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九話 陽キャでも人間関係で悩むことはある



「さて、次は一体どうしたもんかねえ……」

 前回同様、夕日が差し込む廊下を小日向と二人で歩きながら、俺は溜め息混じりに口を開いた。

「なかなか難しいよね。ツーショット写真なんて。あたしもそんなに撮る方じゃないし」

 隣りを歩く小日向が、半ば独り言のつもりで呟いた俺の言葉に、苦笑を浮かべながらそんな反応を返す。窓際を歩く小日向の横顔が茜色に彩られていて、まるで印象派の絵画のようだ。

「え。小日向さんみたいな陽キャなら、ツーショット写真なんてしょっちゅう撮ってるもんじゃないの? それこそ毎日がパーリー! みたいなノリで」

「あたし、そこまですごい陽キャってわけでもないんだけどなあ……」

 と、小日向は謙遜じみたことを言いつつ、

「でも、女の子同士だったら普通によく撮るかな? その代わり男の子とはほとんどないけど。そもそも、男の子と二人っきりで遊んだことなんて一度もないし」

 へえ。なんか意外だ。てっきり小日向なら、異性とも平気でツーショット写真を撮っていそうだと思っていたのに。けっこうガードが硬いのだろうか?



 ──ん? ちょっと待てよ?



「それって、この間俺と行ったバッティングセンターが、男と初めて行った場所ってことにならないか?」

「うん、そうだよ。男の子と二人で遊んだのは、望月くんが初めて」

「……いいのかそれ? 別にデートってわけじゃなかったけど、そういうのは俺なんかよりも好きな奴と一緒に行った方がよかったんじゃないか?」

 なんか小日向の大切な初めてを奪ったようで、申しわけなく思えてきたのだが。

 全然関係ないけど、女の子の大切な初めてを奪ったって響き、なんかエロいよね。あ、キモイですかそうですか……。

「あたし、そういうの気にしない方だから。それに好きな人なんていないし」

「そ、そうか……」

 それなら別にいいのだが。後々文句を言われても困るだけだし。

「じゃあ小日向さんも、こういうのはあんまり慣れていない感じ?」

「そうだね~。男の子も女の子もみんな一緒に集まって写ることはあっても、男の子と二人だけっていうのはないねー」

「それってなんで? 別に男が苦手ってわけじゃないんだろ?」

「う~ん。当たらずとも遠からず、みたいな?」

 えっ!? じゃあこうしている時間も、実は苦痛だったってことか!?

「あっ。ご、誤解しないでね! 男の子が苦手と言っても一部の人だけだから!」

 俺が不安げにしていたのを見てか、小日向は慌ててそう弁解して、

「なんていうか、肉食系って言うの? ああいう積極的な男の子って少し苦手なの。あたしがギャルっぽいせいもあるんだろうけど、昔からそういった人に声をかけられるのが多くて、中にはすごく強引に迫ってくる男の人もいたりして……」

 ああ、確かにそれは嫌だな。人によっては自慢話に聞こえなくもないが、これまでの付き合いで小日向がそういう人間でないのはよくわかっている。むしろ見た目よりずっと清楚な方だ。

 そんな小日向にしてみれば、オラついている男なんて恐怖の対象でしかないだろう。

 その点だけで言うなら、俺は全然問題ない。



 なんせ、自他共に認める草食系だから。



 むしろ同性との友情すらシャットアウトする絶食系なので、女の子に迫ることなんて絶対にありえない。その内、即身仏クラスまでレベルアップする可能性すら秘めている。それもうとっくに死んでますがな。

「だから、なるべく肉食系の男の子とは深く関わらないようにしているんだけど、逆に望月くんみたいな人だったら平気なんだよね。安堵感があるって言うか、警戒する必要がなさそうって感じで」

 それは、人によっては勘違いしてしまいそうほど魅力的な言葉であるが、ところがすっとこどっこい。その程度の言葉で惑わされる俺ではない。

 なんてったって、こちとら現役ぼっちなのだ。人の視線や言葉に敏感なぼっちは、他人のなにげなく呟いた言葉の真意を探るのに長けているのである。

 そんな俺だからこそわかる。今しがたの言葉に、深い意味はないのだと!

