うと、さまざまな答えがかえってきました。


 しかし、どれもこれもささやかな望みで、かわいらしい……かわいらしすぎるのです。


 地上に生きるものの限界とでも言うべきでしょうか、百年たとうが、千年たとうが、あまりかわらない答えばかりで、やれやれ、ひまつぶしにもなりません。




 おっと、まだ友人がのこっていました。


 幼い女の子で、毎夜私にむかって窓辺で祈りをささげてくれるのです。


 私を神さまだと思っているのかもしれません。私も、この子だけは、特別な愛情をもって見守ってきたのでした。




 今夜も窓辺にいる女の子に、私はそっと問いかけてみました。


 新しいものをひとつもらえるとしたら、なにがほしい? と。


 彼女は、純朴そのものの顔だちに、にっこりと笑みを浮かべました。


 そして、小さな赤い唇で、答えをささやきました。




 私は、この特別にかわいらしい友人の望みをこそ、かなえてあげようと思いました。


 がんばって、なれ親しんだ道を逸れ、思いきり地球に体当たりをしました。


 私の体と、地球から、たくさんのかけらが、虚空にむかって飛びだしました。


 岩のかけらと、愛のかけらが……。




 ああ、あの純朴でかわいらしい彼女は、こう言ったのです。


 新しいお月さまがほしいわ、あなたにはもうあきちゃったの。





            了 






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