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第32話 準緊急クエスト

 ひゅんっ


 ログインしてマイホーム空間に現れた私は、アイテムボックスを操作して魔石を取り出す。これが、美奈子さん…コナミ・サキ…ミリアナ・レインフォール謹製の、『現界』スキル付与魔石…!


 ぶんっ


 ピッピッ


「うわ、本当に現実世界のマップ操作で転移先が指定できる! って、感動してる時間はないか」


 ピッ


現実世界(Real World)の『△△△山・山頂』に転移します。よろしいですか? 〔はい/いいえ〕】


 〔はい〕を…押す!



 びゅおおおおお


「ひえー」


 ダジャレを言ってる場合じゃないけど、寒い! 吹雪が、吹雪がー!


「えっとえっと…『加熱(ヒート)』!」


 ぼっ


「うわわわあちあちあち! あああ…う、『ウォーム』!」


 ほわん


「ふう、ようやく普通に暖かくなった…。それにしても、なんで温暖スキルの表示は漢字じゃないんだろ。日本語の不思議?」


 むう、さっきから要領が悪いな、私…。これが、美奈子さんとの経験の差? リアルでは穏やかな雰囲気だけど、やっぱり『ミリアナ・レインフォール』なんだなあ。


「そろそろいくよ! 顕現せよ(セットアップ)、嵐弓アセトアルカナ!」


 ひゅおん


 すちゃっ


「くっ…」


 キリキリキリ


 現れた魔力の矢を上空に向け、(つる)を引く。体勢がいつもと違うから、力を入れにくい…!


(うな)れ、アセトアルカナ! 『シューティングスター』!!」


 びゅんっ―――


 …


 しゅばっ!


「やった!?」


 あ、しまった。フラグ叫んじゃった。


 ぱあああああ…!


 …

 ……

 ………


 ごおおおおお


「うわ、吹雪に押し返されたー!?」


 ど、どうすれば、どうすればいい!? 『シューティングスター』はクールタイム中だし、同じくらいの爆風が出せるのは、それこそ『コナミ・サキ』ブランドの暴発エンチャントな魔石くらいだし…!


「封印せよ、魔剣レインフォール! 『シャイニー・レイン』!!」


 カッ――――――!


 ぶおおおおおおお


 …


 …シュッ


 光の奔流が上空全体を覆ったかと思うと、吹雪の全てが一点に吸い込まれ、ふっと消える。


 『浮遊』スキルでゆっくりと降りてくる、ひとりの現界アバター。誰なのかは言うまでもない。


「ライナ…リナちゃん、大丈夫?」

「ミリアナ…美奈子さん。私は、大丈夫ですけど…」


 付近の天候は快晴、遠く離れた暗雲が再び覆うまで、数時間は要するだろう。眼下の小屋からは、避難していた登山者達がぞろぞろ出てきている。無線で何らかの連絡がいっているのだろうか、速やかに下山を始めている。


「はあ…。私じゃ、解決できなかった…」

「そんなことないよ。リナちゃんが一度上空を吹き飛ばして弱まっていたから、『シャイニー・レイン』で吸収できたんだから」

「そうかも…しれませんけど」


 でも、もともとの目的である『ミリアナの出動を少なくして美奈子さんに楽をしてもらおう』は失敗である。準緊急のクエストに無理矢理突っ込んで、結局ミリアナが出動したのであるから、むしろ逆効果である。


「え、えっと、弦を引っ張る時のタメがもうちょっと必要だったかも。弓装備はそういう特徴があるから」

「え、美奈子さん、弓も扱えるんですか!?」

「うん。ほら、一応エルフなアバターだし、使えるだけ使えるようにしておこうかなって。エリア1で早々に『魔剣レインフォール』を手に入れちゃったから、ほとんど使う機会ないけど」

「はあ…」


 うん、やっぱり、日々の積み重ねが必要かあ。美奈子さんに追いつくために急いでユニークウェポンを手に入れた私は、付け焼き刃ってことか。


「とりあえず、もう帰ろう(ログアウトしよう)か。少しだけど、登山者からも見える場所みたいだし」

「は、はい…」


 ピッピッ


 はあ…。ギルメンを鍛える前に、私を鍛えるべきだな。天空城(ミストライブラ)のメイドさん達に協力してもらおう、そうしよう。

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