「あー、死ぬほどどうでもいい奴ってもはや路傍の石となにも変わらないもんな。いてもいなくても同じっていうか」

「いやあたし、そういうつもりで言ったわけじゃないんだけど……」

 ちょっと引き気味に微苦笑する小日向。

 あれ? おかしいな。かなり正鵠を射ていると自負していたのだが……。

「そうじゃなくて、ほら、望月くんっていつも落ち着いていて良識もあるから、あたしも安心して一緒にいられるっていう意味だよ。他の男の子だとなかなか気が休まらない時が多いから……」

「ああ、そっちの意味か……」

 確かに人畜無害という意味において、俺ほど最適な者はいないだろう。なんの自慢にもならないが。

「あたしにしてみれば、どうしたらそんな卑屈に解釈できるのかが不思議だよ……」

「ぼっちなんて大抵卑屈なもんだよ。基本他人に対して警戒心が強いから、どうしても言葉の真意を探ってしまうんだ。それがなにげない一言でもな」

「けど、それって疲れない? それじゃあ、なかなか信頼関係も築けないよ?」

「だからぼっちなんだよ。今のはあくまでも一例で、すべてのぼっちがそうとは限らないけどな」

「……望月くんも、いつもそういうことを考えながら生きているってこと?」

「まあな。俺の場合は人間関係が面倒くさくなって、それで自分からぼっちになったようなもんだけど」

 おっと。ちょっと自分の話をし過ぎただろうか。こんな話をされても、リア充の小日向にしてみれば至極どうでもいいだろうし、反応に困るだけだろう。

 と思いきや、小日向の反応は意外なもので、

「そうなんだ。なんだか、少しだけ羨ましいな……」

 小日向は羨望とも憂いとも言えるような眼差しを俺に向けて、そう囁くように呟いた。

う、羨ましい? 俺の一体どこが?

「いや、小日向さんみたいな陽キャの人気者が、スクールカースト最底辺である俺が羨ましいとか、正気を疑うレベルなんだけど。え、冗談だよな?」

「冗談とかじゃないよー。けっこう本気だよ?」

「えー……」

 マジでかー。正直理解に苦しむわー。

 だって、こんなぼっちが羨ましいとか普通にありえんだろ。しかもあっちはだれもが認める超ハイパーミラクルリア充なんだぜ? どう考えてもおかしいだろ……。

「あ、ごめんね。突然こんなこと言われても困っちゃうよね……?」

「んー。まあ……」

 否定はせず、曖昧に頷く俺。

 実際困惑しているのに変わりはないので、嘘を言っても仕方がないと思ったのだ。

「……あのね、確かにあたしって周りからしたらリア充に見えるとは思うんだけど、これはこれでけっこう大変なんだよ? 望月くんが言うほどリアルが充実しているわけでもないし……」

「充実してないって? なにかよほど気に入らないことでもあるのか?」

「気に入らないって言ったらなんだか語弊がありそうだけど……。でも、うん。不満はある方かな?」

「けどそれって別に普通のことじゃね? 人間だれしも不満の一つや二つあるもんだろ」

 よくリア充リア充と口にしてはいるが、真実の意味でなんの不満も不安もなく人生を謳歌している奴なんて、そうそういるはずがない。

 人間である以上、ストレスを抱えずに生きていくなんて不可能なのだから。

「それはそうだけど、でもその不満の大きさって人によって違うものでしょ? それこそ他の人には些細なことでも、本人にとってはすごく重大なことだったりさ」

「えーと、つまり小日向さんが抱えているその不満っていうのも、そこそこ重大だってことを言いたいのか?」

「あたしにとっては、ね……」

 そう言って、どことなく表情を翳らす小日向。

 うーん。ひとまず、俺なんかでは預かり知らぬ苦労をしているのだろうってことだけはわかったが……。

「やっぱ、俺を羨む理由がわからんな。だってぼっちなんだぜ? 俺は進んでぼっちになった方だから稀有なタイプだとしても、普通なら友達のいない奴なんてみんな嫌がるもんだろ? しかも小日向さんみたいな友達の多い奴が俺なんかを羨ましがるなんて、まるで意味がわからん」

