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第34話:教会を再生するために。

閲覧ありがとうございます( *¯ ꒳¯*)

Side:ルウ・ブラン



 うっひょっひょぉ!

 暴走した俺は止まらねぇぞ!

 何がなんでもこの教会を完璧に更生させて感謝されてやるんじゃい!


 早速俺はまずこの環境から変えてやろうと、さまざまな物事に詳しいアッルンガーレおじさんを連れて教会の周囲を探索することにした。


「…アッルンガーレおじさん、どうでしょう。何か、ここでの生活に使用できそうなものはありますか…?」


 少し裕福な腹肉を抱えるアッルンガーレは教会の裏庭を見て少し考えるような仕草をしてから指をさす。

 

「…ここ、使えるかもしれない…」


 アッルンガーレの丸い指先が指すのは、壊れた井戸。井戸蓋を取り、覗き込むと微かに水が溜まっているのが見えた。


「…ブランちゃん、覚えてるかい? …教会の右手、畑があった。あそこは土が枯れているけど…土さえどうにかできれば、水があるから農業ができる…」


「…ですけども、土はどうすれば」


「…大丈夫。灰を散布すれば…土は生き返る。自給自足が、可能になる…」


 聞けば、灰を畑に撒くのはソテー村で農業をやっていた時によくやっていた方法らしい。

 どうやら偶然にもソテー村の痩せた畑とこの荒れ果てた土壌はよく似ているとのこと。


 ふむふむ。まあ自給自足ができるようになるまでは時間がかかりそうだから長期の課題ということで。

 ただし、飲み水なんかに使えるかもしれない井戸は、早急に滑車をつけるなり色々と修復、改善が必要だな。


 次、子供達の治療の前に何かやっておくことはないか?

 

 教会内の掃除――傷病者をベッドから動かせないので却下。

 食料調達――買いに行く金がない。ソテー村からの備蓄がちょびっとだけあるからそれで我慢。

 

 てかそもそも外科手術なら徹底した衛生管理が必要だけど、今回はアイテムでパパッと直すからな。菌とか入る余地もない。

 適当だけど、さっさと治してしまおうか?


「…アッルンガーレおじさん。他のーー大人の村人の方々を教会内によんでいただけませんか? 傷病者がいまして、その治療のお手伝いをお願いしたいんです」


「…わかった。呼んでくる…」


 行動は早い方がいい。

 さあ、パパッと治すぞ!



 ――教会内。

 改めてベッドの上にいる傷病人の人数と容体を把握する。

 ガハハ、ワールドマップを使って教会内のキャラクターを洗いざらい確認できる俺にとってこの作業は屁でもない作業なんですわ。


 で、とりあえず7名の子供の確認が取れたので報告しやす。


 ――セルベル、14歳男。

 苦しそうにベッドに眠るボッサボサの茶髪、痩せ細った身体に粗末な服。窪んだ目元の青目の少年。

 こいつは[栄養失調]だとよ。


 ――アベニウス、12歳男。

 こちらもベッドに眠る褐色肌の黒髪短髪少年。セルベル同様粗末な服に痩せ気味の身体。

 ふむ[精神負傷]に[栄養失調]か。


 ――クラーラ、12歳女。

 うっすらと意識がありそうな虚な目をしている、金髪を短くまとめた、額に玉のような汗を浮かべる少女。正直言ってこの中では最も容姿端麗で、頬が痩けて体調不良でさえなければどこかのお嬢様みたいな雰囲気すらあるな。

 んで、こいつは[栄養失調][視力低下][発熱]。


 ――ナンヌ、6歳女。

 黒に近い茶髪を肩まで伸ばした、おとなしそうな子。ベッドの端に腰掛けたままあまり動くことがないが、この子は他の子と違ってほっぺたもぷっくりしていて健康そうだな。

 付与効果の欄にも何もないから、多分それなりに健康体なんだろう。


 ――リュバン、5歳男。

 丸顔で黒い巻き毛が特徴の、男児だな。

 今は寝ているから大した特徴もあげられない。

 状態は[下痢][栄養失調]ね。


 ――ヤシヌ、5歳男。

 オレンジ色に近い髪色のこの子もさっきのリュバンと同様5歳なのか。

 その割には落ち着いた顔立ちだからもうちょっと年上に見えるな。どうやらこの子もナンヌ同様目立って不健康なところはないみたいだ。

 どういう差なんだろうな?

