第32話 準緊急クエスト
ひゅんっ
ログインしてマイホーム空間に現れた私は、アイテムボックスを操作して魔石を取り出す。これが、美奈子さん…コナミ・サキ…ミリアナ・レインフォール謹製の、『現界』スキル付与魔石…!
ぶんっ
ピッピッ
「うわ、本当に現実世界のマップ操作で転移先が指定できる! って、感動してる時間はないか」
ピッ
【現実世界の『△△△山・山頂』に転移します。よろしいですか? 〔はい/いいえ〕】
〔はい〕を…押す!
◇
びゅおおおおお
「ひえー」
ダジャレを言ってる場合じゃないけど、寒い! 吹雪が、吹雪がー!
「えっとえっと…『加熱』!」
ぼっ
「うわわわあちあちあち! あああ…う、『ウォーム』!」
ほわん
「ふう、ようやく普通に暖かくなった…。それにしても、なんで温暖スキルの表示は漢字じゃないんだろ。日本語の不思議?」
むう、さっきから要領が悪いな、私…。これが、美奈子さんとの経験の差? リアルでは穏やかな雰囲気だけど、やっぱり『ミリアナ・レインフォール』なんだなあ。
「そろそろいくよ! 顕現せよ、嵐弓アセトアルカナ!」
ひゅおん
すちゃっ
「くっ…」
キリキリキリ
現れた魔力の矢を上空に向け、弦を引く。体勢がいつもと違うから、力を入れにくい…!
「唸れ、アセトアルカナ! 『シューティングスター』!!」
びゅんっ―――
…
しゅばっ!
「やった!?」
あ、しまった。フラグ叫んじゃった。
ぱあああああ…!
…
……
………
ごおおおおお
「うわ、吹雪に押し返されたー!?」
ど、どうすれば、どうすればいい!? 『シューティングスター』はクールタイム中だし、同じくらいの爆風が出せるのは、それこそ『コナミ・サキ』ブランドの暴発エンチャントな魔石くらいだし…!
「封印せよ、魔剣レインフォール! 『シャイニー・レイン』!!」
カッ――――――!
ぶおおおおおおお
…
…シュッ
光の奔流が上空全体を覆ったかと思うと、吹雪の全てが一点に吸い込まれ、ふっと消える。
『浮遊』スキルでゆっくりと降りてくる、ひとりの現界アバター。誰なのかは言うまでもない。
「ライナ…リナちゃん、大丈夫?」
「ミリアナ…美奈子さん。私は、大丈夫ですけど…」
付近の天候は快晴、遠く離れた暗雲が再び覆うまで、数時間は要するだろう。眼下の小屋からは、避難していた登山者達がぞろぞろ出てきている。無線で何らかの連絡がいっているのだろうか、速やかに下山を始めている。
「はあ…。私じゃ、解決できなかった…」
「そんなことないよ。リナちゃんが一度上空を吹き飛ばして弱まっていたから、『シャイニー・レイン』で吸収できたんだから」
「そうかも…しれませんけど」
でも、もともとの目的である『ミリアナの出動を少なくして美奈子さんに楽をしてもらおう』は失敗である。準緊急のクエストに無理矢理突っ込んで、結局ミリアナが出動したのであるから、むしろ逆効果である。
「え、えっと、弦を引っ張る時のタメがもうちょっと必要だったかも。弓装備はそういう特徴があるから」
「え、美奈子さん、弓も扱えるんですか!?」
「うん。ほら、一応エルフなアバターだし、使えるだけ使えるようにしておこうかなって。エリア1で早々に『魔剣レインフォール』を手に入れちゃったから、ほとんど使う機会ないけど」
「はあ…」
うん、やっぱり、日々の積み重ねが必要かあ。美奈子さんに追いつくために急いでユニークウェポンを手に入れた私は、付け焼き刃ってことか。
「とりあえず、もう帰ろうか。少しだけど、登山者からも見える場所みたいだし」
「は、はい…」
ピッピッ
はあ…。ギルメンを鍛える前に、私を鍛えるべきだな。天空城のメイドさん達に協力してもらおう、そうしよう。