「そこだよ」

「……? そこ?」



「友達が多いってところ」



「………………?」

 いや、余計わけがわからないのだが……。

 友達が多いって、こいつらリア充にしてみれば重要なステータスなはずだろ? それが不満だとか、一体どういう意味だ?

「望月くんには、少しわかりづらいかな……? なんていうか、友達が多いと、その分自分の時間が減ったりするものでしょ?」

 首を傾げる俺を見て、そう苦笑しながら説明する小日向。

 ふむ。少しずつ言いたいことがわかってきた。

「まあ、相手に合わせようとは思えば、当然そうなるわな」

「だよね。でも、友達を優先しようと思ったら、どうしても自分の時間を犠牲にするしかなくなるじゃない? 本当はあたし、もっとアニメとか漫画とか自分の趣味に時間を使いたいんだけど、なかなか、そういうわけにもいかなくて……」

「だったらそう言えばいいんじゃないか? いや、そんな簡単にはっきりとは断れないとは思うけど、用事があるとかなんとか適当言って誤魔化したりとかさ」

「今まで何度か断ったことはあるんだけど、いつも押し切られちゃうっていうか、うまくいかないんだよね……」

 あー、そういえば前に喜界島たちからボーリングに誘われた時も、妙に困った顔していたな。

 結局ボーリングには行ったようだが、あれも本当は気が進まなかったのだろうか?

「一応言っておくけど、別にジュリアたちと一緒にいるのが嫌ってわけじゃないんだよ? でも一人でいるのも好きっていうか、同じバランスで両立したいんだよね。どっちか一方に偏りたくないっていうか……」

「必要以上に他人に時間を取られたくないってこと?」

「うん……」

 俺の問いに、小日向は苦み走った表情で首肯する。

 なんとなく、小日向の事情がわかってきた気がする。



 要は、あれだ。小日向は俺と同じで、一人でいるのが苦にならないタイプなんだ。

 ただ、周りにそのことを正直に言えないだけで。



 きっと小日向は、他人に対してすごく気を遣ってしまう性質なのだろう。だから遊びに誘われたら断れないし、自分の素直な気持ちを言うこともできない。

 しかも小日向みたいな人気者ともなれば、一人になれる機会なんてなかなかないはずだ。俺みたいな孤独を好む奴にしてみれば拷問に近い環境である。

 まあ、小日向は集団の中でも平気な奴なので、俺なんかと比べたら社会的にマシな方だと言えるが、しかしこれが重度のオタクとなると、事情は変わってくる。

 なんせ、オタクはアニメに漫画にラノベにと時間を使うことが多いしな。なまじ隠れオタクともなると、非オタの友人と趣味を共有するわけにもいかないし、そうなると当然、どちらかの時間を犠牲にするしかないってわけだ。

「なるほどな。それで俺が羨ましいと思ったわけか。そりゃストレスも溜まるだろうな」

「そうなの! 本当はもっとアニメとかゲームとかやりたいことがいっぱいあるのに!」

 うおっ。今のでなにやらスイッチが入ってしまったのか、なんか急に小日向がヒートアップしてきたぞ。

「『魔法少女ミラクルくるみ』もそうだけど、まだ今期アニメで観ていないのもあるし、前期だって気にはなっていたのに結局時間がなくて全然観れなかったアニメだっていっぱいあるの~!」

