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第26話 みんなで緊急クエスト

 結論から言うと、危ないクエストではなかった。ミナに拓也くん、並木さんを夕食作りに残して、ボク達6人はミナの家を出た。そう、転移する必要のない、住宅街でのクエストだった。


「報酬は、たくさん期待できそうにない…」

「剣も振るえなーい」

「ギルマスのでかい盾も無用の長物」

「いいから、行くよ? 『索敵(ハイ・サーチ)』」


 ピコン


「うわ、ギルマスが子猫達を敵視してるよ」

「あんな可愛い子猫達を…美奈子様に後でチクろう」

「鬼、悪魔、血も涙もない悪鬼」

「ただの呪文表示でしょ!? みんなも『探索(サーチ)』くらいは使えるんだから、早く始めてよ」


 からかわれているだけなのはわかっているんだけどね…。


 というわけで、ボクらが請け負ったのは、御近所周辺に脱走した、たくさんの子猫達の回収。この近くの高速道路で運搬中のトラックが横転、檻の扉が開いてしまい、十数匹ほどが逃げ出してしまったのだ。このまま食べ物を得られず餓死するのも、車とかにはねられてしまうのも良くないが、住み着いて野良猫としてたくさん増えてしまうのも良くない。今回の猫には首に識別票がついていて、探索魔法で探し出すことができる。剣士職ばかりで魔法のレベルは低いけど、普通の人よりは探し出しやすい。


「ん、木の上に1匹。『エアーバブル』」

「あ、それ使えるんだ、いいなあ」

「屋根の上に発見! 『浮遊(レビテーション)』!」

「使い慣れてないから、バランスとるのが難しい…」


 苦戦してはいるものの、順調に回収している。ちなみに、子猫はアイテムボックスに入らないから、何匹か捕まえたら、優真と真理ちゃんに渡して回収場所まで『飛翔(フライ)』スキルで持っていってもらう。


「御近所の皆様の視線が…」

「コスプレしながら呪文を唱えたりしているからねえ。しょうがないよ」

「僕とマリちゃんに至っては、エルフと獣人…」

「ギルマスはよく平気でいられますね」

「慣れたからかなあ。悪いことしてるわけじゃないし、録画されても特撮映像くらいにしか見えないだろうし」

「掲示板では話題になりそう…」


 それも結局、一過的である。ボクらが積極的に吹聴しない限り、話題はすぐ収まる。聖盾アイスフィールドでボクも自力で『現界』できるようになり、事故現場の対応などの緊急クエストをちょこちょここなすようになっているけど、何十分と活動するわけでもないから、マスメディアとかで騒ぎになることもない。詳しくは知らないけど、大事にならないような手配も『フォークロア・コーポレーション』から行われているらしい。


 そんなこんなで、ほとんどの子猫が回収される。


「あと、3匹!」

「私達の探索範囲じゃ見つからない! ギルマス!」

「わかってるよ。もう少し高度を上げて…いた!」


 住宅街の片隅の廃ビル。拓也くんが連れ去られ、ミナが『現界』して不意打ちした場所と聞かされている。手元の子猫達を回収場所で引き渡した後、ボク達は6人全員で廃ビルへと向かう。


「ここの、10階相当だね。3匹とも一緒にいるようだ」

「10階…相当?」

「階段がない。前はあったみたいなんだけど、ミナが『コナミ・サキ』として破壊しまくったらしい」

「ああ、ミリアナが領地防衛戦で『ライナ・アセトアルカナ』に使ったっていう、あの…」

「美奈子様、マジパねえっす」


 ミナって普段は穏やかなのに、拓也くんのこととなるとタガが外れるというか、言いたい放題やりたい放題するんだよねえ。戦闘メイド達の時とか、運動会のお弁当の時とか。ましてや、この時は拓也くんが殺されそうになったと聞いている。犯人達、よく無事だったよね。まあ、だからこそ、ミナが復讐のために襲われたりもしたんだけど。


「じゃあ、どうするの? 浮いて回収する? 空中から近づいたりしたら、びっくりして逃げられちゃいそうなんだけど」

「浮遊魔法もみんなそれほど得意じゃないし、ここは…」


 ピッピッ


現実世界(Real World)の『○○市・上空ZZZ地点』に転移します。よろしいですか? 〔はい/いいえ〕】


 ピッ


 ひゅんっ


 現実世界内の転移機能で、鉄骨の上に乗っている子猫達のすぐ上に転移する。


「よし。盾を向けて…」


 みゃーっ

 ぎゃー


 近づく聖盾アイスフィールドを避けようと、鉄骨から一斉に降りる子猫達。


「おっと、『浮遊(レビテーション)』範囲適用!」


 ふわっ


 ボクと子猫達を包むように浮遊魔法が発動し、地上にゆっくりと降りていく。


「つーかまえたっ」

「回収、回収」

「さすがギルマス、やることがえげつないね!」

「ええ…」


 3匹の子猫は、無事三人娘の腕の中に収まる。ようやく終わったせいか、子猫の頭を撫でながら嬉しそうにしている。三人共、普段からこういう感じならいいんだけど…。


「ほら、優希様、回収場所までちゃっちゃと転移して!」

「ああいや、今のでMPがなくなっちゃって。歩いて行くしかないねえ」

「えー!?」

「ギルマスの役立たず。昼行灯。腑抜け」

「さすがに酷くない!?」


 まあ、とにかくこれでようやくミナの家に戻れる。なんか、これまでの大がかりな事故や事件の緊急クエストよりもどっと疲れた…。

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