MAJO 2017, Ⅱ
狗の顔
緊る気のして
夏となり
消耗品たる
恋心たちよ
五月の雨
絵蝋燭の
をとことけゆく
憎悪かな
先妻を
弔ひてかへり
欠伸ひとつ
半過去形をつかふわが恋
月虧けゆく
流れ星を
祖父の棺とともに
焼く
苺摘むこの手に
浄めえぬもののあり
咳をする音
闇にあり
星赤く
異邦人の捨て去りし子蛇
華の香をかぐ
未練つぶやく玩具ひろふや
初夏の湖
冷奴つつく
悔しき曲芸師
坂下にすまふ
時計修理工の机の上の
我が母の小指
日時計の
刻をさすごと
恋ありぬ
キエティスム説く奇術師や
紅つけて
縄梯子おりる天使や
夏兆す
いのち断つ老姉妹
仔鯨が深く潜るやうに
色のよい
渦に月さす
立夏かな
ひと殺し
通るとき咲く
白躑躅
鬼籍なるひとの目覚まし時計も
きままかな
藍染の布裁ちてゆく
恋疲れ
オリーブ油を熱しつつあり
彼方で星うまれゆく刻
影あゆみ
雛罌粟こぼつ
月夜かな
狗ひとつ吠えて
神占うらがへり
わが影の
ほほとわらひて
しづもるる
鬼宿日えらび
わかれの判を捺す
刺青彫られゆく
少年の裸や
初夏の宙
妻の時計
氷しやぶるを
好みけり
梅雨おもし
ガラス隔てて
恋きゆる
書をふせて
ひとおもひたる
初夏の夜
梅雨空や
恋心ひとつ
壜のなか
目ざめぬ母の
脈の平和よ
君影草
硯の海に
棲むものをらず
梅雨の入り
小石踏み
もどる魂あり
遠き雷
( つづく )
・鬼宿日=嫁取り以外すべてにおいて大吉の日
・君影草=鈴蘭
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