「そ、そうか。大変だな……」

「ほんとだよ~。あ、そういえば来月にミラクルくるみのイベントがあるんだった! あ~行きたいよ~! でも夏休みに入る頃の話だから行けないよ~! ジュリアたちとの旅行もそれはそれで楽しみだけど、でもイベントの方にも行きたいよ~!」

 ああ、夏休みに双葉たちと旅行に行く予定があるのか。まだ二か月近くも先だってのに、やたら気の早い話である。

 それにしても、ずいぶんと不満を溜め込んでいるみたいだな。ここまで感情的になった小日向を見るのは初めてだ。

「はあ~。もっと時間が欲しいな~。一日四十八時間とかあったらいいのに~」

「それならそれで、遊びに誘われる機会が増えるだけな気もするけどな」

「あ~、確かにそうかも。どのみち自由に使える時間なんてあたしにはないんだね……」

 言いながら、小日向は不意に歩みを止めて「はあああああ」と盛大に溜め息をついた。

「もっと良い方法とかないかなあ。趣味の時間を減らさずに、友達との関係を良好に保つ方法とか」

「オタク仲間ならともかく、小日向の周りって基本陽キャばっかだろ? だったらかなり難しいんじゃないか?」

「そうなんだよねえ……。ほんと、どうしたらいいんだろ……」

 嘆息混じりにそう言って、小日向は思い馳せるように窓辺へと寄って外の景色を眺め初めた。

 見ると、町はすっかり夕焼けに染まり、空には巣に帰ろうとする小鳥で溢れていた。今日はよく晴れているから、星空がよく見えそうだ。天体観測とかさほど興味がある方でもないが。

 そうして、しばらく感傷に浸るように間を空けたあと、

「……ねえ、望月くん。どうすれば望月くんみたく自分に正直になれるのかな……?」

「俺みたく……?」

 小日向の物寂しげな横顔を視界に入れながら、俺は言葉を続ける。

「正直、ねえ……。そんな正直に生きているように見えるか?」

「見えるよ。だってここ数日望月くんの様子を見ていて思ったんだけど、本当に一人が好きだから一人でいるって感じがするもん。今まで見てきたぼっちの人とは全然違うっていうか、他のぼっちの人は、友達は欲しいけどみんなとどう接したらいいかわからないって感じのが多かったけど、望月くんの場合はそうじゃくて、心の底から友達なんて必要としていないように見えるんだよね」

「まあ、必要としていないのは事実だな……」

だからと言って、まったく他人に無関心ってわけでもないのだが。

 ある程度意識を向けていないと、いざって時に困るしな。

 たとえば提出物を集めるように言われた時とか、自分のクラスの人間くらいは覚えておかないと大変な目に遭うし。実際去年もクラスメートの顔を覚えていなかったせいで、全然違うクラスの人間に提出物を求めてしまったこともあったり。あの時はマジで赤っ恥を掻いたぜ……。



