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9.森からの脱出

「水無殿、『自動人形召喚・指示』の段階が進行したことをご報告申し上げます。現在行使可能な力は、完全体2体の召喚、不完全体3体の召喚となります」


 ゼクティアが久しぶりに見せた人形のような表情とともに報告を聞いたユタカは想像以上に早い段階の進みに驚いていた。


 もうしばらく、力に変化はないかと思っていたけど早かったな。あのヤツメウナギもどきの”情報体”の質がかなり高かったということなんだろう。


「報告ありがとう。新たな仲間の召喚前に今いる三人に改めて感謝を。みんなの奮闘のおかげで俺の力は新たな段階に進むことができた。ありがとう」


 ユタカがそう言い終わると、ヤツメウナギもどきの討伐現場から戻っていたマネキンのうちの一人が一歩前に出てきた。


 すると、そのマネキンの周りに黒い霧がまとわりつき、しばらくするとゼクティアと同じように人の形を成した。その後再びその体の周りに黒い霧が集まった後に薄れるとそこには、ゼクティアと同じようなデザインの黒い軍服を着た男が立っていた。


「水無殿! ただいま受肉が完了しました。『自動人形』士官職能付与型尉官級、1体の完全召喚を報告します」


 その男は白い肌に柘榴石のような瞳を持っており、白い髪が短く整えられているところ以外はゼクティアとよく似た容姿をしていた。

 そして、受肉の完了を確認したゼクティアが召喚の終了を告げると、


「完全召喚おめでとう、って言えばいいのかな。とにかく、今までもお世話になってたけど、これからもよろしく。また、例によって名前がないんだろうから・・・ロイトナンと呼ぶことにするよ」


「了解しました、以降本官の名をロイトナンと認識します。と、挨拶はこんな感じでいいですかね。ユタカ」


 新たな完全召喚体であるロイトナンは、ゼクティアと違いフランクなしゃべり方の人物だった。


「いいね。普段はそんな感じで接してくれるとうれしいよ。生真面目なゼクティアとフランクなロイトナンの二人が話し相手になってくれれば、この森での生活も楽しさが増すよ」


「そう言ってくれるとうれしいね。俺も普段から固い言葉を話すのはごめんだ。それと俺の登場の仕方よかっただろ、誰かと違って全裸で現れないってのは評価してくれよ」


 ロイトナンはゼクティアの下りから当人の方を向いてにやにやとしながらしゃべった。


「っ~~! あのことは忘れてください。大体ロイトナン、あなたはユタカに向かって慣れ慣れしすぎるのです。我々にとってのユタカの存在はどのようなものか理解しているので」


「さっすが、ユタカの前で全裸のまま直立不動する副官様は言うことが違うねー」


 ゼクティアが真っ赤な顔になりながらロイトナンと言い合っている様子は、二人の容姿が似ていることから兄妹ゲンカのように見えて微笑ましくもあったが、これ以上はゼクティアが可哀そうになってきたので止めることにした。


「ロイトナン、そこまで。怒るゼクティアは可愛いから煽りたい気持ちはわかるけど程々が大切だよ。それじゃあ、不完全体の召喚も行おうか」


 ユタカはマネキン2体が現れるイメージを素早く組み立て、新たな段階である完全体二人と不完全体三人の召喚を終えた。


「さて、みんな改めてよろしく。まず初めにヤツメウナギもどきが巣にしていたドーム状の建物を調査に行こうか。こうして俺の力の段階が進んだことから完全に討伐は完了したものと判断して問題ないとは思うけど、十分に警戒して行こう」


 6人に増えたユタカ一行はヤツメウナギもどきのいたドーム状の建物に移動し、念のためにサルもどきを建物に投げ入れ、何も起きないことを確認したのち内部へと入っていった。


 ほー、これはすごいな。経年劣化による痛みはあるものの当時はとても豪華絢爛な建物だったことが窺えるな。おそらく、この都市遺跡の運営機能の中枢がここにあったんだろうな。


 そんなことを考えながら建物を進んでいくと、蜷局を巻くように息絶えたヤツメウナギもどきの死体があった。


 俺自身は特に襲われたわけでもないし、力の段階を進めてくれたのはこいつの”情報体”によるところが大きいしな。手を合わせておくか。


 ユタカがヤツメウナギもどきの死体に向かってしばらく手を合わせた後、ふと上を向くと建物の天井一面に絵が描かれていた。


「あ! あれはこの森の地図!」


「確かにこの都市遺跡や周辺の森を描いたもののように見えますね。ということは、あの辺が私たちが最初に拠点にした場所で、都市遺跡と拠点の間に描かれている門の絵は途中で見つけたあの建築物の跡のことでしょうか」


「そうに違いないね。だとすればこのまま北に進み続けるのが森の外に出る最短のコースってことになるぞ」


「それはよかった。これでユタカの最初の目的が達成できるな。それじゃあ、さっそく移動開始するか」


「いや、今日はいったん仮拠点に戻って今後の移動の準備と体制の再構築を行おうと思うよ」


「了解。ならとっととこの薄暗い建物から出るとしますか」


 ユタカは最後にちらっと天井の絵を見てあることを考えていた。


 これだけ繁栄していた都市がなぜこんな状態になったのだろうか。ここに住んでいたであろう人たちはどうしたのかと。


 仮拠点に戻ってきた6人は駕籠にユタカの食料と水を乗せ、明日の移動の準備を整えていた。


「みんな、準備お疲れ様。これからの予定を再確認すると、この都市遺跡を突き抜けてこのまま北に進むよ。進む道の状態や距離を正確には把握できていないからどれほど掛かるか見通せないけど、何週間も掛かるとは思っていないよ。あと、人数が増えたことで柔軟な動きができる組織にしようと思う。ロイトナンは士官職能持ちってことから君の部下として二人のマネキンをつけようと思う。残りの一人はゼクティアに付いてもらおうと思う」


