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第47話 ログイン

「…この設定は、こう。あとは、アバターメイキングで本格調整だね」

「む、難しいんだね…」

「慣れれば大丈夫だよ。前島さん、優真くんのフルダイブ装置の設定は終わったよ」

「さすがだねえ。あ、両親のも見てくれる? 相変わらず、僕じゃ細かい調整がわからなくて…」

「うん、いいよ」

「ごめんなさいね、お仕事みたいなことさせちゃって。でも、本当に手際がいいのね」

「いやあ、ずっとこの部屋の管理を任せたいくらいだよ!」


 あー、そういう仕事につくのもいいかなあ。『緊急クエスト』がこれからも続くなら、フォークロア・コーポレーションとかよりも、こういう設備の維持管理の方が表向きの本職としていいかもしれない。徹夜メンテナンス作業とかは勘弁したいし。


「…父さん、ミナには通じてないと思うよ」

「なんだ、だらしないな。もっとがんばれ!」

「そうしたいところだけどね…」


 …なんの、話かなー。とりあえず今回は『?』の顔してとぼけておこう。


「みんな、初期設定は終わったかな。それじゃあ、どんどんログインして! 待合せ場所は、いつものエリア1中央噴水前ね」

「了解」


 そういえば、自宅のフルダイブ装置以外を使うのはひさしぶりだな。フォークロア・コーポレーション本社であれこれ試した時以来かな?


受諾せよ(アクセプト)遥かなる大地(ファラウェイ)への旅路を(・ワールド)



 マイホームに出現した私は、即座に偽装アバターセット『コナミ・サキ』に切り替え、更に、スタンドミラー機能で、偽装設定を念入りに再チェックする。御両親とかに万が一にもバレたりしたらとても困るし、それに、『新緑の騎士団』の隠密行動が尋常ではないことがよくわかったので、念には念を重ねてのことだ。自分からバラさない限り、私が『ミリアナ・レインフォール』であることは知られてはダメなのだ。…フラグじゃないよ? 本当だよ?


「それにしても…」


 ぽよん


「ここのこれ、アバターでは実サイズ(・・・・)じゃなくてもいいかなあ。偽装するたびに邪魔に感じて…リアルでもだけど」


 こないだ拓也にそんな話題を振ったら、めちゃくちゃ怒られた。そして、結局何のアイデアも出してくれずに自室に戻っていった。…いいじゃない、こんなこと話せるの、拓也だけなんだし。前島さんとかに振れないでしょう? 両親は忙しいし、あの三人娘はなんだか怖いし。


「まあ、今日のところは、いつも通りでいいか…」


 そうしてようやく、中央噴水前に転移する。もっとも、既に来ているのはたぶん前島さん…ユーマ・アイスフィールドだけだろう。他の三人は、各自のマイホームでアバター設定中だろう。特に、優真(・・)くんは…あれ?


「やあ、ミナ…コナミ。相変わらず、リアルそのままだね」

「まあね。ところで、優真くんってアバター名は何にするんだろう?」

「それは…ああ、そうか」


 そう。本名をもじった『ユーマ』は、既に前島さんが使っている。アバター名は重複してもいいのだが、さすがに身内で重なっているのはどうかという話だ。たとえ、ユニークウェポンにちなんで『アイスフィールド』を加えているとしても。


「前島さん…ユーマは、なぜ『ユーマ』にしたの?」

「ああ、『優希』の『ユー』に『前島』の『マ』からだね。別に、弟の名前を流用したわけではないよ?」

「…でも、僕は兄ちゃんの名前の『ユーキ』にしてみた」

「「え?」」


 振り向くと、そこには、男エルフの基本造形のアバターが。アバター名表示は確かに『ユーキ』である。優真くん、種族をエルフにしたんだね! 私と同じ! 表向きはドワーフだけど。


「美奈子…姉ちゃん、本当に、リアルそのままの姿なんだね」

「こっちでは、『コナミ・サキ』って名乗っているよ。見た目は同じでも、名前が違うと結構区別できるものなんだ。ネットリテラシーの基本かな」

「そう、なんだ…」


 もちろん、悪意をもって調べようとすれば、いくらでも発覚してしまうものでもある。気をつけないとね。


「でも、兄弟で名前を交換するっていうのはアリかもね。今回は結果的だけど」

「そうかも。じゃあ、『ユーキ』、今日はよろしく」

「うん…『ユーマ』兄ちゃん。あと、コナミ姉ちゃん」


 『姉ちゃん』…拓也が呼ばないようになった呼び名だ。うん、でもそうだね、もうこっちの方が拓也には合わない気さえしてきた。目の前の『ユーキ』くんのせいかな。


「やあ、遅くなった。…おお、本当に、そのままなんだな」

「あら、本当。可愛らしいままで嬉しいわ」


 御両親が到着する。標準的なヒューマンアバターだ。ゲームをとことんやり込むのでなければ、無難にしておくのもいいだろう。

 ところで、前島さんの御両親様、息子さん達のアバターも気にかけてやつて下さい。ちょっと寂しそうですよ? 特に、優真くんが。


「それで、これからどうしようか?」

「そうですね…。ユーキくんの初ログインってこともありますし、『始まりの街』をみんなで散策しましょうか」


 そうして、私達はそろって街を歩き出した。とりあえず、食べ歩きかな。

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