 子供には栄養あるご飯が与えられているみたいな法則でもあるのかね。


 ――ミロネ、1歳女。

 そして最後がこのミロネっていう、新しめのベッドで眠りこける女の子。お子ちゃま特有の産毛みたいなふわふわ黒髪が可愛いな。

 この子も若干の栄養失調以外に健康的な異常がないみたいだ。


 …とりあえず、意思疎通ができそうなナンヌ、ヤシヌあたりに挨拶しに行ってみるか。

 二人ともさっきから教会内で空中を指でなぞる俺の姿を無言で凝視してて草なんだよな。


 俺はとりあえずナンヌの座っているベッドの方へと足を運ぶ。教会の大きさはせいぜい小学校の体育館の半分程度。

 ルウの小さな歩幅でも数歩歩けば、ナンヌが眼前に迫る。


「…えっと、もしもし? ルウさんの声が聞こえていますかね…?」


 するとナンヌは焦点の合わない、どこか虚げな無表情で口を開く。


「…だれ? どうして顔、出さないの?」


 うお、質問を質問で返してきやがった……と思ったけど、返事したってことは一応聴こえてるって答えているようなもんか。


「…えっと、ルウさん、名前はルウ・ブランと言います。…顔もお見せしますので…んしょ」


 俺はこのナンヌという6歳の少女に顔面マウントをすべく、顔が見えやすいようにわざわざしゃがみ込み、ゆっくりとフードを外す。


「……」


 後光すらさしてきそうなルウの顔を見たナンヌは虚げな瞳を大きく見開き、口を半開きにして、まるで何か綺麗な宝石を見つけたかのような驚きと感嘆に満ちた表情をした。


 どうだ、俺の嫁の超ウルトラスーパーハイスペックな御尊顔は。

 綺麗すぎて声も出ないってか?

 がっはっは!


 次の瞬間、ハッとしたようにナンヌは半開きの口を動かすとーー。


「…妖精さん?」


「…えっと、違いますけども」


 おい!

 そのやりとり何回も見たことあるから。

 ホーク、アリに続いてこの女の子も俺の容姿を見て『妖精さん』って、どれだけ俺の容姿に対する表現のレパートリー少ないんだよ。


「…あ、ご…ごめんなさい」


 いいってことよ。

 まあ正直、容姿に驚いてもらってるだけで俺の承認欲求は満たされてますんで。


「…それで、どうして、ここにきたの…? わたしみたいに、捨てられたの…?」


 うへぇ、重いわい!

 子供がそんなこと言っちゃダメ。

 鬱々しいことは俺たち大人が言って飲み込むべきだよ。


「…ルウさんは、祭司様に用事があって来たんです」


「…祭司さまに…?」


「…ルウさん、住む場所がないで、この教会で暮らさせてくれないかと、祭司様にお願いをしにきたんですよ」


 俺がそういうとナンヌは目を見開きーー。


「――出ていって!」


 その小柄な身体からは信じられないほどの大きな金切り声をあげて俺を拒絶した。


「…――フゥ、――フゥッ」


 喉を笛のように鳴らしながら鋭い目つきで俺を威嚇するナンヌ。


「…ちょっと待ってください。何か誤解していーー」


「――うるさいッ!」


 俺が必死に誤解を解こうとするも、聞く耳もなく怒号が飛ぶ。


「…祭司さま、わたし達のせいでいつもボロボロ……これ以上増えたら…祭司さまも病気のお姉ちゃんたちも…うぇっ…えっぐっ……うわぁぁああーー……」


 ま、ちょっ、泣くなって!ほら、ベロベロばぁ!って、このルウ・ブランの見た目でそんなことできるはずもなくて…えっと、これ俺が悪いのか?


