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ほろほろ鳥も夢をみる  作者: Miki Kukiri
15/68

MAJO 2017, Ⅱ





 (いぬ)の顔

 (しま)る気のして

 夏となり 




 消耗品(せうもうひん)たる

 恋心(こひごころ)たちよ

 五月(ごぐわつ)の雨 




 絵蝋燭(ゑらふそく)

 をとことけゆく

 憎悪(ぞうを)かな 




 先妻を

 弔ひてかへり

 欠伸(あくび)ひとつ 




 半過去形をつかふわが恋

 月()けゆく 




 流れ星を

 祖父の棺とともに

 焼く 




 苺摘むこの手に

 (きよ)めえぬもののあり 




 咳をする音

 闇にあり

 星赤く 




 異邦人の捨て去りし子蛇

 華の香をかぐ 




 未練つぶやく玩具ひろふや

 初夏の(うみ) 




 冷奴(ひややつこ)つつく

 悔しき曲芸師 




 坂下にすまふ

 時計修理工の机の()

 我が母の小指 




 日時計の

 (とき)をさすごと

 恋ありぬ 




 キエティスム説く奇術師や

 (べに)つけて




 縄梯子おりる天使や

 夏(きざ)す 




 いのち断つ老姉妹

 仔鯨(こくぢら)が深く潜るやうに 




 色のよい

 渦に月さす

 立夏かな 




 ひと殺し

 通るとき咲く

 白躑躅(しろつつじ) 




 鬼籍なるひとの目覚まし時計も

 きままかな 




 藍染あゐぞめの布裁ちてゆく

 恋疲れ 




 オリーブ油を熱しつつあり

 彼方で星うまれゆく(とき) 




 影あゆみ

 雛罌粟(ひなげし)こぼつ

 月夜かな 




 狗ひとつ吠えて

 神占(しんせん)うらがへり 




 わが影の

 ほほとわらひて

 しづもるる 




 鬼宿日(きしゅくにち)えらび

 わかれの判を捺す 




 刺青(しせい)彫られゆく

 少年の()

 初夏の(そら) 




 妻の時計

 氷しやぶるを

 好みけり 




 梅雨おもし

 ガラス隔てて

 恋きゆる 




 書をふせて

 ひとおもひたる

 初夏の夜 




 梅雨空や

 恋心ひとつ

 壜のなか 




 目ざめぬ母の

 脈の平和よ

 君影草(きみかげさう) 




 (すずり)の海に

 棲むものをらず

 梅雨の入り 




 小石踏み

 もどる(たま)あり

 遠き(らい) 






           ( つづく )

 







・鬼宿日=嫁取り以外すべてにおいて大吉の日

・君影草=鈴蘭


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