32/68
小品:めし
邪悪な野望をいだく僭王には渡すまいーー
巫女は自らのいのちとひきかえに、宝玉の力を大神殿の奥から未来へととばした。
世界を八十の回数、征服しても減ることがないという、神秘的な力である。
あきらめきれぬ僭王は、生まれかわりを百に千にくり返して、宝玉の力を追った。
そして世に現れるたび、ただひたすら飯を食らいつづけた。
巫女のつかった術は、いずれかの時代のいずれかの米ひと粒のなかに、宝玉の力を移すものであったからだ。
見よ、今日も僭王は子どもの姿で憑かれたように飯を相手にしている。
そのかたわらでは、母親が、よく食べるわが子をいとしげに見守っている。
遠い過去に大神殿の巫女として生きたことも忘れて……。
了