 あーちくしょう、とりあえず理解した。

 急にキレ出して何事かと思ったが、こいつは常日頃疲れ切った様子の祭司を見て、俺が祭司の世話になったら今度こそ祭司が限界を迎えちゃうと思ったわけだ。

 んで、祭司がいなくなればこいつら全員生きていけなくなるから、そうならないために俺のことを全力で拒絶したんだな。


 しっかし、泣いてる子供をあやすのはあいにく得意ではなくてね…。

 言葉だとまた遮られかねないし、こうなりゃ強行突破だ。

 行くぞ、俺の必殺――。


「…ナンヌさん、大丈夫ですから。どうか落ち着いて…」


「…えぐっ、ひぅ…」


 俺はナンヌの両の手を優しく包み込み、ナンヌが何も抵抗しないことを確認した瞬間――。


「…ひっぐっ…――うぇ?」


 ナンヌの背中にそっと、しかし素早く手を伸ばし、その小さな体を抱き寄せた。

 突然の行動にナンヌの体は硬直する。


「――なに、いや、はなして!」


「…大丈夫ですから」


 俺は柔らかい声でナンヌの耳元に囁きかける。

 そして背中を優しく撫でてやると、ついにナンヌはおとなしくなった。


「……」


「…ありがとうございます。ナンヌさん。…ちょっとだけ、ルウさんの話を聞いてくれる気になりましたかね…?」


 ナンヌは俺の腕の中にて無言で頷いた。


「…まず、一つ。…ルウさんはナンヌさんや祭司様の味方です。決して敵ではないですし、迷惑も極力かけません」


「…そう…なの?」


「…えぇ。ルウさん、ここに住まわせてもらうために、この教会のいろいろなことをお手伝いしたいと言いに来たんです」


 俺は柔らかい笑みを浮かべたまま、言葉を続ける。


「…助けてもらいたいという思いが半分、助けになりたいという気持ちが半分で、ここにいるんですよ」


「…たすけるって、どうするの…。祭司さまのためにわたしたちを…捨てたりする…つもり…?」


「…まさか。そんなことは断じてしません。…先ほど言いましたよね? …ルウさんは、ナンヌさんや祭司様の味方だと。どんな悩みだって、解決して差し上げますよ」


「…そんなの、無理。みんながんばってきた。その結果がこれ。わたしたちはなにもできない……祭司さまもお姉ちゃんたちもみんな…弱いから」


「…どうでしょうね。こう見えてルウさん、めちゃめちゃ強くて、すごくて、皆さんの病気、治しちゃうかもしれませんよ?」


 俺は小さく力こぶのポーズをとる。


「……嘘つき」


「…嘘つきと呼ばれようとかまいませんよ。ルウさんは、ルウさんのできることをするまでですので」


 俺はそういうと、ナンヌを抱く腕を解き、微笑みながら立ち上がった。


「…落ち着きましたね」


 ナンヌの顔には跡こそあれど、瞳を潤す涙はとうにとまっていた。

 それどころか瞳からは強い力が感じられーー。


「……嘘つき、お姉ちゃんたちを助けて。…おねがい」


「…えぇ。言われずともそのつもりですので」


 よーし、調和完了!

 抱きしめる作戦は、もちろん今は亡き変態村長バケットの受け売りだ。

 俺はあの時、気がついてしまったのだ。抱擁の可能性に。

 しかし実践する相手が男であるのは俺が許さないし、女の人であっても抱擁を試せるような雰囲気に持っていくなんて無理だった。

 だから今回、俺の新たな必殺技である抱擁が試行できて、なおかつ効果を実感できて本当に良かったと思う。


 …変態村長。

 おまえはどうしようもない変態だったが、俺を好きになったこと以外悪いやつではなかったぞ。

 これからもおまえから学んだことは俺の中で生き続けるからな…!


 涼しげな顔の裏でそんなことを考えつつ、俺はナンヌから振り返って、もう一人の子供――ヤシヌの元へと向かう。

 

 俺が近づくや否やヤシムは口を開く。


「ルウ・ブラン、さん。聞いてたよ。ぼくたちを助けるんだって?」


 声変わりも程遠いが、どこか知的な雰囲気を纏った声。

 んだこの生意気そうなガキは。

 くらえ、脳殺仕草『カーテシー』!

 俺はカーテシーのしぐさをとる。ホークを見惚れさせた個人的最高位の可愛いしぐさだ。


「…どうも、ルウ・ブランです」


 どうだ!おまえも俺の姿に見惚れて言葉を失って脳みそを破壊されろ!


「うん、よろしくね」


 ぬぁにぃぃい!?

 こんなガキに、俺のしぐさが効かない…だと…。


 もう一回、別のしぐさをーー。


 俺がヤシムに対抗すべく新たな作戦を考えようとしたその時、教会の入り口から大人数の足音と共に声が聞こえた。


「…ブランさん。連れてきた、全員」


「…あ、はい」


 ちくしょおおお!

 とりあえず治療だ。

 この勝負は負けられない、絶対に後で一泡吹かせて俺のこと見惚れさせてやるからな!

 

 覚悟しとけよ、ヤシム!


「…では、教会の修繕といきましょうかね」


⬛︎ーーーーーーーーーーーーーー

・アイテム/【精霊の髪】

〈説明〉

アルハント・セリアで拾うことのできる精霊の髪の一本。

麗しく艶があり、非常に丈夫なであるため、武具の接合などに使用される。

ーーーーーーーーーーーーーー⬛︎


ルウ「…髪の毛を防具に使用するって、よくよく考えてみたらすごい話ですよね。…ルウさんも髪は長いですけども、似たような使い方ができたりするのでしょうか……? いや、やっぱりやめておきましょう…」

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