 士官職能付与型尉官級、ゼクティアに聞くと百人までの自動人形あるいは人間の指揮を行う能力を持つ自動人形とのことらしい。ただし、条件があるらしく、その指揮下の集団を5つ以上の集団に分割して指揮を行うことはできないとのこと。


 俺を含めて6人しかいないような集団には百人とか5つ以上の集団への分割とか以前の話ではあるが。


「ユタカ、先ほど説明した通りロイトナンの指揮に入ったマネキンとは私は直接通信を行うことが出来なくなります。なので、あの二人からの報告はロイトナンかロイトナン-私と経由しての報告になります。だからロイトナン、報告は密に行いなさい」


「当然だ、俺は仕事をいい加減にすることは間違ってもないぜ。重要なことは状況が許すなら直接ユタカに、日常の細かいことについてはゼクティアに、この形でいくぜ」


「情報の伝達については密にいこう。そこを怠るとこんなに心強い仲間がいても不測の事態が発生してしまう確率が高くなる。それで、移動中の配置について発表します。先頭にロイトナン班を配置する、役割としては敵の索敵・排除それと輸送もお願いする。その後ろにお荷物の俺と護衛のゼクティア、最後尾にゼクティア付きのマネキン。こんな具合で進むのでよろしく。何か質問ある?」


「無いようなので明日に備えて俺は早めに休むとするよ。お休み、みんな」


 ユタカが木の上で寝息を立て始めたころゼクティアとロイトナンは今後について話をしていた。


「ゼクティア、今までやっていた戦闘や細かい移動の指示は俺に任せろ。お前はユタカのそばを常に離れず俺らとの連絡の中継と護衛にだけ集中しろ」


「ええ、わかったわ。あなたは必ずユタカに迫る危機を排除しなさい、それが役割よ。これからよろしく」


「もちろんだ、俺が来たからにはこの移動中ユタカには危険な思いはさせやしない」


 都市遺跡の近くに仮拠点を設置してから7日目の朝、ユタカはすっきりとした気持ちで目を覚まし、朝食であるおいしくない木の実を水で流し込んだ後、移動開始の合図を行った。


「おはよう、みんな。今日からまた移動の日々になるけどよろしくね。この先で今までに遭遇していない危険な生物が襲ってくる可能性もある、常に油断せずに安全第一で進んでいこう。それじゃ、出発!」


 ユタカ一行が都市遺跡を越え、北側の森を進むと地面は木々の根に覆われており再び歩きづらい状況へとなっていた。


 こっち側には道がなかったのか。遺跡に来るまでのようにいかないな。これでは森の脱出まで時間が掛かるな。


 息を乱しながら必死に歩く速度を維持しようとしているユタカを見たゼクティアは、心配そうに声をかけた。


「ユタカ、辛いようでしたら私がおぶって差し上げましょうか。ロイトナンたちが加わったことでユタカをおぶって移動する余裕がありますので、」


「・・・、ゼクティア。俺は男だ、今は14歳になっているけど中身は32歳の大人のつもりだよ。君みたいな可愛い女の子におぶってもらってるなんて考えたら恥ずかしすぎるよ」


 かわいいと言われ頬を赤く染めたゼクティアは少し言いにくそうにしながらユタカにあることを告げた。


「あの、今現在ロイトナンの報告ではこの周囲を六足犬の群れに囲われている状態で移動してるとのことです。こちらの人数が多いことから襲う気配はないようですが、彼らの縄張りと思われるところを通過中ですので、念のため移動速度を速めたいとのことです」


「・・・わかった。みんなを危険にさらしてまで俺のプライドを守ろうとは思わないよ。それじゃあ悪いけどゼクティア」


 ユタカはそう言って、しゃがんだゼクティアの背におぶさった。


 なんかいい匂いがするな、それにゼクティアの服はのりが利いているかのようにビシッとしわのない状態だ。何日も着てるはずなのになんでだろう。それに女の子の体は柔らかいなー。


 そんなことを考えていると顔を真っ赤にしたゼクティアが小さな声でしゃべりかけてきた。


「すみません。ユタカ、その、手を、もう少し首の近くで掴んでもらうと助かります」


 いつの間にかユタカの手がゼクティアの胸の上にあった。


「!?ごめん!」


 そんな二人の様子を見たロイトナンは、ニヤニヤと笑っていた。


 ユタカはラッキースケベ系のキャラなのか。それによかったなゼクティア、ユタカに胸を揉んでもらって。


 その後は一行の速度を遅くしていたユタカが皆と同じ速度で移動できるようになったり、周囲にいた六足犬の群れの縄張り無事に抜けることが出来たところで1日目の移動が終了した。


 それ以降の移動では、移動スピードが求められる場面では、ユタカがゼクティアにおぶってもらいながらも、基本的には自分の足で移動を続けついに森が切れる場所に到達した。


「あ、草原がある! やっと、やっと森を脱出できる。遺跡からは新しい生物は襲ってこなかったけどサルもどきや六足犬の襲撃が嫌になるほどあった。だけど、そんな日々とはお別れだ!」


 ユタカは久しぶりに頭上をなにものも遮るものがなく、大きく広がる青空を見て感動をしていた。

次回は9月30日午前0時の投稿となります。


誤字・脱字、語句の選びの間違いなど指摘いただければと思います。

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