「……やっぱり、望月くんはすごいね」



 依然として茜色に染まる町並みを、どこか思い馳せるように空虚な瞳で眺めながら、小日向は静かな口調で続ける。

「ちゃんと自分を持ってるっていうか、意思がしっかりしててさ。望月くんを見ていると、自分の意思薄情さが嫌になってくる……」

「意思薄情って……。俺には、人が良いだけなように見えるぞ?」

「そんなことないよ……。そんなこと全然ない……。単に他人の顔色を窺ってばかりいるだけだよ。自分一人だけ空気の読めないことはできないって」

「それは、そういうもんじゃないのか? 特に日本人なんて、集団のまとまりをなにより重視するもんだろうし」

「そうだね。でもだからこそ、ますます自分の中でもやもやしちゃうんだよね。どうしてあたし、こんなことしてるんだろうなあって」

 あ、でも別に嫌々こんなギャルっぽい格好をしているわけじゃないよ? と小日向は注釈を挟みつつ、

「これはこれで好きでやっていることだから、こういう格好が嫌いってわけじゃないんだ。けどね、これは本当のあたしとは言えないんだよ」

「本当の小日向……?」

「うん。これはね、一種の武装なんだよ。人気者になるための……オタクに見られないための武装」

「武装……」

「そう、武装。ほら、オタクってなんだかんだ未だに偏見があったりするでしょ? 実際ジュリアたちもオタクのことを毛嫌いしてて、よく悪口言っていたりするし」

「あー……」

 そういえば、よく休み時間中にオタクをバカにしたような発言してるなあ。小日向だけは終始苦笑いで一歩引いた立場だけど、双葉も喜界島も嬉々としてそういう話をしているような気がする。

 しかも割と大きな声で話すもんだから、近くにいるオタクグループの気まずそうな顔といったらもう、傍目に見ていて不憫に思えてくるレベルである。

「それはまあいいんだ。あんまり良くはないと思うけど、だれだって苦手な人や嫌いな人だっているだろうし。でもジュリアたちみたいな目立つグループがそういうのを言うと、クラス全体がなんとなく逆らっちゃいけないって空気になるじゃん? あたし元々気の強いタイプじゃないから、そういった子たちにどうしても迎合しちゃうんだよね。人気者グループに属してさえいれば、表立っていじめられり嫌なことを言われたりしないはずだと思って。

 だからみんなに……特にジュリアたちみたいな子たちに好かれるために、進んでこんなギャルっぽいことしてるんだ。本当はもっと同じ趣味の子たちとも仲良くしたいんだけどね……」

「………………」

 その気持ちは、俺にも痛いほどわかった。



 なぜなら中学時代の俺が、まさに今の小日向みたいな感じだったから。



 まあ、当時のキョロ充でしかなかった俺と今の小日向とでは比べるのもおこがましいものがあるが、集団の中で必死に取り繕っていたあの時の俺と、多少なりとも重なるものがあったのだ。

 結局、俺は市外の高校を選ぶことによって今までの人間関係をリセットしたが、小日向がそれをやろうと思ったら高校を卒業するまで待つ必要がある。

 それ以前に、小日向の話にもあったが、別段彼女は俺のようにすべての人間関係が嫌になったわけではないのだ。

 ただ、一人の時間を増やしたいというだけで。

だが小日向みたいな人気者なリア充となると、それも難しい。今の人間関係を維持するとなると、どうしても周りの理解が──実は隠れオタクだったってことを明かさなければならなくなる。

 しかし、周囲の反応を見るにそれは自殺行為に近い。

 つまるところ、一人の時間を増やしたいと思ったら、今の人間関係を一新するしか他ないというわけだ。

 小日向に、それだけの覚悟があればの話になるが。

「自分でもね、今のままじゃダメとは思ってはいるんだよ。このままだと、これからもずっと自分を押し殺して生きていかなきゃいけない気がするから」

 俺がなにも言えずにいる間も、小日向は心の膿を吐き出すように言の葉を紡いでいく。

「でも、具体的にどうしたらいいかはわからないままなんだ。こんな自分を変えたいのに、良い考えが全然浮かばないの。一人になりたいはずなのに、望月くんみたいな度胸もない。ほんと、あたしってすごく中途半端だよね……」

 そこまで言って、小日向は窓辺に少しだけ身を乗り出して、どこか諦観にも似た悲しげな表情を浮かべてこう続けた。



「あーあ。少しの間だけでいいから、あたしもぼっちになってみたいなあ。一人の時間を満喫してみたいなあ」



 その言葉に。

 俺は──

「だったら……」

 おもむろに口を開いた俺に、小日向は夕日を背にこっちを振り返る。

 そんな小日向の儚げな姿をまっすぐ見据えながら、俺は意を決して先を続けた。



「だったら、俺がぼっちにさせてやろうか?」

 


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